誕生の岩

 空へと伸びる巨大な黒い石柱。

 それは決して自然的なものでも、人工的なものでもなかった。

 なぜこんなものが存在しているのか誰も知らない。いや、この石柱から生まれた人類はその事を疑問に思うことすらしなかった。

 最初に誕生した一組の男女から早数十世紀。人々は石柱を中心に街を作り、繁栄していた。

 この頃になって増え続けていた人類の数はバランスがとれていた。

 一人死ねば一人誕生し、二人死ねば二人誕生した。死亡と誕生の天秤が釣り合ったのだ。

 これによって人類は増える事はなくなった。

 それから半世紀、人類は一人も誕生しなくなり、緩やかにその数は減少していった。

 生殖機能を持たない人類に抗う術はなく、ほとんどの人間はこの運命を受け入れていた。

 我々人類は寿命が尽きると土塊となり大地へ還る。

 十年連れ添った妻の最後を見届け、正真正銘最後の人類となった僕は、誰にも最後を見届けてもらえない孤独感に頬を濡らし、静かに大地へと還った。

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