致死量の自由

 カゴの中の小鳥は窓から見える大空に憧れを持っていました。

 小さなカゴの中では羽ばたくことは出来ず、いつも窓から青い蒼い大空を飛ぶことを夢見ていました。

 別に今の生活に小鳥は不満を持っているわけではありません。

 優しい飼い主に適切な飼育。小鳥はこの生活を気に入っていました。

 けれど、どんなにより良い環境であっても空を飛ぶという本能に勝るものなどありません。

 そんなある日、飼い主のミスでカゴの扉は閉じられておらず、窓は大きく開け放たれていました。

 この時、この瞬間、小鳥は多くの意味で自由でした。

 小鳥は考えます。より良い環境を捨て大空へ飛び立つか、危険を避け優しい飼い主の下に残るか。どれを選んでも幸も不幸もついて回ります。それを小鳥は理解していました。

 小鳥は選択をしました。

 カゴから出て、大空へと飛び立ったのです。

 小鳥は一度も飛んだことはありませんでしたが、本能がやり方を覚えていました。

 小鳥はその小さな翼でこのどこまでも広がる空を飛んでいきました。

 この空は小鳥に何を与えたかは小鳥にしかわかりません。

 ですが、これだけは分かります。

 小鳥はその自由な翼で大空へ飛び立ちました。そこに息苦しさがあるはずがありません。


 紅い羽が風に運ばれて窓から部屋へと舞い降りて来ました。それは小鳥が旅立った事を飼い主に静かに教えていました。

 

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