貴方/記録
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今日一日、どうでした
お仕事でしたか、お休みでたしたか
楽しかったですか、疲れましたか
ご飯は食べましたか
何を食べましたか、おいしかったですか
月は見えますか
満月ですか、三日月ですか
そろそろ寝ますか
おやすみなさい
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私は怖くて泣いてしまいます。
忘れてしまう事は怖いです。
でも、何より自分が1人になっていくのがとても怖いです。
この身体は25年の時を重ねているけれど、私はそのほとんどを忘れてしまいました。
自分がどういう生をたどってきたのかを、両親の顔と名前を。
私はどんな人間だったのだろう。
明るかったのかな、クールだったのかな。
私はかつての私を想像するけれど、貴方のいう私を想像できない。
庭に植えた白いバラはちゃんと咲いてるかな。
いつ植えたか忘れてしまったけど、その花を私が大切にしていた事は覚えてます。
だから大切にしてください。それは過去の私だから。
ある日、貴方の名前を思い出す事ができなくなりました。
忘れてしまった事の恐怖と不安は今までの比ではありませんでした。
今は貴方の名前を、次は貴方の顔を、次は貴方との思い出を、最後には貴方への想いを忘れてしまうんじゃないか。
そう考えただけで、私は泣いてしまいます。
例え、貴方との思い出を忘れてしまっても、貴方への想いがあるだけで私は幸せでした。
だから、私は貴方に感謝の言葉を伝えていこうと思います。
私を見つけてくれて、私と一緒になってくれて、私を好きになってくれて、私を想ってくれて、
ありがとう。
私はもうすぐ死ぬのだろうと思います。
私は安心しました。
これでもう怖がらずにすむから、もう1人になっていくこともなくなるから。貴方への想いを抱いて死ねるから。
でも、貴方は泣いてしまうでしょう。
貴方を1人にするのはとても嫌です。貴方と離れるのは悲しいです。
本当はもっと話していたかった。もっと一緒にいたかった。もっと貴方を想っていたかった。
けれど、これは私の我が儘。私は弱いから、貴方のことを忘れたくなかった。1人になりたくなかったから。
だから、私は記録を残します。私の記録を、貴方への記録を。
私は貴方にとてもひどいことをしています。
私は自分のことも貴方のことも忘れてしまうのに、貴方には私を忘れてほしくないんです。
私は貴方に好きと伝えた事があったのでしょうか。
私はそれさえも忘れてしまいました。
だから、貴方に伝えます。
私は貴方を愛しています。
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