第299話 スサーナ、一杯一杯になる。
「そうですね、色々噂は乱れ飛んでいますし、母も思いつきで事を進めますから。」
レオは小さく肩をすくめる。
「母がどうするか、は、そうですね。とりあえずこのまま催し毎に気に入った娘を集めて、最終的に5名か6名か。これという娘を自分の妃宮の行儀見習いにする、というのが現状、確かに予定されてることでしょうか。」
すこし視線をさまよわせ、目を伏せて、そのまま口元で笑った。
「そして、僕はそれには特に意見はないです。」
スサーナはレオのその表情の意味を読みかね、いくらか悩んだ後に質問を重ねる。
「そう、なんですか。ええと、噂ではレオくんが乙女探しの席上で誰かを選んだらそのまま婚約者コースだとかも言われていますけど。」
「それは流石に……いえ、多分、ないと……無いとは思います。」
レオは言いかけて悩んだような表情をし、それでも首を振った。苦笑が深くなったのはちょっとはありうると思っているからだろうか。
「さすがの母でもどういう人間かを確認せずにそう事を運ぶことはないと思いますから。妃宮預かりになる、というところまでは確実だと思います。」
「なるほど。……最終的に5,6人は選ばれて、妃宮の行儀見習いになる……んですね。レオくんのお母様はどのような方をお選びになりそうなんでしょう。」
「はい。……基本的には母の好みだと思います。明るくて屈託がないような方……が好きなのかと。……僕はそれはいいと思ってるんです。母も行儀見習いの娘たちを持つのは悪いことではないですし、身分を問わないお嬢さんたちなら気も楽でしょう。」
――じゃあ、レオくんが気遣わなければサラさんが選ばれる可能性は低いのかな。しかしなるほどレオくんもいろいろ考えて……いやでも、ちょっと他人事っぽくはないですか。そのお嬢さんたち、言ってみれば婚約者候補なのでは?
レオくんの気持ちはとてもわかるものの、それだと後々何らかの問題が出たりはしないだろうか。多分お嬢さんたちも、そのご実家も、貴族社会も、それからザハルーラ妃もそう思ったままなのではなかろうか。スサーナは危惧する。今の物言いだと、なんとなく対処らしいことは行っていないように聞こえる。
――重ねて聞くのは失礼かなあ。いやでも、サラさんのこともあるわけですし。
「そ、そういう感じでいいんですか? 失礼ですけど、その、そうなったらその方たちは婚約者候補みたいな感じになるのでは? ええと、私なんかが口をだすことでは無いんですけど、そういう平和な感じで済むんでしょうか。色々期待したりだとか……後々問題になったりしませんか?」
スサーナはあれ程嫌がってまめしばになっていたのだから後々自縄自縛になりそうな事態を放置するのは、という思い半分、妃宮でのその「行儀見習い」がどうなるのかレオくんはじゃあわかっているのかな、ならそちらでの過ごし方を聞いておきたい、という思い半分で言葉を継いだ。多分教団は短期決戦を見込んでいるだろう、と思うのだが、やっぱり思考汚染の危険性は気になる。
「……そう、ですね。皆きっと、期待するでしょうね。母も。」
彼は目線を落とし、ぽつりと呟いた。火に透ける睫毛が蝋燭の揺れを映す。
「あ、あの、その、すみません。レオくんを嫌な気分にしたいわけでは――」
「流石にミランド公の屋敷の使用人はよく躾けられていますね。本当に誰も居ないのは久しぶりです。……ええ、これなら口を滑らせてもいいかな。スサーナさん、誰にも言わないでくださいね。」
レオはあわあわするスサーナに目を向けると、眉を下げた顔でふにゃっと情けなげに笑った。
「く、口を?」
「はい。ええと、僕は……その、結婚するつもりはないんです。……ですから、彼女たちを母が妃宮の行儀見習いにするのは文句はなくても、それだけです。婚約者を選べ、と言われたら……拒否する……でしょう。」
「は、はい。それはわかります。急に結婚話を進められて、これまで関係なかったのに急に婚約者が出来るような状況ですもん。急すぎてお嫌ですよね。」
