パフィンちゃん、待つ②

「ガイドさぁーーん!!」


海岸から少し離れた場所にある水辺エリアを抜けて、パークガイドなどの関係者だけが入れる小屋を囲うフェンスの前に程なくして到着したパフィンは、格子状の門扉を固く閉ざす「の」のマークが描かれた丸い機械の横にあるボタンを押し、機械に向かって大きな声で呼びかける。

どうやらこのボタンと機械はインターホンとしての役割を担っているらしい。


「はーい!……あら、パフィンさん?」


丸い機械から何かが動くような音が聞こえ、「の」のマークを中心に円状に空けられた小さな穴からは、ガイドの声が発せられる間だけ赤い光が規則的な点滅を繰り返している。

ガイドの声が聞こえるや、パフィンは間髪入れずに機械へと食い付くように呼びかける。


「ガイドさん!おじさん来てますか?」

「おじさん?……あ、昨日の人ですね?うーん、今日はまだ来てませんね……」

「えー……」


ガイドからの返答に落胆するように声のトーンを落とすパフィン。

それを聞いてか、門扉を閉ざす機械がガシャリと重い音を立てながら縦半分に離れていき、扉が小屋のある奥行きに向かって開いていく。


パフィンが不思議そうにそれを見ていると、小屋の扉が開いて中からガイドが小走りで駆け寄ってくる。


「パフィンさん。これ、よかったら持っててください」

「これ何ですか?」


迷彩柄の携帯用端末のような小さな機械を渡されてまじまじと見つめていると、ガイドはパフィンの視線に合わせるように前かがみになる。


「『トランシーバー』っていう機械で、遠くの人とお話ができるんです。おじさんが来たら、それで教えてあげますよ?」

「ホントですか!?」


パッと明るい表情でガイドに目を向けるパフィンだが、それを制止するようにガイドは「ただし」と少し語気を強めて返す。


「おじさんは普段ここへはお仕事で来ていて、お客さんとして来ている訳じゃありません。昨日はたまたま時間が空いたのでパークの案内をしていたんです」

「うーん……?」


理解が及ばないのか首を傾げるパフィンに、ガイドは続けてゆっくりと説明する。


「つまり、おじさんが来ても会ってお話できるとは限らないんです。それだけは分かって下さいね?」

「じゃあ飴ちゃんはもらえますかー?」

「……パフィンさん。まさかとは思うけど、昨日もらった飴……」

「ぜんぶ食べちゃいました!おいしかったでーす!」


あれからジョフロイネコと言い争いにはならなかったものの落とした飴を必死に探し回っており、そこへガイドも急ぎ足で戻ってきた事で無事に全ての飴を回収して半分こにできたパフィンだったが、かなりの数があったはずの飴を彼女は一晩で食べ尽くしてしまったのだ。

彼女の底無しとも取れる食欲からしてよもやと感じていながらも、にっこり笑うパフィンにガイドは呆れたように苦笑いを浮かべる。

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