おじさん、帰る?②
どんどん迫り寄るラッキービーストの群れに対し、エトピリカは抵抗の意を示すかのように男の背中に隠れていく。
このままパークの外に長居させるのも良くないが、そもそも何故彼女はラッキービーストから警告を受けるような行動に出たのか。
男は自身の背中で丸くなりながらも服にしがみ付くエトピリカに振り向かないまま、ふと尋ねてみる。
「エトピリカちゃん……だっけ?フレンズさんがパークの外に出るのはいけない事ってラッキーさん達が言ってるけど、知ってたかい?」
「……知ってる」
問いかけにぽつりと答えるエトピリカに、男は迫り来るラッキービースト達を「まあまあ」と制止しながら苦笑いを浮かべる。
悪い事だと知っていた上で、あえてそれをする。先程声をかけた反応からして迷子になったとは考えにくく、一見すると天邪鬼のようにも思える彼女の行為に、男は心当たりがない訳ではなかった。
寂しさから誰かに構ってほしかったのだろうか?それとも外の世界に好奇心を抱いたのだろうか?
いずれにせよ本人の口から聞き出すのが一番だと思った男は、彼女に事の経緯を尋ねてみる。
「なら、どうしてここに来たのかな?何か、理由があるんだよね?」
「……」
男の問いかけにエトピリカは沈黙を続ける。
何か言いにくい理由なのだろうか。加えてこれだけ大量の、しかも警告音を鳴らし続けるラッキービーストに囲まれていては尚更のことだろう。
男は少し躊躇したが、視線を下に向けるとラッキービースト達の元へゆっくりしゃがみ込む。
「……少し、静かにさせて頂けませんか?それに、これだけたくさん囲まれているとこの子も怖がるだけかと……」
「…………」
男の言葉に、先頭に立つラッキービーストが視線を合わせたまま固まる。
そしてしばらくすると、赤く光っていた大量の目が元のつぶらな瞳に戻っていき、警告音も小さくなっていった。
「……ありがとうございます」
男が一言述べると、ラッキービーストの一体が男の背後にゆっくり歩きながら回り込み、未だ男の背中にしがみ付くエトピリカに声をかける。
「エトピリカ。ドウシテパークノ外ニ出ヨウトシタノカナ?」
「……」
「話してごらん。ラッキーさんも分かってくれるかもしれないよ」
優しく声をかける男から、エトピリカは少し考えた後ゆっくりと手を離す。
「…………るの」
聞き取れないほど小さな声で呟くエトピリカに、男とラッキービーストは時が止まったかのように一瞬固まる。
が、そのほんの僅かな沈黙は鶴、いやエトピリカの一声ですぐさま破られた。
「外に会ってみたいヤツがいるのーーーー!!」
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