タビーの災難④

三人の視線が空の上へと一斉に向けられた直後、高速で駆け回っていたはずのカマジの動きが完全に止まる。


「おぎゃっ!?」


突如頭に痛烈な衝撃が走ったカマジの足がピタリと止まり、無音だった空間には風が吹き乱れる音が爆発するように轟き渡る。


「え、何ごふぅ!?」


何事かと目を丸くしたカマミツは前方から猛スピードで回転しながら飛んでくる何かに激突され、大きく吹っ飛ぶ。

同時に手に持っていた箱が弾けたように飛んでいき、風が乱れた事で空中でのバランスを崩しかけていたカマイチの額へクリーンヒットした。


「お゛うっぐふぉ!?」

「ああぁあああぁあ〜〜〜〜!!!!」


悲鳴をあげながらベーゴマも真っ青のスピードで回転しつつ無茶苦茶な軌道で飛び回るそれは、額に箱がぶつかった痛みを押さえる暇も与えずにカマイチを吹っ飛ばした後、弾き飛ばされたかのごとく上空へと飛び上がる。


次第に回転は止まらないもののスピードが緩まっていき、そのまま引力に従うまま地上へと落下していく。

そして数秒という僅かな間を置いてそれが地面にぶつかり、投げられたボウリングの球のように近くの木にぶつかるまで転がり続けている時だった。


“バキャッ”


鈍い音が空間内に響き渡り、呆気にとられていた傷だらけのタスマニアデビルは音が鳴った方へゆっくりと振り返る。


「…………ぁ…………」


その光景を見た直後、タスマニアデビルは全身が痛む事も忘れてふらふらと立ち上がり、おぼつかない足取りでそれに歩み寄る。


彼女の心は箒とちりとりさえ無事なら決して折れる事はなかった。例え意図的とさえ思える不幸の連続や、悪人と間違われて強豪のフレンズ達に叩きのめされようと、決して。


が、つい今しがた聞こえたその音は、彼女の心そのものから鳴り響いた音でもあった。


「ぁ…………ぁ…………」


タスマニアデビルの目下に広がるその光景。

無残にも修復不可能なまでに破壊された箒とちりとり。

これまで幾度となく耐え忍んだ努力が報われるどころか完全に無に帰した瞬間。


それらの受け入れ難い現実は、とうとう彼女の心を盛大にへし折ってしまい____


「ぁぁぁあああああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!!!」


この世のものとは思えない程のけたたましい絶叫をあげるタスマニアデビルの顔からは普段の強気な雰囲気が完全に消え失せ、強烈な癇癪を起こした幼子のそれにも近しい狂った表情になり、その顔からは大粒の涙がボロボロと止めどなく流れ出した。


さすがにこれには肝を冷やしたか、痛む箇所を押さえながらも疾風忍者隊はギョッとした顔で泣き叫び狂うタスマニアデビルに視線を集中させる。


そしてタスマニアデビルの心にトドメを刺したそれ__パフィンは、身体が逆さまになった状態で木にもたれたまま、何が起きたのか分からないとばかりに目を点にしていた。

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