行間1 記憶の残滓 -天啓-

 ――私には何もなかった。





 金もなければ学もない。自分で進む道すらまともに決められない。

 貧しさはとっくの昔に限界を超え、その日生きるために今何をすべきか。

 頭の中にあるのはそんなことだけ。


 信仰すべき神の存在など、とうに忘れていた。

 私は……神の信徒ではなく、貧しさの奴隷だった。



 そんな神から最も遠い場所に立っていた私の頭上に、神の啓示は降りてきた。



 それは私がこれから辿るべき道筋。運命。未来。

 生きるための最善最良の手段だった。

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