第192話 変容、もしくは変容のように思われるもの 2

 エレニと呼ばれた女性は、ぐったりとしたジョアンの体を仰向けにまっすぐの姿勢に横たえた。そして鳥の民の男二人に距離をとらせる。

 それからスサーナを手招きした。


「んーと、それじゃ、アンタ。んー、とりあえずやりやすい姿勢が一番イんだけど、とりあえずこっち、左の脇ぐらいに来て」

「は、はい」


 スサーナは戸惑いながらも指示された場所に立つ。手の動きで座って、と示されたのでその場に膝をついた。

 血が地面の湿り気と混ざって膝を汚す。


「こうですか? この後、どうすれば? ええと、針と糸はあるんですけど……」

「ふうん、結構肚座ってるもんだね。んー、コレは針も糸も使わないのよ。糸の魔法とはちょっと違う……詳しく言や同じものだけど、ま、どうでもいいか。どうしよっかな。じゃあとりあえず、口の中に指を突っ込んで。傷口でもいいんだけど、それだと逆に脈が取りにくいからさ」

「口の中に……」


 スサーナはごく一瞬戸惑い、いや、今は時間勝負なのだから気にしては居られないと首を振って、エプロンの裏で拭った人差し指をジョアンの力を無くした唇の間に差し込んだ。


「もっと深く。舌の裏にぐいっと入れる。ホントは粘膜接触のほうがイイんだけど、舌入れると呼吸が掴みづらくなるしなー。一番やりやすいのは実はヤッちゃうことなんだけど、流石に兄貴の見えてるとこで乗っかっちゃえっていうのはね? ま、これだけ血が出てたら立つもんも立たないけど。」


 へらへらと言った彼女にスサーナは変な冗談を言っている暇があったら早く教えてくれと言おうかどうか迷ってやめる。変な冗談に聞こえるが、冗談ではなく、秘術の勘所でないとも限らない。


「入れたねー。んー、これはさ、つまり同調して自分の傷を治すようにやる、ってことなんだけど。後はアタシの言うのに合わせて。まず目を閉じて息を整える。」


 ほら早くしな、と言われてスサーナは目を閉じた。怯えと興奮で早くなっていた呼吸を抑える。それはなんとも厄介なミッションで、スサーナとしては出来たという気もしなかったが、彼女の基準ではOKが出たらしい。

 鼻先に湿った布らしきものを差し出される。甘ったるい匂いがして、首をそらしかけたスサーナにエレニは深呼吸してそれを吸い込むようにと言った。


「次からは誰かが暗示をかけてくれやしないんだから、感覚をよく覚えときなよ。まあ次がありゃあだけど。色々音はしてるけど、アタシの声だけに集中しな。それじゃ…… ――まずその子の口に入れた指に集中するんだ。濡れててあったかいね? 脈がわかるだろ。ほら、ドク、ドク、ドク。息もしてるね。アンタもおんなじように息をするんだ。ほら、吸って、吐く。吸って、吐く。浅いねえ。もっと浅くなる。この子に合わせて。」


 目を閉じて聞こえてくる声は眠たくなるような単調な響きだ。そのうえどこか歌うような奇妙な抑揚が乗っている。幼い頃エウメリアが使った魔法のときに唱えた言葉と同じようなものだろうな、とスサーナは思ったが、余計な思考はできるだけしないようにその声を聞く。

 彼女の声は数度同じように呼吸と心拍について述べ、それから内容を変える。


「指がふやけてきたねえ。ふやけて溶けるよ。そのまんま溶けて広がる。そしたら隔てなく一つに混ざる。混ざって繋がるんだ。」


 ――まざって、つながる?

