魔石グルメ ~魔物の力を食べたオレは最強!~(Web版)

俺2号/結城 涼

一章

こんな間抜けな死に方って



 どこまでも白く光り。

 先が見えないこの場所で。


「お主が分かる場所でガチャを回すか、分からない場所で回されるかの違いだけじゃ」


 神は言った、前と同じだろと。


「一応聞きたいんですけど、じゃあ、俺の前世もそうして誰かがガチャみたく回したと?」


「この私じゃない別の神が回したぞ」


「その時の結果は?」


「コモン、いわゆるノーマルじゃ」



 前の俺は、ただのパンピーにしかなれない運命だったわけか。

 道理で、それなりの大学にいって、それなりの企業に入ってそれなりに仕事してたわけだ。



 ん?でも十分幸せだったような。


「コモンなんて当たりの部類じゃからな」


 人の考え読まないでください。


「レアともなれば、お主の居た世界ならそれなりに儲かってる会社の社長にもなれたし、適度に長生きなスポーツ選手にだってなれたぞ」


「レアでそんなにいいとこいけるんですか」


「ウルトラレアにでもなれば……石油王の子として産まれるなんてことも可能じゃった」


「すげえ」


「お主の場合死因がちょっと可哀そうじゃからな、レア以上確定ガチャ回すのじゃから感謝するのだぞ」

 

「俺の死因、ですか?」



 正直記憶にない。

 なぜなら、この場所に運ばれた時点で俺の記憶は消去されるからだそうだ。

 一般常識などの記憶は残っているあたり、いわゆるエピソード記憶が消されるのだと予想する。



 あれ、でもならどうしてそれなりの大学にって。



「ここにいる間は少しは思い出すこともあろう、名残みたいなもんじゃからあまり気にしないでよいぞ」


「なるほどご都合主義」


「徐々に徐々に、そうした記憶も消えていくからの」



 なるほど、確かに名前すら今となっては思い出せないし、どんな家にいたか、とかどんな奥さんが居たのかなんて事もすべて思い出せない。

 死因……なんだったんだろうなあ。

 レア確定を引かせてくれる程なんだし、結構エグかったんだよなきっと。



「ちなみに嫁はおらんかった、年齢=童貞じゃったしな」


「このちくしょうめ!!」


「死因は……ふむ……」


「やっぱり言いづらいことでしたか」



 神が言いよどむ。

 そりゃそうだよな、普通に生きてきた人間にレア渡すぐらいだ。拷問なんかかけられたのかな、あのご時世に。



「お主まだ虫が大嫌いだったのは覚えておるかの?」


「あ、はい言われればそうでしたね」


「お主の家にゴキブリが出ての」

 

「は?えぇそれでどうなったんですか」



 ゴキブリ?ただの虫じゃねえか。

 それがどうして俺の死因なんてもんに繋がるんだ。



「夕食を作っておったお主は、唐突に出現したゴキブリに慌てふためき」


「……ゴクリ」


「後ろに倒れたのじゃ」


「……」



 なにその間抜けなの。本当に俺なの?俺の死因なの?



「それじゃ俺の死因は頭を打って……?」

 

「いやその料理するときに使っていた包丁がの……勢いよく倒れたもんで包丁を上に放り投げたのじゃ。

それが倒れたお主の喉に刺さって、割とすんなり死んだ」


「間抜けにも程がある!?」


「料理に凝っていたからのぉ。包丁も立派な出刃包丁を使っておったし、重さがあったんじゃろうて……

下手に苦しむよりよかったのではないかな」



 こんな恥ずかしい死因があっていいもんか……。

 いやまあ、たしかに、人生をやり直したいとか思わなかったこともないわけではない。

 同じ日々の繰り返しにちょっと飽き飽きしていた部分はあるし?



「うむそうじゃろ。でもあの死因はないのお……はっはっは!」



 神が口を大きくあけて笑う。あぁもう笑ってくれよなんて間抜けな死に方だ……

 次回の人生に期待させてください、俺の人生はこれからだ!



