第6話:キスと下僕(げぼく)
空中に黒い霧のかかった丸い物体が浮いている、と言っても誰にも見えないんだけど・・・
散らばっていた他の魂も集まって来て、一つになり、黒い霧は消えた
(思わず、魔王が出てしまった、あいつは首!にならないかな?やり過ぎたかな?)
ぽわぽわと空中を飛んで港町に向かっている
(<現生魔王>なんて、しゃれんならんわ~、魔王なのに、<現生勇者>でもあるってどういうう事?本当にもう・・・疲れた・・・・途中魔力切れるかと思った、なんか魔力が途中で増えた?なんだろう?)
肉体が近くなったのか目の前の景色が変わる
(!?何?動けない・・・・唇に何か柔らかいものが)
うっすらと目を開けると、目の前が肌色・・・
「!ん~!!!」
前の物をどけようとしたが、石の様に動かない
「あ!倭子(わこ)ちゃん、戻って来たかい?ビックリだよねその状況、退(の)けようとしたんだけどびくともしないいんだよ、石みたいに、そんなにもがくとまるで、打ち上げられた魚みたいだね」
なんか、おやじだんの口調がが可笑しい
「ああ、状況は男の子にキスされてるんだよ、いやぁ戦いの様なキスなんて初めて見たよ、お互いに吸い付き合ってるのに、エロさの欠片も無いキス・・・君達病んでるね・・・」
「ん!NNN!」
親父さんの何か冷たい声が、怖い・・・
ごっくん!口の中のつばを飲み込んだ、
ピコーン頭の中で音がした
音の後に、テロップが
[※※と※※と魔力交換がなされています、それにより魔法が発動されています、<下僕契約中>相手の承諾は済んでおります、全員と下僕契約しますか?]
[はい][いいえ]
いいえの場合、相手はあなたに関する記憶を失います、さらに精神異常が起こる可能性があります。ご注意ください。
なによそれ!選択予知ないじゃん
精神異常ってなによ、この目の前の男って・・・宮本よね・・・なんで私にキスしてんのよ~
しぶしぶ[はい]を選択する
どさっと、目の前の男が横に倒れる
「何なのよ・・・唇なんか変・・・」
「腫れてるよ・・・真っ赤に口の周りはうっ血してるし」
おじさんが言う
「そこの彼の様に、漫画みたいだね」
その言葉がやはり冷たい
宮本を見る
「きもっ、うぁあいやだいやだ!」
唇が赤く腫れ、口の周り青痣が、黒い魔力の一片が口からこぼれている
「ヒール」
宮本と自分に治癒魔法を掛ける
鏡を貸して貰い確認する
「・・・目が赤い・・・うそっ」
「途中から赤いよ、目を見開いてキスする様は不気味だね」
「えっと・・・おじさん大丈夫?」
「ん?大丈夫じゃないかな?鬼気迫るキスは心が病むんだね」
その鬼気迫る様子を語りだした
「倭子ちゃんが幽体離脱してから暫くすると、倭子ちゃんが真っ青になって来たんだ、私は慌てて叫んでたんだね、”どうしようどうしよう、倭子ちゃんが死んでしまう!”って、そしたら外に居たんだよ、その子が・・・
すぐ入ってきて”魔力切れになりかかってる”って言い出して、”魔力交換で私の魔力をすぐ与えます”って言うんだ、魔力交換は見たこと遭ったんだ、米軍兵士が手を繋いでね、それを想う浮かべてたら、”体液交換の方が早いので”って言っていきなりキスをしたんだ。
魔力を注ぎ込んでいたんだろう、人工呼吸みたいだったよ最初は、そしたら倭子ちゃんが目を真っ赤にして、彼の頭を引っ掴んで、唇を吸い始めたんだ、ビックリしてたら、彼の方の目は青くなって、同じく吸い始めたんだ!吸い付き合いはまるで戦いだったね、暫くすると二人共動かなくなったんだ、唇を合わせたまま、・・・・さすがにそのままはどうかと思って、引き離そうとしたんだけど、びくともしないんだ、何トンあるだってくらいに持ちあがりもしない・・・諦めてここで見守っていた」
遠い目をする親父さん、
「怖かった・・・・」
ボソッと言った
「精神治癒魔法かけましょうか?」
「・・・たのむ」
「エクストラルヒール」
親父さんの目に光が戻った
「腹減っただろう?何か作るよ」
そういって厨房に入って行った
鏡を見ながら、目の色を戻していく
黒くなった目を確認してほっとした。
奥からおじさんが出て来て、机の上におにぎりの乗った皿を置く
「ありがとう、おじさん、もう迷惑かけないよ、ごめんなさい」
「・・・・大丈夫かい?」
「うん、これから攻撃体制も変わるだろうから、戻れなくなることは無いと思う」
「バイトはいつでも来てくれ、居ないとまた皆寂しがるし」
「ありがとう」
「うーん・・・」
宮本が目を覚ました
目がまだ青い宮本
「じっとしてろ」
そう言って手をかざすと、色が戻って行く
記憶の同期が成り、記憶が戻った
魔王の力、この世界の魔王は下僕を使い、今まで魂で行ってきたことと同じことが下僕で出来る。
下僕は、魔王の許可が下りれば魔王と同じ力が使え、経験値のやり取りもできる。
定期的に魔力交換をしないと下僕は動けなくなり終いには死ぬ。
貪るようなキスをしたのは魔力切れで、宮本の魔力を食おうとしたから、さすがに全部持っていかれたら大変と、それに対抗するように賢者のスキルで対抗して身を守った結果だった・・・
下僕は魔王を殺すこと出来ない、魔王が死ぬと解放されるが、魔王の記憶は無くなる。
魔王は、下僕を殺すことは出来ない、魔王と契約している限り下僕は死なない、魔王は下僕の力を自由に使える。
地球の裏側に居ても念話が出来る。
下僕は、魔力交換の後、こう質問される
[魔王(わこ)と下僕契約をしますか?]
