おじさん、帰る?③

大声で叫んだことで複数のラッキービースト達が「アワワワワ……」とエラーを起こしたような声をあげる中で語ったエトピリカの話はこうだった。


彼女の言う『会ってみたいヤツ』というのは、まだフレンズ化していない自分の仲間、つまり野生のエトピリカである。

いつの頃だったか、としょかんで見かけた鳥の図鑑を手に取った時に偶然自分の元になった鳥を見かけ、いつか自身の目で野生のエトピリカを一目拝んでみたいと思うようになり、ついに我慢ができなくなったのが今日だったのだ。


しかし、フレンズがパークの外に出るには特別な試験をクリアしたフレンズのみが持てる『園外探索許可証』を手に入れる必要があること、そしてパークの職員が付き添うのが必須条件だった。

しかし、我慢が効かなくなったエトピリカは勢いに任せてパーク内外を隔てる扉が開いたのを見計らって……


「……で、外に出ちゃったんだね」

「どうしても我慢できなかったの……」

「フレンズガ元ノ生キ物ニ会イタイト感ジルヨウニナルノハ、珍シイ事デハナイヨ。研究結果ニヨルト、一種ノ帰巣本能ニ近イ感情ガ発生スルミタイナンダ。デモ、ルールハ守ラナイトダメダヨ」


ラッキービーストの中の内、エトピリカの近くにいた一体が動き出して解説を交えて二人を見上げる。

しゅんと項垂れるエトピリカに対し更にラッキービーストが何かを言おうとするが、涙目になってきているのに気付いた男が慌ててそれを制止した。


「本当ニ危ナイカラ、絶対ニ……」

「ま、まあまあ……彼女も反省しているだろうし、ここらで勘弁してあげましょう」


男の言葉に今度はラッキービーストが視線を下に落としていき、男は内心で「いやいやいや……」と困惑していると、他のラッキービーストが一体、二人の元へ歩み寄ってくる。


「日本国内デ野生ノエトピリカノ住ンデイル場所ハ少ナクテ、会ウノハケッコウ難シインダ。会イニ行ッテモドコニモイナイ事モアル。ソレデモ会イニ行キタイ?」


ラッキービーストの思わぬ問いかけに男とエトピリカが目を丸くし、辺りに他のラッキービースト達の「アワ、ワ……」というエラーメッセージが途切れ途切れに聞こえるだけになった空間。

さらに少しした時、エトピリカはパッと花が開いたように表情を明るくさせて大声でラッキービーストに詰め寄る。


「会いに行けるの!?」

「会、会イ、アア会イ、会、会ワワワワワ」


いきなり持ち上げられてガシャガシャと上下に揺さぶられた事でまたもエラーメッセージを発するラッキービーストに連鎖するかのごとく、周囲のラッキービースト達もまたうろたえた様子で「アワワワワ……」と次々に動けなくなっていく。


まるでコントのようなやり取りに男は苦笑いを浮かべながらも、エトピリカの肩を軽く叩いて呼びかける。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る