スサーナはこくこくと頷く。レオくんがそう言うのはそれなりに予想はついた。なし崩しでたった13,4で婚約者が決まるのはそれは面白いことではないだろう。これまでレオくんはそう言う話がある立場ではなかったのだろうし、今回のことだって本来の名目は乙女探しだ。レオくんはザハルーラ妃が貴族たちに唆されて婚約者を探したがることを最初からだいぶ嫌がっていた。
「それもあるんですけど。それだけではなく。これから、ずっとの話です。」
「ずっと?」
「僕は妻を持つつもりはないんです。すくなくとも王子という立場では。ミランドを継ぐという立場なら……まだわからないとは思いましたが。そう……決めています。……皆に知られたら、まだそんな事を言っているのかと言われるんでしょうけど。」
レオくんの声が苦笑交じりのまま、静かに張った、とスサーナは気づく。
「ですから……彼女らを婚約者と扱うこともないですし、「いつか」の婚約者選びに母の妃宮が影響することもないんですよ。起こらないのですから影響することもありません。行儀見習いに入ったご令嬢達は……期待させ続けてしまうなら申し訳ないですけれど。」
「そう……なんですか?」
スサーナは目を瞬いた。
急に決まったこの結婚話が嫌だ、という話はとても良く分かる。13や4では結婚のことなど考えられない、というのも。それにしたってこの先ずっと結婚する気がない、というのは思い切った話だ。
「あ……政治的な問題ですか? 王家の方ともなると色々な思惑が関わってくると今回のことで聞きました。」
ぱっと思いつくのは政治問題だろうか。お家騒動、とかそう言うことなのかもしれない。レオくんは継承位の低い王子だ、と聞いたが、それでも何か難しい立場が発生したりするのかもしれない。
――王家の人を殺害しよう、なんて事件のあとですもんね。敏感にならないはずもないですよね。
しかし彼はゆっくり首を振る。
「いいえ。……そういうことではないんです。僕が兄たちに気を使っているのだ、と思う方は沢山います。母もそうです。でも、そうじゃなく。ただ、そうしたくなくて。……僕の、わがままです。スサーナさんも怒りますか? 王の血筋の義務を果たすのが王子の勤めなのに、嫌だなんて思うなんて、って。そんなこと思うべきではないのは僕もわかっているんです。ですが。」
吐いた息と混ざったような声が重くてスサーナは戸惑った。
――え、ええと。これ、よくわからないけど、本気の話なんだ。人に言えないような重たいことを話してもらってる、んですね? 流したり話をそらしたりするのは駄目なやつ。
「いえ、ええと、事情はわかりませんから無責任なことは言えませんけど、怒りませんよ。」
スサーナは考えつつ言い募る。
「ええと、なにか理由があるんですよね。レオくん的には譲れないような理由が。だったらまず、その気持ちは仕方ないです。気持ちは自由ですもん。」
事情はわからないし、簡単に太鼓判を押すのも無責任だ。だが、嫌だと思ったことについては返答ができる。
――レオくんの言葉尻を取ったちょっとずるい言い方ですけど。ああいう言い方をするってことは、そこを気にしてらっしゃるんでしょうし。
そう感じた、ということを否定されないだけでもちょっとは楽になる気がする、スサーナはそう思っている。
「気持ちは自由……」
「はい! ええと、それに、そう、その上でですよ、レオくんが結婚しないと国家崩壊の危機! みたいな局面でもないですよね。外国と結婚が決まってるとかそういうことでもなし、何かがどうしようもなく滞る、というわけでもない、ですよね? 今の言い方ですと、お兄さん達は得をする……みたいですし? じゃあ今は胸を張って通しても悪いことはないのでは。」
呟いたレオに頷いて、スサーナは指折り数えてみせた。逆に言えば支障があれば頷けない、ということでもあるものの、現状、そこまで大きな問題では無さそうな気もするのだ。スサーナが上げた事柄に対してはレオからは訂正の声はない。
「一応、王家に生まれたものの義務ではあるんですよ。でも……ええ、兄たちは得をする、と思われていますし、誰かが子を残せば……それで良くはあります。まだ先の話ですし……それも少し複雑ではあるんですが。」
