VSカオスなタビー①
「おぉーい!どこにいったんですかぁー!?」
避難エリアを飛び出し、パークセントラルを猛スピードで低空飛行しながら抜けたパフィンは、かすかに見えた人影を追ってじゃんぐるエリアへと向かっていた。
人もフレンズもいないパークは不自然なまでに静かだが、人影を必死に探し回るパフィンにとっては些細な事でしかなかった。
声を張り上げながら飛び回るパフィンは木々が生い茂るジャングルの奥地にまで飛んでいくが、前へ進むにつれてどんどん飛び回れるほどの隙間がなくなっていき……
「ぶぅっ!?」
案の定と言うべきか、顔面から木にぶつかってしまい、地に足が付くと同時にペタリと地面に座り込んで痛む顔を両手で押さえ込む。
「い……いだいぃ〜……」
赤くなった顔をさするパフィンが痛みに顔を歪めていると、後ろから誰かが走ってくる音が聞こえてくる。
それに気付き、まだ痛む顔を押さえながら振り返ると、小脇にジョフを抱えたシーラが息を切らしながらこちらに向かって走ってくるのが見えた。
「あ!パフィンがいたでち!」
「え、どこ!?あ、目の前にいる!」
顔を押さえているので声を出せないパフィンは、ゆっくり立ち上がりながら二人に向き直る。
直後、シーラの脇に抱えられたままのジョフが金切り声でパフィンに怒号を飛ばす。
「こんのアホパフィン!!大食い!!お菓子好きのトリ!!勝手に出るなって言われたところでち!!何考えてるでっぢい゛ぃ!!」
「ふぃ!?」
「ま、まあまあ……」
キレた猫のごとく「シャーッ!」と威嚇音を鳴らしながら怒鳴り散らすジョフを宥めるシーラは、しょげたように顔を俯かせるパフィンに向き直る。
「ところでパフィン。避難エリアから出て行った人は見つかった?」
顔を押さえているので喋れないパフィンは、首を横に振る。
それを見たシーラは、ジョフを地面に下ろしてパフィンの視線に合わせるように屈み込む。
「顔、どうしたの?痛いの?」
今度は首を縦に振るパフィンに、シーラはパフィンの手を持ってそっと顔から離させる。
露わになったパフィンの顔は、赤みこそ引いてきているものの鼻を中心に小さな切り傷が所々に出来ており、手を離した直後から鼻血が僅かに流れ始めている。
「飛んでたら木にぶつかりました……」
「あちゃー、やらかしたね。サンドスターですぐ治るだろうけど、念のため」
白衣のポケットの中をゴソゴソと探り何かを取り出したシーラは、それをパフィンの鼻に貼り付ける。
「なんかひんやりしますぅ……」
「お客さんがケガした時のために研究したシーラの発明品!名付けて『スピードレスキューくん・軽傷用』だよ!貼っておくと10分以内には傷が治る便利品!あ、でもあんまりひどいケガには効かないんだよね」
「んなことより!その出てった人ってのはどこにいるでち!?見間違いだったなら早く帰らないと……」
二人の間に割り込んできたジョフはまたも金切り声をあげ、しかめっ面で二人の腕をぐっと掴む。
それを見たシーラは何かを察したのか、ニヤリとしながらジョフの顔を覗き込む。
「ジョフ……さっきからやたら帰りたがるけど、もしやガイドさんに怒られるのが怖いとか?」
「ふわ!?……ジ、ジョフは大人だから……そ、そんなの怖くないでち!!」
「ほんとぉ〜?」
「……ほんのちょっとだけ、怖くない訳じゃないでち……」
「ジョフちゃん素直じゃないでーす!」
「ううううっさいでぢ!!怒られたらお前も一緒に怒られるでち!!“れんたいせきにん”でち!!」
と、和気あいあいとした空気が出来上がりつつあった、その時だった。
“あぁーソびぃーましょー……”
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