パフィンちゃん、会えない②

時間はほんの少しだけ遡り、タスマニアデビルの掃除の手伝いが終わった頃。


ダチョウとジャガーが持ってきたジャパリまんでタスマニアデビルへのお詫びも兼ねての打ち上げパーティー(この時タスマニアデビルの元に新品の箒とちりとりが贈られたのは別の話)を終えた後、空へ飛び立っていたパフィンは胸ポケットに取り付けていたトランシーバーから音が聞こえてきた事に気付く。


「あ!えっと、えっと……そうだ!」


声が聞こえてきたら話し終えるのを待つ。

ガイドの言葉を思い出したパフィンは、トランシーバーを耳に近付けて声が聞こえてくるのをジッと待つ。

しばらくすると、砂嵐のような音が止んで声が聞こえてきた。


“あー…………あー、聞こえますか?どうぞ”


声が終わり「ザッ」と短い砂嵐の音が聞こえると、パフィンはガイドからの説明を思い出しつつボタンを押しながらトランシーバーに話しかける。


「はーい、パフィンでーす!今からそっちに行きまーす!」

“おー、通じた通じた!電波ジャック大成功!どうぞ”

「でんぱじゃっく?」

“まあそれはともかく!もしよかったらさ、そのままパークセントラルにまで来てくれる?どうぞ”

「分かりましたー!今から行きまーす!」


ガイド達がいるのは水辺エリアの近くにある管理センターのはず。

しかし、この時のパフィンは「また飴をもらえる」という事にばかり思考が偏り、なぜパークセントラルに行くのか、そしてトランシーバーから聞こえた声がガイドのそれとはどうにも違うのかという疑問に気付く事すらなく、ただ言われるがままに男との距離を開いていってしまった。


高速で飛んだのでパークセントラルにあっという間にたどり着いたパフィンは、トランシーバーを手に取り再び声を伝える。


「パフィンでーす!パークセントラルに着きましたー!」

“おー、早かったね!じゃあ管理センターの近くにあるラボに来てくれる?どうぞ”

「らぼ?」

“えっとねー、管理センターの裏側。そこにいるよ。どうぞ”

「かんりせんたーってどこですかー?」

“パビリオンって分かる?そこの近くにあるよー。どうぞ”

「パビリオンなら知ってまーす!今から行きまーす!」


このやり取りの間、パフィンはトランシーバーから聞こえる声がガイドのものとは違う事に薄々ながら気付き始めていたのだが……


「はやくおじさんから飴ちゃんをもらいたいでーす!」


底抜けなまでの食欲がその疑問をいとも容易くかき消してしまい、軽やかな足取りでスキップをしながらパビリオンのある方向へどんどん進んでしまうのであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る