 声の響きか、甘い香りのせいか、頭の芯がしびれたような感覚になっていたスサーナはぼんやり考えた。


「混ざって一つになる。血の管も肉もぜんぶ繋がって、ひとつに。そしたらアンタの息がこの子の息になる。アンタの心臓がこの子の心臓だよ。……さあ。傷ついているのはアンタだ。アンタの腹に穴が開いてる。痛いね、とても痛い。」


 お腹に穴が空いている。ああ、あんなたくさん血が出る穴なら、それはとても痛いだろう――

 言葉のとおりに思考する。ずきり、と腹に痛みが走る。ひゅっと息を吸おうとしてもうまく吸い込めない。その事には戸惑いはない。だって、自分のお腹に穴が空いているのだから。痛いのは当然だ。息が弱くなっていくのも。


 体に力が入らなくて手足が冷たくなっていく。体の中で脈打っているはずの鼓動がひどく遠く、弱々しい。ずきずきと痛む腹が熱くて、それなのにとても寒い。


「心臓の動くのがどんどんゆっくりになる。手も足も冷たいね――」


 全身に衰弱の感覚が広がる。

 ――ああ、このかんじ、しってる、どこでだっけ――

 単調な声が耳元で囁かれる。それはもう「声」だと認識できないほど自然で、すとんとスサーナの中に落ち着いた。


「大きな怪我だ。このままだと死んじまう。治さなきゃいけない。治らなきゃ死んじまうよ。死にたくないね? 死にたくない、死にたくない――」


 ――しにたく、ない。


 そう繰り返した思考にふっと疑問が落ちる。


 ――しにたくない? なんでだろう。おしまいはとてもとてもいいことなのに。なにもかもぜんぶおわりでよくて、らくに――


 その瞬間、膨れ上がった違和感に心臓が乱打する。癒着していたものがよじれて引き剥がされるような苦痛と、圧倒的な不快。


 スサーナは反射的に目を見開き、意識せず身を反らした。体が突っ張る。エレニが舌打ちする。


「ちっ、こりゃ駄目か、やっぱり――」


 ジョアンが意識のないまま大きく咳き込み、血がスサーナの頬に跳ねる。


 ――ちがう。


 その感触でスサーナはひととき正気に立ち戻る。

 スサーナはエレニが支えた背を強いて丸め、前に倒した。


 ――死なせたくない、だ。


 ――ジョアンさんは負けず嫌いで、甘いものがお好きで、法学を学びたくて、将来王様とお話できるぐらい出世するつもりで。


 死は彼の主観を消し、まつわる情報を無意味にし、彼の望みも、将来の展望も反故にする。それは駄目だ。とても良くないことだ。そんなのはジョアンは嫌に違いない。

 死なせたくない。死なせてはいけない。これを続けなくては。


 死は恐ろしい。自分以外のものは皆。

 死を迎えるだけで、それまではそこにあった記憶も、好悪も、判断基準も。それから起こるはずだった何もかもも、ぜんぶ無くなってしまう。

 それは、とてもとても、恐ろしいことだった。


 短い半覚醒が去り、エレニが布に足した甘い香りの液体のためか朦朧に落ち込んでいきながらスサーナは無意識の手をジョアンに差し伸ばす。


 意識の浮遊感。座り込む自分と横たわるジョアンを俯瞰するような感覚。


 次の一瞬。風景と重なるように、もしくは目覚めながら白昼夢を見るように、スサーナの意識は別のものを視ていた。


 境界面。穏やかな水面のようなその先にジョアンが

 澄んだ水の色をした浅場から、暗い深みへ沈んでいく。

 ――あそこに行ったらいけないんだ。

 底まで行ってしまったら戻ってこられなくなる。なんとなくそうスサーナは直感する。

 スサーナの意識はジョアンの側に寄ると、体を掴んで水面を目指した。


 細い少年のかたちをしているのにその体はとても重く、鉛か何かを抱えているようだ。

 登っていこうとしているはずなのに勝手に体が沈む。

 ――うえ、に。

