パフィンちゃん捜索隊④

「なるほどねぇ……」


大まかな経緯を腕を組みながら聞いていたシーラは、少しばかり険しくなった表情で二人を見つめる。


「そのおじさんを探しているっていうのは分かったよ。パフィンもおじさんやガイドさんに会えなくて寂しいよね」


そこまで口にするシーラにパフィンは顔を上げて笑おうとするが、「でも」と語気を強めて言葉を続けるシーラに気圧されて目が丸くなったまま押し黙る。


「この避難エリアもたくさんのお客さんを受け入れられるよう、それなりに広く作られているの。さっきも言ったけど、今外に出るのはモンスターがいるからすっごく危険。だから、建物の外を探すのはダメ。何よりガイドさんに迷惑かけちゃうし」

「ほら、シーラもこう言ってるでち。おじちゃんもきっとパフィンの事を探し回ってるはずでち」

「……あぅぅ……」


さらにジョフからの畳み掛けも受け、パフィンはぐうの音も出なくなり曇った表情のまま俯いてしまう。

直後、シーラがパフィンの身体に手を回しギュッと胸元へ抱き寄せる。小柄なパフィンよりもシーラは一回り背が高いので、パフィンの身体は爪先が地面からほんの少しだけ離れる程度に浮き上がる。


「大好きな人と会えないってツライよね。シーラもそうだもん。パフィンのツライ気持ち、すっごく分かるよ」

「シーラさん……?」

「まだ普通のおサルさんだった頃ね、生まれたばっかりのシーラはジャパリパークとは別のすごく小さい動物園にいたんだ。そこでシーラをすっごく可愛がってくれたお兄さんがいたの」


パフィンをそっと地面に下ろし、シーラは静かに言葉を続ける。

穏やかだが、どこか憂いげなその表情は、何かを思い出すように遠い所を見ているようにも見えた。


「お兄さんは飼育員じゃないけど、毎日シーラに会いに来てくれたの。お兄さんは冒険が大好きでね、動物園の外の事とか、今まで行ったことのある世界中の色んな場所の事をいっぱい聞かせてもくれたの。でもね……」

「でも?」

「色々あってその動物園がジャパリパークの一部になって、シーラが仲間たちと一緒にパークに来てすぐ、あの事件がね……」

「……パークからヒトがいなくなったでちか」


横からポソリと呟くジョフに、シーラは「そう」と肯定して小さく頷く。


「それからしばらくしてヒトがパークに来れるようになるちょっと前に、シーラはフレンズになったの。この姿になれば、どこかにいるお兄さんに会えるんだって思ってたけど、色々と決まり事が増えちゃってそう簡単にいかなくてさ」

「そのお兄さんには、まだ会えてないんですか?」


地面に下りたパフィンがシーラに抱きついたまま首をかしげて訪ねると、シーラはため息混じりに笑い声をこぼす。


「うん。お兄さんがどこにいるのかも、そもそも元気にしてるのかすら全然分かんない。だからいっぱい勉強してパークの外に出られる資格も取ったんだけど、今度は外があの事件の影響で色んな所がメチャクチャになってて自由に動き回れなくってさ」

「ウワサには聞くけど、そんなにひどいんでちか?」

「そりゃもうヤバイよ。空を飛んだらゴミが飛んできて目に入っちゃうし、水の中はすごく汚くて目の前に瓦礫があっても全然見えなくて泳ぎ回るのはすっごく危ないし。だからね、シーラは他の手先が器用なフレンズ達と協力して、色んな所を探索できるような乗り物を研究してるんだ」


そこまで語るシーラの表情は、ほんの僅かに陰りを帯び始めながらも、パフィンにニッコリと笑いかける。


「……早く完成させて、外を探索できるようになりたい。早くお兄さんがどこにいるのかを知りたい。早く会いたくて、またお話聞かせてほしくて……だから、パフィンのおじさんに会いたいって気持ち、すっごく分かるよ」

「シーラさん……」


と、パフィンが笑い返そうとした時。

ふとパフィンの視界の端に、何かが映り込んだ。

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