パフィンちゃん、数える③

それからしばらく時間が経って__。


「数えました!9個でーす!」

「えーっと、えーっと……」


飴の数が少なかったパフィンはすぐに数え終わるが、多い方を数えていたジョフロイネコは数え終わるのに悪戦苦闘していた。

そこへ男が指差してアドバイスを送る。


「ジョフちゃん。そういう時はね、10個ずつまとめてごらん」

「でち?……こ、こうでち?」

「そうそう。そうすれば数が分かりやすくなるだろ?」


男の助言を頼りにジョフロイネコは飴を10個ずつまとめていく事で、何とか残りの飴を数えていく。


「えーっと、こっちが今10個になって、次のこれも10個で……」

「そうそう。ジョフちゃんその調子だよ」

「…………分かったでち!今数えた分は30個でち!けどこれは1個だけ余ったでち!だから31個でち!」


無事に飴を数え終えたジョフロイネコは爛々と瞳を輝かせて嬉しそうに男に答えを発表する。

男はにっこり笑い、所々に小さな古傷らしき跡が見えるゴツゴツとした手でジョフロイネコの頭を撫でる。


「そうそう、偉いよジョフちゃん」

「いひひ…………ふわっ!?」


それに思わず頬を緩めるジョフロイネコだが、ハッと我に返るかのように声をあげると頭に乗せられた手を払いのけて後ずさりする。


「ジ、ジョフは大人でち!子供扱いするんじゃないでち!そ、そんな頭なでなでなんか嬉しくなんてないでち!」

「ん?そうかい?」

「頭なでなでされて喜ぶジョフさん……しっかり録画しましたよー?うふふ」


自分を取り囲む大人達とやいのやいのと騒ぎ立てている隣では、人知れずパフィンがジョフロイネコの数えた分と自分の分を少しずつ数え始めていた。


「えーっとぉー……確かジョフちゃんが数えたのは31個……それでパフィンちゃんの分が9個……えーっと、だからこの二つをー……………………おじさーーん!!」


不意に呼ばれた男はパフィンの甲高い呼び声に振り返り、口では文句を言いつつ喉をゴロゴロと鳴らすジョフロイネコの元から立ち上がりパフィンの元へ足を向ける。


「パフィンちゃん、どうかした?」

「おじさんおじさん!パフィンちゃん、飴を数えられました!」

「へぇ、すごいじゃないか。いくつだった?」


男の感嘆の声に自慢げに胸を張るパフィンは、テーブルの上に20個ずつまとめられた飴を指差す。


「ジョフちゃんが数えたのは31個で、パフィンちゃんが数えたのは9個。これを合わせて、答えは……41個です!」

「……んー、パフィンちゃん。もう一回数え直してみようか」


少し難しかっただろうか。男が苦笑いを浮かべて間違いを指摘した時、突如パフィンは不敵に笑い出す。


「ふっふっふ……おじさんは一つ、じゅーだいなミスをおかしています!」


パフィンが指差した先には、20個にまとめられた飴の山とは別の飴が1個、テーブルの隅に転がっているではないか。

それを見た男はあっと声をあげて目を丸くする。それは、一番最初にジョフロイネコに渡した1個の飴だったのだ。


「パフィンちゃんは気付いてしまいました!40個だったら半分こにできるけど、41個だと半分にできません!パフィンちゃんは半分こにできるだけの飴ちゃんをようきゅーします!」

「はははは……こりゃ一本取られたね」


男は参ったとばかりに笑うと、懐からさらに九つ飴を取り出す。


「ほら、これと合わせると飴の数は50個。これで半分こできるね」

「やったー!飴ちゃんがふえましたー!」


嬉しそうに羽根をパタつかせるパフィンは男の周りをぴょんぴょんと飛び跳ね、男も釣られるようにふと笑いが溢れる。



刹那、男の脳裏にまたも映像がフラッシュバックする。

自分の周りを笑いながら走り回る幼い少女が、自分の手を引いてぐるぐると回る。

回る。笑顔と共に少女は男と回り続ける。

回る。

回る。

回る。

回る

回る

回る

回る

回る

回る

回る



「__じさん!おじさん!!」

「っ!?」



回転は目の前で自分の肩を揺さぶるフレンズによってピタリと止まり、男の視界は一気に色が戻っていく。

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