 苦しさと圧迫感。疲労に似た脱力。それらを感じながらスサーナはジョアンを押し上げようとする。

 強力なゴム紐か、でなかったら下へ力いっぱい引っ張る鎖にでも繋がれてでもいるような感覚。

 強烈な下降感を感じながらスサーナはもがいた。

 ――どうしても、うえに。


 もがき、手を伸ばし、そしてスサーナは唐突に、そうやってもがく自分をまた俯瞰していることに気づく。

 瞬きのように切り替わる認識の中で、スサーナは、森の中でジョアンの前に倒れ込んでいる/で上に向けてもがいている/そして、それら全てを俯瞰している。


 自らは白い無限遠にあり、そこにはなにもなく、しかし世界もまたそこにあった。

 奇妙な恍惚と凪いだ穏やかさ。

 自分たちはとてもちっぽけで、目を凝らさなければいけない。

 彼女はそれのある場所に意識を向ける。

 するとそれらは視界いっぱいに広がり、その構造を明らかにした。

 それはどこまでも広がる輝く糸であり、有限の限界数のそれを有限の限界数繰り返して作られた文様布であり、それらを縒り糸として無限回の試行のもと織りだされた綴織タペストリであった。


 ――ああ、いやだな。これはみたくない。

 ぼんやりそう思った瞬間にそれは遠くなり、彼女はそれでホッとする。

 彼女は手を伸ばし、水底に引き込まれていくを手のひらで掬い上げて笑った。




「っはぁっ!」


 スサーナは身を跳ね上がらせるように飛び起きた。


「はあっ、はあっ、はあっ」


 水から上がったばかりのように空気を貪る。

 まるで肺の中が空っぽになったように息苦しい。


「お、起きたね。息が止まったときにゃこりゃ駄目かと思ったけど。」


 エレニが鼻先で声を上げる。瞬きして周りを見れば、自分はちょうどエレニの手で仰向けに寝かされかけたところらしい。


「ジョっ、ジョアンさんは?」


 スサーナが息を切らせながら問いかけると、ジョアンの傷を診ていたらしいレミヒオが振り向いた。


「成功していますよ。……きれいに癒えています。呼吸も心拍もしっかりしたものだ。」


 息を吐く。奇妙な高揚と凪の欠片がまだどこかに残っている。エレニの声を聞きながらジョアンを回復させた時の体の中に風が吹くような感覚と、同時に見た白昼夢の水底に潜るようなイメージ。そして、手の内に掬った水がこぼれて戻らぬように、急激に薄れて消えた覚えていられない何か。


 スサーナは頭をグラグラさせながらジョアンの様子を見るために立ち上がろうとする。ネルが脇を支える形で立ち上がらせてくれて、それでスサーナはジョアンを覗き込むことが出来た。


 服は血まみれでひどい状態のままだったが、裂けた布地の隙間から見えているのはかすれた血がついているものの健康な肌だったし、すうすうと規則的な呼吸をしている顔は血色もいい。目を閉じて意識はないようだが、服の惨状がなければ安楽に昼寝をしている、といっても誰もが信じただろう。


「よ、よかったぁ……」


 スサーナはくたくたと脱力する。

 その様子を見てエレニが肩をすくめた。


「いや、まぐれ当たりってのはあるもんね。良かったじゃないお兄ちゃんや。アタシゃこれは絶対妹さんも死んだと思ったもんね。……喋るのも出来てるし、一月も寝込めばまた立てるようになるでしょ。」


 ネルが浅く頷き、そこにレミヒオが声をかける。


「エレニ、ありがとうございました。彼女の後のことはご心配なく。うちの氏族には秘術がありますから。」

「これだからコノハズクは……そんなのあるのね。」

「ええ。差し上げられませんが。守り刺繍だと思ってください。弱った体を回復するのをぐっと早めるものです」

「ああ、なるほど。だからそんな気軽に『やらせてやって欲しい』なんて言ったわけ。今回は成功したからいいけど、途中で息が止まったような血の薄い子、うかうかやらせようもんなら次は死ぬかもよ」

