振り返ればあの時ヤれたかも:編集I ①
さてさて、こっからが本番!
最初は編集Iさんのお題「振り返ればあの時ヤれたかも」です。
シリアスにもコメディにも、果てには年齢制限をかけられる内容にもできそうな万能型タイトルですね。
他の二名に比べて自由度が高い分、人によって全く違ったストーリーにできそうですが、まずは「応募条件/編集コメント」と「編集Iさんのプロフィール」を振り返ってみましょう。
―――以下抜粋
〇振り返ればあの時ヤれたかも:編集I
・十代の読者を対象としたタイムリープものエンタメ作品
・50000字以上の中編作品であること(未完の作品は選考対象外)
縦軸を作らないと50000字は厳しいと思います。
このお題に対してどのような話を展開するか考えた上で起承転結を上手く織り交ぜ、書き進めていただけますと幸いです。
皆様のご応募、お待ちしております。
〇スニーカー文庫編集部・編集I
担当作品(過去担当作含む) 『ロクでなし魔術講師と禁忌教典』『おまえをオタクにしてやるから、俺をリア充にしてくれ!』『この素晴らしい世界に祝福を!』『戦闘員、派遣します!』『魔装学園H×H』『特殊性癖教室へようこそ』など
略歴 ライトノベル編集6年目。
―――以上
では、先に編集Iさんについて見ていきます。
と言うのも、「俺のラノベコン2」で編集Iさんが出ているので、そちらの結果も参考にした方が良いと考えたためです。
という訳で、「俺のラノベコン2」の結果発表より編集Iさんのコメントを抜粋。
――以下抜粋
〇新人賞を最終選考まで勝ち抜いた作品:編集I
この度はご応募いただきまして、ありがとうございました。
審査の結果、受賞に至るものはございませんでしたが、最終選考まで残っただけあるとうなずける完成度の高い作品も多くあり、個人的にはライトノベルの力、層の厚さみたいなものを感じました。
気になった作品に上げました3作について話をしますとタイトルから作品の面白さがにじみ出ており、中身もそれに沿ってしっかり構成されていて、非常に楽しく読めるものであった。というのが共通してございます。
昨今のライトノベル市場は書籍の売り上げ減少に伴って、緩やかに縮小傾向です。
その中でも売れる作品、好かれる作品というのはタイトルが読者の心をくすぐるものになっているのではないでしょうか。
今後創作をつづけていこうと思っている方はそのあたりも意識しながら、取り組んでいただけると良いのではないかと思いました。
世の中に良作が今後もたくさん生まれることを期待して、述べさせていただきました言葉を総評とさせていただきます。
〇大賞/特別賞
該当作なし
〇気になった作品はタイトル
キャンセル技でコンボ魔法を使ったら異世界で最強だった……となるはずだった( #魔法キャン )
https://kakuyomu.jp/works/1177354054884589327
著者=芳賀 概夢
我が家は犯罪者たちのたまり場になっています。
https://kakuyomu.jp/works/1177354054882512257
著者=易松弥生
その平面を力に変えて~かつて『ムネナシ』と呼ばれた少女は己が薄胸により最強の力を得る~
https://kakuyomu.jp/works/1177354054880215079
著者=ktr
―――以上
では、ここからどのような事が分かるか考えていきます。
まず、注目に値するコメントは
『気になった作品に上げました3作について話をしますとタイトルから作品の面白さがにじみ出ており、中身もそれに沿ってしっかり構成されていて、非常に楽しく読めるものであった。というのが共通してございます。』
でしょう。
今回の「タイトル斬りコン」のコンセプトそのままですね。
つまり、タイトルからイメージされるストーリー、世界観、構成などを考える事によって、読者へストレスを与えない作品作りが一つの最適解に繋がっているのではないか、という考え方かと。
文章みたいなタイトルにしろという訳ではなく、例えば後々分析する編集Oさんのコメント、『タイトルの性質上、過度にシリアスな作品にはならないと思っています。』に表されるように、読者の期待や予想を悪い意味で裏切る事になりかねない、というリスク管理による発想でしょう。
そう考えると、タイトル(≒テーマ)から作品作りを行うというのは、執筆における訓練という捉え方もできます。
力試しだけでなく創作力の向上も兼ねて応募する、というのも一つの手ですね。
閑話休題。
では、編集Iさんが担当した作品タイトルから想像される作品像について深堀してみたいと思います。
編集Iさんが担当した作品はこちら。
『ロクでなし魔術講師と禁忌教典』『おまえをオタクにしてやるから、俺をリア充にしてくれ!』『この素晴らしい世界に祝福を!』『戦闘員、派遣します!』『魔装学園H×H』『特殊性癖教室へようこそ』
この中からタイトルだけで中身をある程度予測できるものと、そうでもないものに分けると、
★予測可能
『ロクでなし魔術講師と禁忌教典』:タイトル全体の雰囲気からバトルファンタジー物と予測できる
『おまえをオタクにしてやるから、俺をリア充にしてくれ!』:内容を要約したらタイトルになっているパターン
『特殊性癖教室へようこそ』:タイトルからしてヤバイ奴
★今一つ
『この素晴らしい世界に祝福を!』:タイトル末尾の「!」によって若干コメディ臭がするが断定はできない
『戦闘員、派遣します!』:前作「このすば」が有名であるため、そのタイトル形式を踏襲していると思われるが、現代物かファンタジーかも分からない
『魔装学園H×H』:バトルファンタジー物だろうが、「H×H」の部分がパっと見で理解できない
予測可能な作品は、内容が王道そうか、逆に尖っているかという印象を見た人が受けるかで分けました。
