パフィンちゃん、数える②
「できたでち!」
……と、自信満々に飴を分けて見せたジョフロイネコだが、その分け方は雑と呼ぶにもいい所。
飴の山を引っ掴んで大雑把に分けたのが原因で、パフィンの分の飴が目に見えて少ない。
「ジョフちゃん」
「でち!」
「アウト」
「でちっ!?」
笑顔で両手をバツ字に交差させる男にジョフロイネコが目を見開いて固まると、次はパフィンが飴の散らばるテーブルに顎を乗せて唸りだす。
「うぅ〜……こんなたくさんの飴ちゃん、どうやって分けたらいいですかぁ……」
「もうダメでち……でちは飴ちゃんを食べられないでち……」
早くも意気消沈をしているジョフロイネコの隣で未だ諦め切れないパフィンは飴を指で動かしたり山を作ってみたりと、如何にして飴をきっちり半分に分けるかを模索している。
そんな二人の後ろで、男とガイドがまたしてもコソコソと話し始めていた。
「……本当に沢山持ってますね……一体どこに入れてるんですか?」
「ん?ああ、ここですよ」
ガイドの疑問に答えるように、男は制服のジッパーを少し下ろして服の内側を見せる。
中には留め具が付いている大きめの内ポケットが複数付いているのが確認でき、どのポケットも何かを詰め込んでいるように膨れ上がっている。
「飴、好きなんですか?」
「ええ、まぁ……っと、そろそろヒントをあげた方が良さげですかね?」
話をしている二人の目の前では、二人のフレンズが若干泣きが入り始めながらもうんうん唸り続けている。
「もうダメでち……さよならジョフの飴ちゃんたち……」
「やだぁー!飴ちゃん食べたいー!」
「……そうですね。そろそろ可哀想になってきましたし」
苦笑いを浮かべるガイドから目配せを受けた男は、唸る二人に向かい合うように小さなテーブルの前に座り込む。
「二人とも困っているみたいだね」
「おじさ〜ん……」
「目の前の飴が遠いでち〜……」
「そんな二人の為にヒントを用意したんだけど、聞きたくない?」
男の言葉に二人の身体の羽根や耳にあたる部分が大きく跳ね上がり、ハッと顔を見合わせる。
「聞きたいでち!」
「聞かせてください!」
「お、おお……」
勢いよくテーブルから乗り出してきた二人に男は「そんなに食べたかったのか……」と胸の内で圧倒されながらも、テーブルに散らばる飴を指差す。
「まず、ジョフちゃん」
「でち?」
「最初にやったように、飴をもう一回分けてごらん」
「え?でもさっきアウトだって……」
「あれで出来たって言っちゃったからね。まあ、もう一回同じ事をやってみてごらん」
「むぅ……」
男に促されるまま、ジョフロイネコは再び大雑把に飴を二つに分ける。
相変わらず量の差は目に見えてひどいが、今度は男はそれにダメ出しをする事はなかった。
「やったでち……これをどうするでち?」
「ここからが重要なんだ。よく聞いて」
男がもったいぶったようにテーブルに顔を近付けると、それに合わせるように二人もお互いの頬がくっ付く程に顔を近付ける。
「ここで二人には共同作業をしてもらおうか。パフィンちゃんはこっちの少ない方を、ジョフちゃんはこっちの多い方を数えてみてごらん」
「パフィンちゃん数えます!」
「ジョフも数えるでち!」
男からの指示を受け、二人はやる気十分とばかりに立ち上がるとそれぞれの飴の山の前まで動き、飴の数を数え始める。
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