「肝に銘じておきます」


 エレニは呆れたように言い、それにレミヒオがにっこり微笑んで話は終わったようだった。


「んじゃ、コツはわかった? とりあえず一番大事なのはアレよ、死にたくないって思うことね。後は相手が自分の手とか足だと思うことかなー。自分が怪我したなら体のまだ怪我してないとこが怪我を治そうとするわけでしょ。それに引っ張られて相手も治ると。自分で自分に暗示をかけるやり方習ってる? アレが一番楽だと思うわ。」


 ネルに座らせてもらい、彼ら二人が何か魔獣の残骸を見に行ったその後にエレニはスサーナに言った。彼ら二人はすぐ戻ってくる。


「死人は三人。荒事が生業の方々と猟師ですかね。後犬が二匹。さて、どうしたものか」

「荒事屋どもは死んだばかりだった。刺し違えたことに出来るんじゃねえか」


 何やら難しい顔で話し合っている二人にエレニが面倒くさそうに耳をほじり、ぞんざいに呼びかけた。


「じゃあアタシはこんどこそ戻るよ。魔獣の精髄、取ってあるんだろ? アタシの取り分よこしな。」


 彼女はそう言うとネルの投げた小さな布づつみをあらため、ふんと一つ鼻を鳴らす。


「まあこんなもんか。やれやれ、顔を合わせた先から森なんかに引っ張ってこられて大くたびれだわ、面倒くさいことやらされるわ……もうアタシゃ帰って酒かっくらって寝る。もう用事ないね?」

「ええ、大丈夫です。」


 肩をそびやかせたエレニにレミヒオが返答して、ポケットに布づつみを突っ込んだエレニが歩き出す。スサーナは慌ててその背に声を掛けた。


「あのっ、ありがとうございました! あ、あの、何かお礼を……後ででも……」


 振り向いたエレニがひどくめんどくさそうな顔をする。


「べつにィー。貰うもんは貰ったしね。女手は男どもの隠しワザと違って共有するもんだし。……っていうか氏族の子っつってもアンタ逸れ者でしょ。アタシとアンタは赤の他人。次会う時は初対面。OK?」

「えっ、あっ、はい……」

「ちょっと、しょぼくれないでくんない? あんな学院の中なんかにいるのにアンタみたいなのに懐かれたら面倒くささ極まりないっつーの。」


 彼女の言葉にスサーナは首を傾げた。学院の中、ということは生徒なのだろうか。


「学院……に、いらっしゃるんですか?」

「アンタの兄貴も園丁でしょ。ま、アタシはだいぶ立場は違うけど。考えてもみなさいよ。こんな都市にいて、一番鳥の民がいて疑われなくて便利そうなのってどこ?」

「が、学院……なんですか?」


 急なクイズ形式に目を白黒させたスサーナが何もわからないままに答えると、エレニは呆れたというふうに肩をすくめた。


「ねえアンタ、なんて言ったっけ? アンタの妹、物分かり悪いわ。」


 ネルにそう言いながらやれやれとため息をつく。


「学院にはー、今ー、黒髪の奴隷を使ってもどっからも文句が出ないお偉方がいるでしょー?」

「あ、グリスターンの?」

「そう。アタシはグリスターンから来てるお偉い坊ちゃま嬢ちゃまの侍女なわけ。まーアタシは本国からの付き添い組で、アンタの兄貴とは事情が違うけど。ともかくアタシは信頼も深いの。それをアンタみたいなのにチョロつかれたら稼いだ信頼も台無しってことよ。」


 だから次もし顔を合わせてもくれぐれもアタシを知ってるような反応はしないでちょうだいよ、園丁の妹さん? と言って彼女は去っていった。

 ――それでいいんでしょうか、王族。

 スサーナは内心ぼんやりそう思いながらその背を見送る。

 どうも前世の王族なんかのイメージほどこちらの安全管理はきっちりしていないようで、情報媒体がほとんど無いので仕方がないのかもしれないが、たまにスサーナにとってはすごくガバガバに感じる。

