パフィンちゃん、スネる①
その夜。
「…………」
「パ、パフィンさん……ほら、おじさんからもらった飴ですよ?」
「……むっ!!」
陽の光がなくなり、所々に取り付けられている灯りだけが道標となった水辺エリア。
寝床としても利用できるログハウス風の休憩所の中で、パフィンはアカリやアーノルド達に背中を向けてベッドに転がっていた。
気まずそうに飴を差し出すアカリの手から目にも留まらぬスピードで飴をひったくるパフィンは、横になりながら口の中で飴玉をバリバリと音を立てながら噛み砕く。
何故パフィンはふて寝をしているのか。
それは今から遡ること数時間前、エトピリカが男にパークの外を見せてもらったのが大元の原因だった。
男がパークの外へと帰っていき、エトピリカと共にパークの中へと戻ってきたアーノルド。パークセントラルに戻る前にエトピリカを水辺エリアへ送り届けた際、パフィン達と出会ったのだ。
そこで男に出会った事についての会話に華を咲かせていたのだが、その後に二人が放ったセリフがまずかった。
「そのおじさんに車に乗せてもらったんだよー!とらっく?っていうんだって!」
「エトピリカたんってば、遠くからでもよく分かるぐらいはしゃいじゃって。親子みたいで胸キュンだったわぁ」
これを聞いたパフィンの機嫌は一気に斜めに傾き、可愛らしい笑顔は眉間にシワを寄せて目くじらを立てた怒り心頭の顔へと変貌を遂げてしまった。
それからというもの、パフィンは人が変わったように口をきかなくなり、今に至る訳である。
「パ、パフィンたん……ジャパリまん食べる?」
「…………」
「……パフィンちゃ〜ん?アリスちゃん、美味しいお菓子持ってきたわよ〜?」
「…………」
「ダメだ……完全にスネちゃってますよ……」
ため息をつきながら頭を抱えるアカリに、アーノルドとエトピリカも困り果てたように唸り声をあげる。
かと言って、いつまでもこのままでいる訳にはいかない。アカリは少し考えた後、アーノルドに向き直る。
「……とりあえず、ここは私が引き受けます。アーノルドさん、エトピリカさんを連れてきてくれてありがとうございました」
「アリスとお呼び……ってそれどころじゃないわね。大丈夫?アタシ、自分の仕事ならいつでも片付けられるわよ?」
「いつまでもアーノルドさんに甘えっぱなしではいられませんから。それに、私だって一端のガイドとしてそれなりに経験はあるつもりですよ?」
にっこりと微笑みかけるアカリを見たアーノルドは、小さく息をつきながら笑い返すと彼女の肩に片手を置く。
「あのドジっ子ガイドがこんなに立派になっちゃって……今のアナタ、どんなハリウッド俳優よりも眩しいわよ」
「そ、そんな……私なんか、皆さんに比べたら……」
「けもの解説タイムになると目付きがヤバくなるのを除けばね」
「え」
そうして余計な一言にズッコケるアカリの肩から手を離し微笑みかけながら、アーノルドは「チャオ☆」と手を振りながら休憩所を後にする。
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