「じゃあ乗っからせてもらってもいいのでは? 御兄弟で大きな対立しているとかは聞いたことはないですし、派閥の方は損をするのかもしれませんけど……ええと、別にレオくんだって派閥の人のために王子様をしているわけじゃないですし。」
一応お父様なんかもレオくんの去就に影響される派閥の人間だとはわかっているが、とりあえずそれは置いておく。
「スサーナさん、言いますね……」
どうやらそう言う物言いをする人間だとは思われていなかったらしい。レオがびっくりしたように目をしばたたいたのを見て、スサーナはあえてちょっと舌を出してみせる。暗くなっていた顔がふっと緩んでくすっと笑ったので大体において勝利だ。
――そういう人間も、そうでなくてはいけない人間もいますけど。レオくんは多分、そこまで義務を負わなきゃ回らないような立場じゃないですよね。だったら好きに振る舞ったって、そこまで責められるようなものでも。
「……ありがとうございます」
「いえ……、その、むしろ、差し出がましい口を聞いてすみません。レオくんのご事情も十分知らないのに。」
「いいえ。」
レオはそう言うとポットを手に取る。
「あ、お湯がもう無いですね。……僕に淹れさせてください。」
「は、ええ……。」
椅子から立ち上がったレオにスサーナはなんとなく言葉を探しながら悩んだ。これはもうこの話は終わり、ということだろうか。よくわからないけれど、きっと信頼してここだけの話をしてくれたのだから、簡単に否定しないで、もっとじっくり聞く姿勢を見せたほうがよかったろうか。言い募り過ぎた気もする。でも。
「事情……、折角ですから聞いて頂けますか。」
火鍵から湯沸かしポットを下ろしながらレオがぽつりと言う。
「王族の自覚がない、と言われるような話なんです。……なにを愚かな、と言うような。」
「その、私なんかでよろしければ……!」
スサーナは急いで身を乗り出し、頷く。かしゃんと皿が音を立て、転げかけた菓子を慌てて抑えたスサーナを見て彼は少し笑った。
「……春の園、というものがあるんです。」
レオはテーブルに戻ってきてお茶のポットに湯を注ぐ。どぼどぼとポットに湯が満たされ、慣れない手付きにスサーナは少しハラハラしたが、湯の線を見ながらまた口を開く彼の言葉を追う方に専念することにした。
「神々の慈悲で与えられたものだといいます。国基を保つ王族を維持するために。ヴァリウサにだけではなくて、起源の古い国にはあるというものだそうです。王族の子を生む女達が集められる場所です。」
それは後宮だろうか、とスサーナは思う。複数の伴侶を持てるこちらの制度的にはあっておかしいものではないが、王妃達はそれぞれ王宮の敷地内に妃宮を持っている。もしかするとそれ以外にもそういう場所があるのだろうか。そんな場所のことは聞いたことはないが。
「そんな場所が? 王妃様達は妃宮に住んでおられますよね。」
「はい。昔は……というより、父の代以前では、王子が妻を娶れるようになるとそこに女性が集められたそうです。……今そこには人はいません。父は……国王はそれを使わずに王妃を決めました。僕らは皆……フェリス以外は婚前に出来た子なんですよ。本来は子を生んだ妃が妃宮に移るという決まりらしくて。それが出来たのは父は元々王位を継ぐはずではない立場だったからと、色々混乱が続いた時期ゆえだったそうです。……伝統主義の者達からはだいぶ批判もあったそうで、僕たちはそうも行かないでしょう。」
「……なるほど。」
「蝶の籠という呼び方もあったそうで、綺麗な場所だそうですよ。城の底にあるのに空があり、広い庭園と女達のための宮殿があって、四季の別なく色とりどりの花が咲き乱れ、美しい蝶が舞い遊ぶ……春が永久に続くような場所だといいます。」
美しい情景の説明を何故か硬い声でして、レオはカップに茶を注ぎ分け、自分の分を取って飲み、眉をしかめた。スサーナさんは飲まなくていいです、と言うのにええと言いながら構わずスサーナも啜る。
