パフィンちゃん、待つ④
それからしばらく経った頃。
パフィンは窮地に立たされていた。
「あぅあぅ……」
「…………」
「うぐっ……ぐずっ……っぶふぅっぐゔゔ……!」
顔を涙と鼻水でぐしゃぐしゃにしながら睨みつけてくるそのフレンズは、地面に正座するパフィンとその横にいる姿が似ている三人組のフレンズに涙の向こう側で燃えたぎる怒りの視線を向けていた。
「「「……すいませんでした……」」」
「おばでぬゅげあ○☆%☆◆$〜〜〜〜〜〜〜!!!!」
パフィンの隣で正座をする三人組フレンズの謝罪も虚しく、まさに『言葉にならない怒り』をぶつけているのは、両手にボロボロになって壊れた箒とちりとりを握りしめるタスマニアデビルだった。
何故このような惨状に至ったのか。原因はパフィンがガイドの元を離れて飛び立った頃よりもさらに前の時間へと遡る。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「あー……もう朝かぁ……」
頭をポリポリと掻きながらのそりと起き上がるタスマニアデビルは、頭上から差し込む木漏れ日に目を細めながら茂みの中を歩き出す。
ここはジャングルエリア。彼女の主な活動拠点でもある。
「あ、タビーちゃんおはよう……」
「グワアァァァ!!タビーって呼ぶのやめろって言っただろ!!」
背後からかけられた声に拒絶反応を示すかのごとく叫ぶタスマニアデビルが振り返った先にいたのは、彼女によく似た姿だが左目に眼帯をしているフレンズ、オーストラリアデビルだった。
それに物怖じする様子も見せないオーストラリアデビルは、ずんずんと茂みの中を進んでいくタスマニアデビルの隣を小走りで並行していた。
「今日はどこ行くの?遠出するの?一人で行くの?遅くなる?」
「あーもーうるさいな!どこも行かねぇし他のちほーにも行かねぇし嫌でも一人にならねぇし遅くもならねぇよ!」
苛立った様子でオーストラリアデビルからの質問に一つ残らずしっかり答えるタスマニアデビルが足を止めたのは、少し開けたきれいな円形の空間だった。
タスマニアデビルは辺りを一瞥した後、近くの切り株に立てかけてある箒とちりとりを手に取る。
「タビーちゃん、お掃除するの?」
「だ、誰にも言うなよ!あとタビーって呼ぶのやめろって言ってるだろうが!」
後ろから覗き込むオーストラリアデビルに怒りながらも、タスマニアデビルは地面を目を細めながら睨む。
「チッ……こんなに汚くしやがって……」
悪態を吐く彼女の言う通り、地面一帯は汚れた落ち葉や木の枝だけでなく、風で飛ばされてきたのかパーク内で発生した人工物のゴミやガラクタまでもがこれでもかとばかりに散乱していた。
「大丈夫?けっこう汚いけど、手伝おうか?」
「フン!逆に足手まといになるからどっか行ってな!こんなゴミ共、俺がとっとと片付けてキレイにしてやる!ほら、行った行った!」
「あ、ちょっとタビーちゃ……」
心配するオーストラリアデビルを空間の外へぐいぐいと押しのけ、鼻息荒く意気込むタスマニアデビルは、このゴミだらけの空間を掃除するつもりなのだ。
意外にも綺麗好きな性格のタスマニアデビルは、目の前のゴミをどうにかしたくてたまらなかったのもあるが、何よりもここはタスマニアデビルのお気に入りの場所。それを汚されるのは綺麗好きな彼女にとってはこの上なく腹立たしい事でもあった。
ちなみにオーストラリアデビルを手伝わせず別の場所へ追いやったのは、綺麗さっぱりゴミがなくなった光景を見せて驚かせてやろうというちょっとした思惑があったからだ。
が、これから楽しいお掃除タイムを迎えようと少しニヤついていた彼女の元には、まるで良からぬものに目を付けられたのかと言わんばかりの災難が続々と降りかかる事となる。
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