タビーの災難②

綺麗好きなタスマニアデビルの心はまだこの時点では折れていなかった。

ゴミで汚れた環境を許すまじと奮起する彼女の決意はなかなか硬かったものの、それをへし折ろうとばかりに降りかかる災難も凄まじかった。


勝負をしようとジャガーを追いかけ回すヘラジカに撥ね飛ばされ。


「うおおおおおお!!待つんだジャガーーー!!私と勝負してくれぇーー!!」

「勝負なんかしないって!頼むから諦めてよ〜!!」

「こ、こっち来んなげぶおぉ……!」


突然そこかしこに穴が開いたかと思えばそこに尻からハマって出られなくなり。


「ひいいぃ!?何だこれええ!」

「す、すいませんであります!すぐに埋めるであります!」


なぜかジャングルに現れたヤマタノオロチに酔っ払いのオヤジのごとく絡まれ。


「なんじゃあ?我の酒が飲めんと抜かすかぁ?」

「ちょ、勘弁してくださごぼぼぼ……!」


ふらりと現れたミナミコアリクイとヒメアリクイの威嚇合戦に巻き込まれ。


「おしょっちゃうじょう!ほ、ほんとにたべちゃうじょう!」

「あ、あっち行けよぉ!」

「お前らがどっか行けええええ!!グワアアァアァアアァア!!!!」

「ひゃああ!?」

「ごめんなしゃ〜い!」


ほぼ完全に無我の境地に達した状態で超スピードで爆走するサバンナシマウマに何度も激突され。


「ぼぉーーー…………」

「ちょぐぉ、やめべ、いだ、ゆるじ……ぐふえぇ……!」


これ以外にも突風、通り雨、その後の凄まじい暑さなど、フレンズ以外の災難にも見舞われ続け、タスマニアデビルの心はいよいよ限界に近づいてきていた。


「ぐす……ぐすっ……」


しかし、どんなに踏まれて蹴られてはねられても、彼女の手には必ず箒とちりとりが力強く握られていた。

この箒とちりとりがある限り、彼女の心は決して折れ____


「今だ!囲め!」

「ふぇ……?」


半べそをかき始めていたタスマニアデビルを、突如三つの影が取り囲む。

三つの影は瞳を妖しく光らせ、それぞれ桃、青、黄色の服と髪色をしており、頭にはそれぞれ1、2、3とゆらゆらと不気味に光る数字が揺らめいている。


「疾風忍者隊、見参!」

「お前だな?報告に上がっていた悪さをしているフレンズってのは」

「ボクらに目を付けられたからには逃がさないよ〜ん」


この疾風忍者隊しっぷうにんじゃたいと名乗った三人組のフレンズこそ、この回想に入る前にタスマニアデビルから言葉にならない怒りをぶつけられていたフレンズ、カマイタチである。


「わ、悪さだって?何言ってんだお前ら……」

「ほう、しらを切るつもりですか……カマジ」


桃色のカマイタチ『カマイチ』が『カマジ』と呼んだ青いカマイタチに促すと、カマジは懐から取り出した丸めた紙を広げ、そこに書かれている内容を淡々と読み上げる。


「えー、まず一つ目。コンゴウインコに箒で殴りかかり傷害未遂。二つ目、コモドドラゴンの毒の研究を妨害。三つ目、ジャガーを拉致しようとするヘラジカの暴挙の通報怠慢、四つ目____」


一体何をどこでどう聞いたらそうなったのか、その報告書にまとめられている内容は(一部合っていると言えば合っているとは言え)全てタスマニアデビルが加害者側になっているというとんでもない報告だった。

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