パフィンちゃん、会えない①

そんなこんなでパフィン達がタスマニアデビルの掃除を手伝っている頃、パーク外へ繋がる小屋の形をした管理センターで、男がガイドからいつものようにサインをした紙を受け取っていた。


「はい。いつもご苦労様です」

「いえいえ、こちらこそ。それでは……」

「あ、すいません!」


そのまま外のトラックへ戻ろうとする男を、ガイドが思い出したかのように慌てて引き止める。

男が不思議そうな顔で振り向くと、ガイドが髪をかき上げながら男の前まで駆け寄ってくる。


「あ、ごめんなさい……この後、お仕事は急ぎますか?」

「え?いえ、特には……」

「なら、少しだけお時間を頂いてもよろしいですか?ほら、昨日会ったフレンズさん……パフィンさんの事、覚えてますか?彼女があなたに会いたがっていまして」

「パフィン……ああ、あの小さな鳥の子……」


少し口早に告げるガイドの言葉に、男は目を丸くして感嘆の声をあげる。

同時に、彼女が自分に会いたがっている事を聞いて心のどこかでそれを喜んでいる自分に気付く。


しかし、あまり長居はできない。この後も男はパーク内にある他の工場にも物資を運ばないといけないのだ。

だからと言って、あんな小さな子供のお願いを無下にするのも酷な話だ。


少しだけなら大丈夫だろう。男はガイドの頼みを承諾する事にした。


「一応、今なら大丈夫だと思います」

「そうですか!ちょっと待っててくださいね。今彼女に連絡を……」


パッと表情が明るくなるガイドは小屋の中を通り過ぎてパーク内のエリアへ繋がる外へと出て、胸ポケットに引っ掛けているトランシーバーを手に取る。


待っている間、男は昨日の出来事を思い出す。

ガイドに案内されて久しぶりに見たパーク内の自然豊かな光景。そしてそんなパークを彩る明るく可憐なフレンズ達。

男にとってはそれら何もかもが、外の世界で塗装が剥がれ落ちたかのような今を生きる自分にはあまりにも不相応だと感じる程に夢のような色に満ち溢れた時間だった。


思い出しただけで自然と笑みがこぼれそうになる男だが、ふと向こう側で戸惑いの声をあげているガイドが視界に入った事で思考は現実へと引き戻される。


何かトラブルだろうか。怪訝に思った男がガイドの元へ行き、心配そうに声をかける。


「あの……大丈夫ですか?」

「あっ……ごめんなさい。ちょっとトランシーバーの調子が良くないみたいで……」


そう告げるガイドがパフィンの持つトランシーバーへと電波を伝えるボタンを押すも、「ザーーー、ピーー」と電波が乱れるような音が聞こえるばかりで、彼女にこちらの声を伝える事ができないのだ。


「おっかしいなぁ……さっきまでこんな事なかったのに……」


焦るガイドが何度もトランシーバーをいじり続けるも、事態は一向に改善しないまま時間ばかりが過ぎていった。


そしてその頃、タスマニアデビルの手伝いを終えたパフィンは__


「はーい、パフィンでーす!今からそっちに行きまーす!」


ガイドからの声が伝わっていないはずのトランシーバーに元気に話しかけながら、男とガイドがいる場所とは全く違う方向へと飛んでいくのだった。

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