パフィンちゃん、会えない⑤
シーラが管理センターに入ってしばらく経ち、パフィンは不安を隠しきれないようにそわそわと辺りを右往左往し始めていた。
時には管理センターの表側を覗き込んだり、空へ飛び上がってパビリオン周辺を見渡したりと終始落ち着くことなくシーラからの報告を今か今かと待ちわびていた。
そして、少し疲れて地面にしゃがみ込んでいた時、とうとうシーラが表側からゆっくりと歩いてきた。
「どうでしたか!?」
食いつくようにシーラに詰め寄るパフィンは、彼女の表情が冷や汗混じりに曇っている事に未だ気付かない。
そして当のシーラも「あー……」「そのぉ……」と言葉を濁しており、傍目にも吉報を持ってきたとは決して言い難い雰囲気を醸し出していた。
それに痺れを切らしたパフィンは、頭の羽根を激しく羽ばたかせて足が地面から少し浮きながらも、さらにシーラに問い詰める。
「んもー!はやく教えてくださーい!おじさんはどこにいるんですかー!」
「あ、あの……その、ね?つまり……」
「なんですか!?なんですかぁ!?」
「ガイドさんがトランシーバーを使ってそのおじさんが来たら教えてくれるって話だったんだよね?」
「そうです!このトランシーバーでガイドさんからおじさんが来たことを教えてもらうはずでした!」
「で、でも……それ、シーラの声が聞こえてきたよね?」
「はい!それがどうしました?」
早く早くと急かすようにシーラのどもるような言葉にハキハキと声を返すパフィンは、焦らされることへの苛立ちからか、眉間に少しシワを寄せながらもシーラの言葉に耳を傾ける。
対するシーラは冷や汗が滝のように流れ出ており、その姿はまるで謝罪会見で席に立つ政治家のような出で立ちだ。
「このトランシーバーね……本当はガイドさん以外の声が聞こえないの」
「え?そうなんですか?」
「シーラが電波とかをいじって、それでガイドさん以外の声が聞こえるようになって……えっと、それで……」
「……んもぉーー!!おじさんはどこにいるんですか!?はやく教えてくださぁーーい!!」
そこで黙りこもうとするシーラに堪忍袋の尾が切れたか、パフィンは金切り声をあげながらシーラの胸をぽかぽかと両手で叩き始める。
答えを急かされもう後がなくなったシーラは、覚悟を決めたとばかりに深呼吸すると、パフィンの肩にがっしりと手を置く。
「ひゃ!?」
「あ、あのね!今さっき他のガイドさんと連絡してもらったんだけどね!」
「は、はい!」
「そ、そのおじさん、もう、帰っちゃった!……んだ、って……」
シーラは言葉の末尾になるにつれて声が小さくなりつつも、自分が聞いた内容をそっくりそのままパフィンに伝えた。
そこからの数秒間、まるで時間が止まったかのように二人の間には恐ろしいほどの静寂が訪れる。
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