今一つの3作品はネームバリューの問題で中身を見なくともある程度予測できるという点がありますが、全く知らない人から見れば人によって受け取り方が変わる可能性があります。
書籍に関して言えば「表紙絵」という強いアピールポイントがあるため、それだけで雰囲気を伝える事はできますが、ここでは考えないようにしましょう。
あくまで、読者に与える情報が「タイトルのみ」の場合についてです。
では、上記の作品のタイトルを更に細分化してみていきます。
●『ロクでなし魔術講師と禁忌教典』
タイトルの構成が「~と~」という形。
作品において重要なキーワードを並列して組み込む比較的よく見る作り方であり、読者に対しても自然と重要ワードを伝えながら王道物であるというイメージを抱かせやすいです。
本作品では主人公(に類するキャラの場合も)が『魔術講師』である事。また、その性格は『ロクでなし』であるというのも分かります。
加えて『魔術講師』という言葉から、世界観として「魔術」が存在する事、作品舞台は「学園」である事、主人公は学生ではなく大人である事を特に意識する事なく認識する事ができます。
続いて、『禁忌教典』という言葉から宗教関係、さらに言えば禁忌である物を持ち出すヤバイ組織と敵対する構図を想像する事でバトル物の匂いを漂わせています。
しかし、主人公は『ロクでなし』であるのだから、「普段はだらしないがいざという時は頼りになる、強いキャラクター」ではないかと考えられます。
以上の点から、この作品は「平時と緊急時にギャップのある成人主人公が織りなす王道バトルファンタジー」であると推測できました。
●『おまえをオタクにしてやるから、俺をリア充にしてくれ!』
好みの別れる、しかし類型は多数存在する、「あらすじをタイトルにした」タイプ。
この形はその作品を一言で表せている、という点において読者への訴求効果が高い。「読んで見たら想像と違った」という現象が起きにくいタイトルの付け方でしょう。
また、『おまえ』『俺』という人称から、この作品は一人称の男性主人公視点である事も分かります。
『おまえをオタク』『俺をリア充』という言葉から、男性主人公はオタクであり、ヒロインはリア充の立場。お互いの得意分野を秘密裏に教え合う事でストーリー展開をするラブコメ。
さらに、ヒロインは「リア充であるにも関わらず、わざわざオタクになりたい変人」であるとも受け取れますね。
そもそも普通はそんな(タイトルに表されるような)事態になどならないでしょうから、単純に「どうしてそうなったのか」というストーリーにも興味を持てるタイトルになっています。
以上の点から、この作品は「一人称男性主人公視点の日常系ラブコメ」であると推測できました。
●『特殊性癖教室へようこそ』
インパクト重視の、簡単に言えば「なんじゃそりゃ!?」と思わせたもん勝ち系タイトル。
「登場キャラはみんな変態なんだろうな」
ジャンルも内容も分からないが、それだけは分かる。
逆に言えば、それだけ分かれば問題ないと作者が思っているわけです。
一応分析するならば、『教室』という言葉が入っているので、舞台は学校。主人公を中心としたキャラは学生たちだろうと予測できます。
また、『ようこそ』は新参者に対する言葉であり、キャラの多くは新入生、ではとも考えられます。
また、上記とは真逆の立場として、『ようこそ』は大人――即ち、担任教師に掛かっているパターンも考えられます。
つまり、主人公=”『特殊性癖』を持つ問題児ばかりが集まったクラスに新しく赴任した教師”という形も想定できる訳です。
そして、『特殊性癖』というキーワードからある程度キャラたちが成長しており、上記の要素と組み合わせて「高校一年生」くらいの年代で性格がそれぞれ個性的であろう事。作品全体のテーマは『性癖』であろうことも読み取れます。
以上の点から、この作品は「『性癖』をテーマとした学園コメディ」であると予測できる作品になるでしょう。
●『この素晴らしい世界に祝福を!』、『戦闘員、派遣します!』
「このすば」がヒットした事によって同じ形のタイトルになったと思われる2作品。
正直に言うと、タイトルからはジャンルも分かりません。
ただ、両タイトルとも末尾に『!』を使用しており、使用していない場合に比べてコメディ色を読者にイメージさせやすくなっているのではと私は感じています。
『戦闘員』に関してはシリアスに受けとられやすいですが、『派遣』という言葉と『!』によってその空気は薄れているのでしょう。
●『魔装学園H×H』
『魔装』と『学園』によってある程度内容は想像できるが、初見では『H×H』の意味を測りかねます。
”H”の持つ言葉のイメージと『学園』、『H×H』という表記によっては『ハイスクールD×D』といった作品を思い出すため、同じ読者層には訴求効果も認められるかもしれません。
しかし、その印象は人によってバラつきがあると考えれるため、万人に対する作品像とはならないのではないかと思われます。
以上、編集Iさんの担当した作品について、タイトルから想像できる作品像について深堀してみました。
私としては内容を知っている物もありますが、知らない作品もあるため間違っていたらすみません。
ですが、これはあくまで「タイトル」から受ける印象によって分析した結果であり、作品内容とのズレが小さければ小さいほど、その作品のタイトルは内容に適していると言えるのではないでしょうか。
これら編集Iさんが担当した作品タイトル、および「俺のラノベコン2」のコメントから、編集Iさんは”タイトル”というものにそれなりの拘りを持っていると考えられそうですね。
では、いよいよ編集Iさんの求めるタイトル「振り返ればあの時ヤれたかも」について考えてみましょう。
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