「いつだったか、随分子供の時分です。王宮の書庫で二番目の兄と、フェリスと、隠れんぼをして。棚を揺らしてしまって、日記を見つけたんです。春の園で過ごした妃の一人の日記でした。」
古い時代のそういうものは精査されず書庫にしまわれることがある、とレオは説明した。
「はい。」
「きれいな表紙で。途中までは普通の内容でした。でも、途中から……恐ろしかった。外にでたい、という事がすごい執念で書かれていて。二の兄が読んでくれたんです。でも僕らにもなんとか読めるぐらいの言葉で。……狂気というものを感じたのは初めてでした。」
その日記の後半には外に出たい、という内容がただただ書き連ねられていたのだ、とレオは言う。
「ただ「外出が許されない」ということではなく、門が見えていてもどうしても出られない、出入りする侍女に抜け出す手引をさせても。侍女に変装をしても。なりふり構わず走っても。どうしても。どうしても出られない。いつか入ってきた廊下がそこに見えているのに出られない……そんな事が、ずっと書いてあったんです。記述が途切れるまで、ずっと。」
「途切れるまで……」
「ええ。ありきたりな怪談みたいな話ですが……白紙になる少し前の部分、張り付いたページがありましたよ。兄上は血だろうと。」
「うわあ……」
「それで、書庫から出たあとで、祖母のころから仕えている女官に聞いたんです。この人は悪いことをして怖いところに閉じ込められたのか、って。」
レオは何かを思い出すように言葉を切った。スサーナは返答を想像していたたまれないような気持ちになる。そうだ、という幼子に優しいごまかしではなかったのだろうことだけははっきり予想がついた。
「……そこに入れるだけでとても名誉なことだったのに、頭がおかしくなってしまってわからなくなったのだ、と言われました。殿下の奥様達もそこに入るんですよ、と。……その時決めたんです。そんな怖いところに大切な人を入れるぐらいなら、絶対に結婚しないって。」
子供の頃の拘りにかまけて義務をおろそかにしていると言われるような事ですが、と苦笑交じりに言ったレオにスサーナは全力で首を振った。
「それはトラウマになっても仕方ないやつです!!!!!!!!」
他の部屋に響かないように声を抑えつつも、できる範囲で全力で叫んだスサーナにレオは驚いたような表情をし、それからじわじわと嬉しそうな顔をしたようだった。
「その女官の方も女官の方ですよ……!めちゃくちゃ怖いじゃないですか! 怖がってる子供に言い聞かせる内容ですか!?」
「そう……ですか? ええ、でも聞いて頂けてよかった。あまり、人に言い回ることも出来ないことですから。」
レオは目を細め、ホッとしたような顔をする。
「さっきはああ言いましたけど、今の情勢だと僕も……覚悟はしないといけないとは思うんです。拒否できない時は来るかもしれない。ただ、思い出す度に嫌で……。どうしても嫌で。」
「それはそうです、レオくんは悪くありません。むしろとてもお優しいじゃないですか! 引け目に思うことはないと思います!」
スサーナは赤べこになった気持ちでがくがくと全力で縦に首を振り、頷く。それは人としてむしろ歓迎すべき優しさだ。
「どうしてもレオくんが結婚しなきゃいけない時が来たらそこを使わないように改革運動をするか……あっ、侍女、侍女は出入りできるんでしょう? 出入りできる理由があるんでしょうから、それを解明したらいいんです!! それで出入りをもっと自由にすべきです! 絶対に!!そのまま使うこと無いです!!」
「そ、の考えは無かったです……」
きっと魔術師系の構築物に違いない。無理にでもルールを変更してもらうべきだ。明らかにホラーではないか。スサーナはこの深夜の薄暗い部屋の真っ只中、予想だにしない方向から襲い来たホラー撲滅に力強く拳を握った。
「ありがとうございます。その、スサーナさん。この話をしたのは他の方には秘密でお願いします。……王子である僕がそういう風に感じている、というのはあまり良くはないでしょうから。」
「公言しちゃっても、と思いましたけど、そういう事もあるんですね。わかりました。誰にも言いません。」
