2話





見上げる程に聳え立つ、大きな建物。

雪など降っていないはずなのに。

いや、それとは違った

凍り付く程の冷たい風が

吐き気を催す程の醜気が

僕の頬を霞めて。


少年は、息を飲み。

体を強張らせ。







「 ほら、行くぞ! 」






そんな少年に、一人ではないと

背後から肩を叩いて、声を掛けて

追い抜いていく誠。

その声にハッと我に帰れば

パンパンッと頬を叩いて目を開き。





「 うん! 」





少年は真っ直ぐな眼差しで

前へと進み。











誠に続いて足を進めると

多くのドアの並んだ廊下に辿り着く。

ある一室のドアに誠は手を掛けると

少年の方へ振り向き。




「 じゃあ、俺は中に入ってやる事やってくるけど。

  心意は・・・、そうだな。

  適当に中、ウロついて来いよ。 」


「 ・・・そうですね。

  では、お言葉に甘えて

  そうさせて頂きます。 」


「 迷ったら連絡しろよ? 」


「 はい 」




誠は、少年のポケット。

その中身の携帯を指差し告げる。

少年は、少年として携帯と呼べる端末は所持しているが

金銭面が貧しすぎる為、かなり機能に制限が掛けられていて。

誠からすれば、まともに使えるような状態では無く。


その為、最近。

誠が予備用の端末を

少年に渡したのである。




そう言葉を交わし、室内へと入る誠。

扉が閉まると同時に

一人になると、少年は何処へ行こうかと

思案し始めた。




さて・・・、どうしようかな。




情報も無ければ地図も無い。

そんな施設内部を見回しながら

少年は、ふとそう呟く。



そして、勘を頼りに

てくてくと。

足を進めるのであった。

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