パフィンちゃん、離れる②
所変わって、ライブ会場の外。
さらにそこからずっとずっと離れた、こうざんの麓の平原地帯。
そこでは三人のフレンズ__熊手ハンマーを手に暴れるヒグマ、長い棒を素早く振りかざすキンシコウ、己の拳で戦うリカオンが、ソレを相手にしていた。
「くそっ……まるで手応えがない!」
焦りの表情を浮かべるヒグマが悪態をつきながらソレにもう一度ハンマーによる打撃を加える。
しかし、ソレは時に尾を引き流れる水たまりのように軌道を残しながら異常なスピードで攻撃をかわし、時に殴られた場所がやわらかい粘土のように凹みちぎれたと思いきや瞬時にくっ付き、三人の攻撃をことごとく無効にしていく。
「おかしい……石がどこにも見当たりません」
「どうなってるんだ……石がない#・^5&なんて初めてだぞ!」
「……ダメです!引きちぎった所、全部潰しても石がありません!」
ヒグマの打撃によって飛び散ったソレの欠片を素早く、それでいて一つ残さず潰して回っていたキンシコウとリカオンが狼狽の声をあげたのも束の間、ソレは潰された欠片を全て一つにして幾度となく元の姿へと再生する。
“会イニ行カナキゃ”
「……!?」
「今の声……まさか……!?」
ヒグマ達は驚愕した。
ソレが透き通るような、それでいてとても穏やかな、甲高い女性のような『声』を発した事に、自分達の耳を疑った。
「あ、あり得ないっすよ!BB"@○が喋るなんて!」
それを否定するリカオンが間髪入れずにソレに目にも留まらぬ拳の嵐を浴びせる。
しかし、やはりソレを消し去る決定打にはならず、凹んだり引きちぎれた部分は瞬時に再生していく。
「……KFP財団に連絡を入れる。私達では対処しきれない。リカオン、頼んだぞ」
「……了解しました」
表情に悔しさを滲ませるヒグマの言葉に二人も表情を曇らせるが、パークの脅威になり得るソレを放置する訳にはいかない。
リカオンが遠くへ走り去ったのを確認したヒグマは、ハンマーを握る手に再び力を込める。
「……財団の連中が来るまでこいつを足止めする。キンシコウ、道をふさげ!」
「分かりました!」
それぞれ武器を構える二人は、ソレを挟むように前後に立ちふさがる。
が、ソレは意にも介さないとばかりに虚空を見つめながら同じ言葉を繰り返す。
“会イニ行カナキゃ”
「誰に会いたいのかは知らんが……」
「ここは通しません!」
本来言葉を発する事がないはずのソレはゆっくりとヒグマがいる方向へ動き出す。
当然ソレを先に進めるつもりは毛の先程もない二人は、一気に距離を詰め、ソレの言葉をかき消すように武器を振り下ろした。
“会イニ行カナキゃ”
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