パフィンちゃん、会えない⑥
それからしばらく経った頃。
『おじさんに会えない』という事実を突きつけられたパフィンと、罪悪感に押し潰されたシーラが管理センターの裏側で大泣きしているのを見つけたセントラルのガイドが二人をセンターの中へ招き入れ、何とか落ち着かせようと職員用の控え室でジャパリまんを振舞っていた。
「ぐすっ……ぐすっ……」
「えぐっ……ひっく……」
「ほぉら二人とも、そろそろ泣き止みなさいな。せっかくの可愛い顔が台無しよ?」
未だに泣き止まない二人にジャパリまん以外にも色々なお菓子などをガイドが持ってきては、二人(特にパフィン)は泣きながらもそれを口に運んでいく。
「ほごっもぐぉ、ぐぶじゅ……」
「泣くか食べるかどっちかになさいな……」
涙と鼻水で顔をぐちゃぐちゃにしながらも口の中にお菓子を頬張るパフィンに呆れながら、ティッシュで彼女の顔を拭うガイド。
そしてガイドの隣に座っていたシーラはジャパリまんを一つ食べ終えると、泣き疲れたのかガイドに身体を預けるように頭を傾けていく。
ちなみにこのセントラル所属のガイド、女言葉で話しているが筋骨隆々のたくましい身体つきでスキンヘッドの黒人男性である事を覚えて頂きたい。
一見すればそのガッチリとした体躯とは不相応にも程がある女々しい挙動が不気味さを際立たせるが、これでもパークセントラルのガイドを務める立派な職員である。
「パフィンちゃん、だったわね?ごめんなさいね。シーラちゃんも悪気があった訳じゃないのよ」
「……はぐ、むぐ……」
「ほんとによく食べるわね……」
まだうっすらと涙を浮かべながらカゴの中のお菓子を一つ残らず食べ尽くすかのような勢いで口の中を膨らませるパフィンに、ガイドは驚きと呆れが同時に来たように声を漏らしながらも言葉を続ける。
「この子ね、今すっごく勉強してるの。何でかって?とある賞を狙ってるのよ」
「……むぐ……」
「『かばん叡智賞』って聞いたことある?フレンズの中でもとびっきり頭のいい子がもらえる賞でね。トランシーバーの件も勉強の一環だったんでしょうね」
「……はむ、まぐ……」
「……まあ、さすがに電波をジャックするのはやり過ぎとは思うわ。この子、熱くなるとちょっと周りが見えなくなっちゃう事がよくあるのよ。本当にごめんね?」
「……もぐ……」
「……マジでよく食べるわね、あなた」
ガイドが説明している間にもカゴの中のお菓子を食べ続けているパフィンは、口元を拭いながらもどこか不満げな表情だった。
「そんなに落ち込まなくても大丈夫よ。そのおじさん、明日もお仕事でまた来るって言ってたし……」
「……それじゃヤです」
「うん?」
「おしごとじゃなくて普通にパークにきたらいいのに……そしたら飴ちゃんもおじさんからいっぱいもらえるのに……」
「……おじさんもきっとそうしたいはずよ。お仕事が忙しいと、なかなかそれも難しいのよ」
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