 自分の身元が詮索されないのもそうだし、今聞いた話だとあの女性ひとは侍女として王族に仕えている人なのだろうし。鳥の民を始めとした身元が不明瞭な人間入り込み放題だ。


 そんなことを思ってぼうっとしていると、彼女の姿が見えなくなったのを合図にしたようにレミヒオがジョアンを引き起こした。


「では、彼は僕が。もう一人と……スサーナさんもそちらが頼みます。無駄に背が高いんですから僕より安定するでしょう。」

「ああ。」

「あっ、私立ちます。ネルさんに二人背負わせるわけには」

「気にするなよ。ガキ二人ぐらい抱えられなくてどうする」

「でも……。あの、男の方に背負ってもらうのもどうかと思いますし? とりあえず立てるかどうか試してみます」


 ネルが少し考えて頷き、それから数拍開けてレミヒオに問いかけた。


「なあ。さっき言ってた秘術とやらは今使ってやれるのか」

「あれは口から出任せです。」


 レミヒオはあっさり言い、スサーナを覗き込む。


「スサーナさん、お疲れさまです。……良かった。体の調子はどうですか? 立てそうですか。どうぞ腕を。」

「おい、さっきあいつが『体が壊れなくても一月は指先一つ動かせないだろう』って……」


 静止しかけたネルを他所にスサーナはふらふらと立ち上がった。


「ええと……ちょっとフラフラしますけど、歩けそうです。ゆっくりなら自分で森の外まで行けると思います。だからネルさん、オビさんをお願いしますね」


 すこしぽかんとしてああ、と言ったネルはオビの方へ少しふらつきつつも歩いていくスサーナを見送り、レミヒオを眺めやり、どういうことだ? と問いかける。

 レミヒオは妙に確信ありげに笑った。


「多分そうだと思っていました。命を分けるのは水を流すようなものだと聞いていたので。低みから高みに無理に水を流そうとすれば無理が出る。ならば、高みから下にある器に水をこぼすならどうでしょう。元々水を入れてある器の量が圧倒的に大きいなら? ……二代前に翼萼に奉じられたのうちには元々傭兵を旨とする氏族の姫君がいらっしゃって、戦地において僅かな消耗で兵士を数十人癒やしきったのだと逸話があります」

「よくはわからねえが……予想がついていたなら何故言わなかった? あのごまかしはどういうことだ。」

「エレニは僕らとは立場も氏族も違うので。スサーナさんのことはしばらく握り込んでおきたいんです。先程の言葉は有り難かった。対外的には貴方の妹としていくのが一番面倒がない。……貴方も、ちょっとの間に随分懐いたようですけど。自分の命の恩人が余計な面倒に巻き込まれるのは困るでしょう?」


 ネルは目を鋭く細める。


「言うまでもあるか。俺は、氏族だ何だには興味もねえ。俺の主はあの子だ。それでいいとあんたも言ったろう」

「はい、それで構いません。僕の方も恩人だということは忘れずに少しは恩義に思ってもらえるといいんですけどね」


 ヨティスの言葉にネルははっきりとはあ?と首を傾げて見せ、年若い指導役がそっとイラっとしたのを感じ取ってせせら笑った。


「あっ、オビさんの荷物袋が木に掛かってる! お二人共……ええとネルさん、すみませんー! あれを取って頂けませんか!」


 それなりにいい意味でも悪い意味でも気質が合っている、と連絡役のミロンに評された年に関わりない師弟は剣呑に笑い合い、鼻先を突き合わせたところでなにやら娘がこちらに向けて叫ぶのを聞く。見れば、やや離れた木のもとで彼女がなにやら跳ね出したのが見える。


「ああ、今行く」

「僕のほうが身軽ですから、お友達の片方はちょっと下ろしてネレーオさんに見ていてもらいましょう。僕が取ってきますよ」


 二人の鳥の民は気勢をくじかれ、どちらともなく身を翻すとこちらに向けて呼んでいるスサーナの方に歩いていった。

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