約束しましょう、とスサーナは小指を差し出す。キョトンとしたレオの小指を掴んで絡め、ぶんぶんと振った。
「スサーナさん、あの、これは?」
「あっ、ええと……約束の仕草ですよ。嘘をつかない、約束を破らない。っていう。ただええと、私の身内の間だけでやっていた仕草、かも……」
「ああ、いいな、そういうの。身内に入れてもらえたみたいで、嬉しいです。」
「レオくんは家族みたいなものですし、身内ですよ」
思わず出た指切りの仕草を曖昧に誤魔化す。レオは小指を眺めて何やら嬉しげにしていたようだった。
「そういえば……ええと。今更なんですが、スサーナさん。どうして乙女候補の扱いの話を?」
しばしして、仕切り直しにスサーナが淹れ直したお茶を飲みながら残りの菓子を摘む。そうしながらレオに問いかけられ、スサーナはあっ忘れてた! とぽんと手を打った。忘れるようなことではないのだが、怒涛の打ち明け話とホラー展開のせいですっかり抜けていた。
――さて、どうしましょう。どのぐらいの注意喚起をすべきなのか。
お父様達はどのぐらいの展開を見込んでいるのだろう。レオくんが酷い目に遭わされるのだけは防がなくてはならないし、サラには犯罪者になってほしくはないのだが、大人の思惑を邪魔するほどのことはしたくない。
「ええと、実は……知人と面識のある方が、評判と素行の悪い貴族の方の養女になりまして。……乙女探しに出る、ということを聞きつけたんです」
「ああ、なるほど……。」
スサーナが沈痛な顔をしたのにレオくんは納得した表情で頷く。
――そういう素行が悪い貴族が沢山関わってきてる、ってレオくんもご存知ですし、このぐらいなら良いですよね。
「いつ参加するかとかはわからないんですが、養父がそう素行の悪い方ですと、心配で。でも、お話の限りだと親族になにか特権が、ということはなさそうなので安心しました。……あとは、私も当日しっかり見張っているつもりなんですが、色仕掛けとか、あることないこと申し上げるとか、そういうことをするよう命令されている可能性があるので……、そこを気をつければいいかな、と。……本人はとてもいい子なので、犯罪者みたいになるのも忍びないですし。もしかしたら脅されているかもしれない可能性もあって、そうでなくともすごく切羽詰まっているかもしれなくて……。」
スサーナは曖昧に、レオくんがほんの少し警戒してくれそうな説明だけをする。
――選ばれるのまでお父様達の思惑の中かもしれませんし、それは妨害できないですから……このぐらいで。
この説明なら不測の事態だけを防げて、レオくんがサラにするかもしれない同情などは
「それで、レオくんに気をつけて、とお伝えしたかったんです。」
レオがわかりました、と頷く。
その後は少し普通の雑談をしてから解散になった。
レオくんが眠りに自室に戻っていったその後。スサーナはでるんと椅子の背もたれにもたれて脱力した。
お茶会でパーティーの疲弊をマシに出来るかと思っていたが、なんだか逆に疲れてしまったな、と述懐する。
――まあ、内緒話をするつもりでしたからいいんですけど。注意喚起も出来ましたし。
レオくんがああいう風に考えていたのは予想外だった、と思う。
――レオくんも色々抱えてるんだ。
現状ではレオくんの決意は囮役に都合が良くてありがたく、有り難いと思ってしまうのも申し訳ないけれど。いつか、おとなになる前に、レオくんのためになにか抜本的な解決があればいい。
――しかし、あと三日かあ。
ちょっと今日は脳の容量がもう本気で心もとない。多分これ以上思考すると口から出る。二粒半しか食べていない行事菓子を吐き戻すのはちょっと勿体無いしカロリー的にも問題だ。
スサーナは今日はこれ以上考えるのをやめにして、体を引きずる気持ちで私室に戻る。そのままぐったり眠ってしまうことにした。
ワクワク顔のミッシィをスルーしたのは少し悪いことをしたかもしれない。
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