おじさん、アイドルを知る②

それからライブ会場の通路の途中、腹に詰め込んだパフェが決壊しそうになってトイレに立てこもるというトラブルに見舞われながらも(もちろん件の二人も)、フレンズ達に送り届けられた三人が着いたのはステージから少し離れた中央に近い席で、ステージ全体を丁度いい具合に見渡せる距離となっている。


「おぉー!広いでーす!」

「凄いな……これからここに人がたくさん……」


男とパフィンがまだあまり人が来ていないライブ会場を大きく見渡す隣で、アカリは我が事のように胸を張りながら解説を始める。


「このライブ会場は今人気沸騰中のペンギンアイドルPPPが新作アルバム発表やイベントを発信する為のライブイベントを行う場所でもあり、ファンの間では通称『ペパプドーム』とも呼ばれているんです。元々○+…➖#襲撃などの緊急避難場所としても機能していて、施設全体の耐久度も考慮に入れていたのでここまでの規模じゃなかったんですよ。でもパーク全域のハザードレベルがここ数年の間に急激に低下し、アイドルを志すフレンズ達のファン達からの熱い要望もあってこのライブ会場はどんどん拡大増築されていくに伴い色んな施設も併設されて今やかつて存在した××武道館にも引けを取らない____」


まるでエンジンが掛かったかのようにまくし立てるアカリの語りを聞こうとしたものの9割方理解できなかったパフィンは表情が例のモナリザ顔へと変貌していき、男もその爆走する大型トラックのごとき雰囲気に圧倒されるばかりで話の半分が耳に入って来なかった。


「____という訳で、現在のPPPはマネージャーのマーゲイがいる事でも成り立っ、て……」


それに気付いたか、我を忘れて語り続けていたアカリは語気が徐々に弱まっていき、完全に固まっている二人の前でハッとしたアカリは顔がトマトのように赤くなっていく。


「あ、あの、その……あ、あははは……私ってば、また悪い癖が……」

「……パークの事、よくご存知なんですね」


静けさを取り戻し萎縮していくアカリに、男がそっと言葉を返す。

まるで親が子供に向けるような男の笑い方が余計に照れ臭く思えるのか、アカリの赤い顔は火が噴き出さんばかりにさらに赤くなる。


「アカリさん顔まっかー」

「へひっ!?あ、ああうぅぅ……!」


そして言葉攻めの余韻がまだ残る例の顔状態のパフィンに指差され、さらにアカリがたじろいだ時、不意に足元が絡まり……


「わっ、と……きゃああ!?」

「ア、アカリさん!!」

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