「ちなみに同じ地球に生まれることはできぬぞ」


「……へ?」


「もうすでにトレードも終わっておるからな、魂としてはすでに消却済みでじゃ。それで発生したエネルギーを世界に還元したからの」


「なに言ってるんですか、それって俺はもう生き返れないんじゃ」


「いや生き返るぞ。別の世界でな」


「別の世界?いやまてそもそもトレードって」

 

「世界の維持にもいろんな力がいるのじゃよ、まあそれはよいお主は生き返れるのだからいいじゃろ。それで納得せよ」

 


 トレードとかいう、納得できないセリフがでてきたけど。

 生き返れるんだな?このまま消滅するとか、考えるだけで怖すぎてちょっと吐き気出てくるんですが。あ、次の人生ではそれなりにイケメンにしてくれますか?



「レア以上じゃからな、容姿もまあ悪くなることはあるまいて」

 

「割と勝ち組になれそうですね」


「まあ基本的な素質が常人より高いだけじゃ。運もよければそれこそ王族に生まれたり、貴族になったりなんてこともあるがの」


「結局のとこ」


「そういうのをすべて含めたガチャじゃしな」



 なるほどわかりやすい。

 でも、生まれた時から才能がしっかりとあるのはわかりやすくていいな。

 適度に頑張るだけでも、まあまあな結果はでそうだし。本当に勝ち組だ。



「話過ぎたの、もう時間が近いようじゃ」

 

「それじゃそろそろ」


「うむ。お主の次の運命の始まりを」

 

「で、ガチャはどちらに?」


「便宜上ガチャといっただけで普段はガチャを回すわけじゃないのでな……というわけで、緊急で作ったものがこちら」



 ドンッ

 神が服の中から出したのは、ゲームセンターとかによくある普通のガチャマシン。

 よくその小さな体からそんなでかいの出せたな神様。

 あ、ちなみに神様は幼女でした。やったね。


 

「ほいメダルじゃ」


「あれ、二枚?」


「なにせレア確定ガチャじゃぞ?そりゃ200円ガチャになるにきまっておろう」


「神様そういう演出嫌いじゃないです」

 


 よっしゃ200円ガチャだぜ!

 二枚を入れて回すこの高級感。まさに並び立つものなし。



「おおおおお!!金色のカプセルだ!!」



 間違いなくレアじゃない。

 ウルトラとかシークレットクラスのすげえの引いたぞこれは!!

 これで俺の次の人生明るいです。本当にありがとうございます。


 

「まあ全部金色のカプセルじゃけどな」


「台無しじゃねえか!」


「まぁまぁ落ち着け、開けてみてはどうじゃ?」


「おおそうだった……」



 パカッと、金色のカプセルを開ける。

 その中に入っていたのは、なんかおみくじっぽい紙。

 これに結果が書いてるのだろうと開いてみる。



「スーパーレアだ!!」


「運がいいのぅ……」


「でも神様、ウルトラとかもあるんだろうし……スーパーなら別にそこまでは」


「レアガチャとはいえスーパーはいろんなバランス崩すからの、そのなかに3つしか入っとらんはずだぞ」


「……でもこの大きさのガチャなら」

 


 そう、普通のサイズのガチャマシンだから三つ入ってるなら、別にそこまで確率が低いわけじゃない。

 それに、ウルトラレアとかシークレットとかいろんなものを考えるなら、結構可能性としては悪くないんじゃないだろうか。



「それ見た目はフェイクみたいなもんじゃ。サッカーコートぐらいの大きさはあるところに3つ入れただけじゃぞ」


「運営卑怯すぎじゃねえか!」


「じゃからびっくりしておろうに。まぁいいわ……それでなんと書いてあったのだ」

 


 そうだせっかくスーパーレア引いたんだから中身見ないとな!

 なんだろななんだろな……世界有数の金持ちになれる運命とか?それこそハーレムとか……へへ



「……」


「なんじゃ、はよ申せ」


「なんだよこれええええええええええええええええええ」



 書いてあった文字は何一つ想定していなかった。

 毒素分解EX……なにさこれ?



――――――――――



 書籍版、あるいは、コミカライズなどからいらしてくれた方のためにご容赦いただきたい箇所がございます。

 Web版は開始時点から違いがあるように、キャラの名前や文章構成、キャラの視点や情報にも多くの違いがございます。また、『コミカライズは書籍版準拠』のため、描いていただいている内容はweb版ではなく、書籍版の内容となります。

 ※原作はあくまでも書籍版で、こちらはweb版です。


 何卒よろしくお願い申し上げます。

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