おじさん、帰る?①

パフィン達がパークセントラルを後にするより少し前の頃。

アカリに飴を渡して立ち去った男は別エリアの工場に向けてトラックを走らせ、物資を工場内へ運び込む。これを数度繰り返し、パークに届ける荷物が無くなる頃にはほぼ必ず陽が西へ傾き始めている。


今日もその例に漏れず、その日の作業を終える頃には水平線が赤く染まり始めており、工場から出てきた男はトラックへと向かう。

その時、ふと視界の隅に何かが動いたのが見え、反射的にそちらに顔を向ける。


その何かを見た男は、思わず「えっ」と小さな声をあげる。

そこにいたのは白黒の髪に頭から生えた羽根が特徴のあのフレンズに非常によく似た姿をした誰かで、男の思考は軽く混乱を起こす。


夕陽の逆光ではっきりとは見えないが、そのシルエットは昨日会ったはずの彼女によく似ていた。

しかし、何故パークの中と外の境目にあたる場所にフレンズが?男が怪訝に思うが、既に足は無意識にその誰かの元へ向かっており……


「……パフィンちゃん?」


逆光による影響が弱くなるかならないかの辺りで、男はふとその名を口にする。

が、その問いかけにも似た言葉は間違いである事にすぐに気付いた。


まず、白いけがわも着ていた彼女とは違い、足を覆う赤いタイツ以外が黒一色となっている。

そして、声に気付いた『彼女』が振り向くと、(はっきりとは覚えていないものの)髪の模様や形がパフィンのそれとは微妙に違う事も分かった。


「え、誰?」

「あ……」


振り向いた女の子に僅かに警戒したかのような声色で問いかけられ、男は声を詰まらせる。

完全に人違いだ。非常に気まずい。男は冷や汗を浮かべつつ、どう弁明すべきか頭を回転させる。

しかし、遠くから聞こえてきたけたたましいブザーのような警告音が思考を阻害し、目の前にいる女の子はギョッとした顔で音の方角へ振り向く。


音のする方からは、ザッと10体以上はいるであろうラッキービーストが目を赤く光らせ、猛スピードでこちらにやって来ている。


「やばっ!?」


女の子は咄嗟に男の背中に隠れるも、ラッキービーストは自身(と男)を囲むように迫り寄り、警告音もどんどん音量を増していく。

男もこれには異常な雰囲気を察し、とにかく事態の収拾に努めようと大量に現れたラッキービーストの中の1体に話しかける。


「あ、あの……一体何があったんですか?」

「警告、警告。ソコニイル『エトピリカ』ハパークノ管轄外ニイルヨ。フレンズハパークカラノ許可ガ無ケレバ、パークノ外ヘ出タラダメナンダヨ」


男の言葉に反応したラッキービーストが、説明するように声を発しながら男を見上げる。

が、エトピリカと呼ばれた女の子はパークの中へ戻る意思がないのか、男の背後に隠れたまま動こうとしない。

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