行間2 記憶の残滓 -聖女-

 人は私を予言者と言う。百年続く戦争に終止符を打つ神の使いだと。


 私は剣の代わりに旗を持ち、鼓舞し、故国のためにこの身を捧げ続けた。そうすることが私の生きる意味だから。



 人を救って、街を救って、救って救って救って救って血を浴びて浴びて浴びて――



 私はいつの間にか『聖女』として祭り上げられていた。

 大きすぎる戦果。そしてこの身に集約する畏敬と憎悪の念は、田舎娘の求めた世界など容易にぶち壊す。


 ――もう戻れない。いや、戻る場所など最初から存在しなかった。


 民衆は、私を戦火の先頭に置いてただ祈るのだ。

 けど誰も私の隣には立とうとしない。

 どんなに血生臭い一本道を歩き続けても、私はただ孤独だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る