パフィンちゃん、会えない④
再び場所は変わり、パークセントラルのパビリオン周辺。
パーク内のあらゆるエリアを観察できるパビリオンには常に人だかりができており、海の中や空の上といった通常ヒトが入り込めない場所にいる珍しいフレンズを一目見ようと沢山の客が列をなしている。
しかし、パフィンが今探しているのはパビリオンの近くにある管理センター、さらにその裏側にあるらしい『ラボ』なる施設だ。
パフィンはパビリオンの周辺を歩きながら、まずは管理センターを探し始める。
真正面から見て右回りに辺りを散策していると、半分ほど回り終わるか否かの時点で遊園地との境目、パビリオンから少し距離を置いた木造の外観の小屋が見えた。
水辺エリアにあった管理センターと形はほんの少し違うが、パフィンは小屋にガイドや飼育員達が行き来しているのを見てそこが管理センターだと分かった。
「えっとー、確かここのうらがわにー……」
早速パフィンは管理センターの裏側へと駆け足で回り込む。
が、ラボと思しき建物はどこにも見当たらず、代わりに小屋の中間辺りに作られている小さな出っ張りが屋根代わりになっているのか、その下に見たこともない鉄の塊やクズ鉄が散らばっていた。
不思議そうにそれに近寄り眺めてみると、不意に頭上から声がかかる。
「おー来た来た!」
「ひゃん!?……あれ?誰ですか?」
「ほら、トランシーバーで話してた奴だよ、っと!」
出っ張りから顔を覗かせたのは、黒い制服の上から白衣を羽織り、片目に小さなメガネらしき物をかけ、頭の横から大きく丸い耳が飛び出している女の子だった。
「えっと、どちらさまですかー?」
「チンパンジーのシーラだよ。君はパフィンだったね?よろしく!」
「初めましてー!パフィンちゃんでーす!」
滑るように身をひるがえしながらパフィンのいる地上へと軽々と降り立ったチンパンジーのシーラの自己紹介に、パフィンも挨拶を返す。
と、挨拶をしたはいいものの、パフィンの中には小さな不安が生まれ始めていた。
おじさんはどこだろう?ガイドさんの姿も見当たらない。このシーラって子が知っているのだろうか?
徐々に頭の中で思考がぐるぐると渦巻き始めた事に耐えられなかったパフィンは、思い切ってシーラに問いかけてみる。
「シーラさんシーラさん!パフィンちゃん、飴ちゃんをくれるおじさんと会う約束をしてるんです!ガイドさんといっしょにここにいるんですよね?」
「え?おじさん……アメ?それはちょっと知らないわね……」
「えぇ!?そ、それじゃパフィンちゃんはおじさんから飴ちゃんをもらえないじゃないですか!」
シーラのきょとんとした表情にパフィンの中に生まれた不安が一気に膨れ上がり、慌てふためくという形で表に出てくる。
一方、事態をうまく呑み込めていないシーラは思い付いたようにパフィンに声をかける。
「この管理センターにいるガイドさんに聞いてみよっか?何か知ってるかも」
「お、おねがいします!」
パフィンのすがりつくような態度に怪訝そうな表情を浮かべるも、シーラはそれを承諾して壁伝いに管理センターの表側へとあっという間に姿を消す。
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