パフィンちゃん、離れる①
マーゲイが立ち去ってしばらくした後。
会場内には見渡す限りのヒト、ヒト、フレンズ、ヒト、フレンズが所狭しと溢れかえり、すぐ隣にいる者との会話でも大きな声を出さないとはっきりと声が聞こえない程にどよめいている。
「わー!お客さんいっぱいでーす!」
「パフィンさん!あんまり飛び跳ねたら危ないですよ!」
「でもでも!パフィンちゃん前がはっきりみえませーん!」
興奮してぴょんぴょんと跳ねながら辺りを見渡すパフィンを宥めるアカリが彼女の手を引く。
周りに座っている観客の背丈がそれなりに高めなのもあって、小柄なパフィンにとってはライブが見えにくい状況になってしまっているのは些か、いやかなりの不満要素となっている。
すると、頬をむくれさせるパフィンに向かって男が小さく手招きをする。
「パフィンちゃん、パフィンちゃん」
「おじさん?」
「ちょっとこっちにおいで」
首をかしげるパフィンが言われるがままに男の側へと小走りで駆け寄る。
すると、男の太い腕がパフィンの腰回りを掴み、小さな身体をあっという間に頭の上まで持ち上げてしまい、男の頭の後ろに腰掛けさせられた。
「ひゃぁ!?」
「ほら、これでよく見えるんじゃない?」
「……おぉー!すっごーい!たかーい!よく見えまーす!」
男に肩車をさせられたパフィンは瞳を輝かせ、波打つように蠢めいている人だかりを落ち着きなく見渡す。
「だ、大丈夫ですか?」
「よく娘にせがまれていたんで、慣れっこですよ」
心配そうに声をかけるアカリに男が笑い返した時、不意にライブ会場が暗闇に包まれる。
それを皮切りにどよめきが少しずつ収まっていき、辺りにほんの僅かな間だけ静寂が訪れる。
直後、その静けさはステージを集中的に照らし出す光、そしてそこに現れた5人の影によって勢いよく打ち破られた。
「みんなー!!元気にしてたー!?ロイヤルペンギンのプリンセスよー!!」
「リーダーのコウテイペンギン、コウテイだ!」
「イワトビペンギン、イワビーだぜ!」
「ジェンツーペンギンのジェーンです!」
「フルル〜。フンボルトペンギ〜ン」
5人のペンギンのフレンズ、今話題沸騰中のペンギンアイドルユニットPPPがその姿を現
すと、一瞬にして会場内に熱狂的な声援の嵐が巻き起こる。
それに応えるかのように、ステージ内に煌びやかな星やハートの明かりも照らされていき、プリンセスことロイヤルペンギンが声高々に話し始める。
「みんなー!今日は私達のライブに来てくれてありがとー!!じゃあ早速いつものやつ、いくわよ!みんなで一緒に!せぇーのっ!!」
“大空ドリーマー!!”
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