[はい][いいえ]
[注意、いいえを選択すると、魔王の記憶は無くなります、すれ違っても誰だか認識できなくなります、それ以外は何も起こりません。]
精神異常はそこには無かった
おじさんにお礼を言い、二人とぼとぼと寮に向かって歩く
「なんで、[いいえ]にしなかったんだ、下僕だぞ意味わかってる?」
「・・・忘れたくないから・・・」
「なんで、お前らなんだよ・・・絶対に関わりたくない奴らが下僕って・・・こんな変な魔法スキル、今になって発動するなんて・・・」
皆と契約しますか?それの意味
公園を横切ると、前世魔王の浅水が居た。
「主よ」
「主はやめろ、とりあえず私の部屋に行くぞ、期待する目を向けるな何もないからな!」
浅水は1週間前からAクラスに戻っていた。
「手を」
3人手をつなぐと、一瞬で私の部屋に戻る
部屋は1DKお風呂とトイレは別なのはありがたいと思っている、それに部屋も8畳くらいあるので私的にはかなり広いと思っているのだが、二人の様子が可愛そうな子を見る目で見る。
S~Dクラスは3DKキッチンもお風呂もトイレも広い、お風呂なんて高級ホテルの様だ、毎日ハウスクリーニングが入る。
ベットの横のクッションに座らせると。
無限収納からジュースを出す
「どうして[いいえ]を選ばなかったのか、宮本に聞いていたが私も答えた方が良いか?」
「はぁ・・・・一応」
「貴方が私の物にならないのなら、逆も有かと思った、わたしが貴方の物になる・・・良いじゃないか!」
「想像通りの答えでありがとう・・・」
「聞いてよろしいでしょうか?」
「宮本?敬語は禁止、タメなんだから普通で」
「・・・・分かった、渡辺の力を痛い位感じるんだこれはいったい、人間か?」
「それ以上言ううな、自分でも思っているんだ」
「勇者だろう?倭子は」
浅水が言った
「え?魔王だろ、下僕の魔法は魔王との契約だ」
「両方」
「「え?」」
「魔王であり勇者であるのよ私は」
「「そんな、まさか」」
「時々聞こえる、、魔王を殺せ、勇者を葬れ!・・どちらも自分・・・いずれは自分で自分を始末する必要があるんだ・・・」
「「そんなまさか」」
「すぐには死なん、指名を果たすまでは、異世界攻撃の元<邪神>を倒すまで」
「私らは何をすればいい?」
「とりあえず、私のこれから貰える経験値を、全無あんた等に送るから受け取れ」
「渡辺は成長しなくても良いのか?」
「邪神と対峙できるのは、前世チート持ちの人間のみ、神になったら対峙出来ない」
「神?」
「<勇者>と、<魔王>の他に<神もどき>の称号がある、これ以上レベルが上がると神になってしまう、そうすると邪神と戦えないから」
「・・・神・・・」
「こっちに転生するとき、この世界の創造主に、勇者の従属奴隷か、魔王の下僕を数人は持った方が良いと言われた、心のバランスが崩れるから、下僕で発散しろって・・・いじめればいいのだろうか・・・」
「やめてくれ」
二人は蒼白になった、
「2人に命令、兎に角学校では私に関わるな!私に触るな、私ことを喋るな!経験値は受け取れ、もしも私が戦うことがあったら、トドメはお前ら刺せ以上」
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