第157話 食材事情右往左往 1

 なし崩しに本当にケーキを作ることになり、スサーナはさあてこれは困ったことになったぞ、と思案した。


「ちょ、ちょっと待ってくださいね。材料とか道具とかちょっと確認してきます」


 作るのは仕方ないとして諦めたスサーナは、急いで寄宿舎に走り、置いてあった道具や材料をかき集め、もう一思案する。

 しばらく製菓の予定はないと思っていたのでありがとうデコレーションケーキでだいぶ気前よく使った自覚があるのだ。


「小麦粉が心もとない……砂糖はまだなんとかなりますけど。あと何をするにしても卵とバター……か、癖のない植物油。」


 世にはラードやらヘットを使うレシピもあるし、此方ではそこそこ一般的なのも知っているが、それはとりあえず案の外においておく。


「本土の小麦粉、たぶん手に入れられるのは全粒粉で……」


 篩いにかけた小麦粉もないでもないのだが、値は高く、買うものは少なく、つまり、売り手を定めずに市場においてあるのはごく少量で、朝でないと手に入るものではない。


 あと、多分硬質小麦、そしてデュラム小麦に近い品種のものが一般的で、軟質小麦の小麦粉はなんだか街の市場の粉屋粉挽き代行にはあまり出回っていない気配がする。


 もちろん、農家から、もしくは領主倉から直にこれと目をつけた麦を買い、粉挽き小屋に自分で出向いて挽いてもらうなら話は別だが、それをするなら郊外にあるという粉挽き小屋まで出かけていかねばならず、前提の商談と買い付けを除いても一日仕事になるだろう。その余裕は現状あまりない。


 本土でもやっぱり製粉は神殿の特権で、製粉所がほいほいと町中にあるということはないようなのだ。基本的にみな郊外。

 ついでにいうと当然ながらとても混む。


 ――やっぱり魔術師は五体投地で崇められるべきなんじゃないですかねえ!!!!

 スサーナは町中にある魔術師の関わる店――夏になると氷屋になるやつ――が、多分どこかの魔術師さんの自家消費分の余剰だと思われるものだが、少量ながらつねに精製度が高い小麦粉を置いてあることや、多分気合を入れて大量注文すれば――神殿にはその場合付け届けをして済ます通例――もっと精密な挽き加減とか精製度とか指定できるんじゃないか、というようなことを思い出し、しゃーっとなった。


 ついでに言えば島の神殿の粉挽き小屋の機械装置も、多分術式付与品ではないし現代日本ほど複雑なものではなかろうが、なんらかの魔術師の手が入っているのだということに本土に来てから気づいたスサーナである。島で見た小麦粉とこちらのふるった小麦粉をそれぞれ思い返してみると精白というほどではないが島の方はふすまの混入率が明らかに少ない色をしている。ともあれ。


 ――えーと、最悪硬質小麦の全粒粉でなにか作ることになるんですね。

 どうしたものかなあ! とスサーナはそっと頭を抱えた。


 いろいろとレシピを脳内で組み立てつつ一旦本館まで戻る。




 本館前のテラスのテーブルには、テオとアルとレオ王子にフェリス、そこにミア、さらにエレオノーラという異色過ぎる集団が陣取っており、なんだか通りすがる生徒が遠巻きにぐるっと避けていく。


 ――わー。取り巻きの皆さんも近寄れてない。

 スサーナはテラス部分の反対側の端あたりにエレオノーラの周りに普段いる少女たちが近づき難そうにいるのを目撃し、ちょっとこちらに招こうかどうしようか思案し、結局今回は申し訳ないながらやめておくことにした。


「おまたせいたしました。材料が少し足りないもので、今から市場に出て買ってまいりますね。ええっと、二時間はかからないぐらいで……夕ご飯前ぐらいには間に合わせるように致します。」


 そちらをちょっと気にしつつ、とりあえずエレオノーラの前に出ると、一応小間使いナイズされた口調と態度でお伝えする。


「一人じゃ大変でしょ? 私も行くよ!」


 ミアが声を上げ、スサーナはああミアさん流石に居心地悪かったんですね……と思った。

 じゃあ一緒に行きましょう、と言いかけたスサーナに横から声がかかる。


「足りないのは一体なんですか?」


 すっとスサーナのそばまで寄ってきて声を掛けたのはマレサだ。見れば少し離れたところにそれぞれの使用人がズラッと並んでいる。なるほどこれから貴族寮に戻るならみな伴うのは当然だし、授業に出ずにいたエレオノーラは全員使用人を連れていておかしくない。それ以外は各人一人二人だが、上級貴族の人数が多い集まりである以上並んだ使用人の数は二桁に及び、これはミアが居心地が悪いわけだし、他の生徒が近づいてきづらかろう、とスサーナは納得した。


「ええと、粉と卵と、あとバターとかクリームがあれば……」

「なるほど。卵はこの時間から買い付けるのは厳しいかもしれませんね。宴席のためのものの余りが相当量出るはずですが、それを使ったらどうです?」


 マレサが言う。

 え、それは横領とかにならないかなあ、とか経費の計上的にアレなんじゃ、と思ったスサーナだったが、マレサがさっくりと、私財です。と言ったので疑問が氷解した。


 宴席とは、国庫とかからお金が出るということでもなく、エレオノーラ、もしくは家の私財で賄われるものなのか。それは手付かず退出は怒るなあ! と、ひたすら魔術師の肩を持ちたいながらもスサーナはちょっと納得してしまう。


 そこで更に寄ってきた侍従のアイマルが説明したことによると、料理の総数などは大幅に削減することになったものの、先に用意されていた分の料理と材料は商倫理上買い取らざるを得ず、料理人の人数も減らしたので料理をせず残る分が相当数出る、という。大半はそのまま明日に回るそうだが、つまるところ「帳尻を合わせられる」材料がたっぷりあるらしい。


「……先に用意されていた料理? もしかして伝達、今日とかなんです?」


 それは問屋さんも料理人さんも怒る事項だろうに、という顔をスサーナはしたものの、貴族というのはそういうものかもしれない、とも思う。

 商人の苦労というやつをあまり考えていないのだ。まあ適正な金額と詫び金が払われるなら問題にすることでもないのだけれど。


「いえ。料理は、物によっては数日前から作っておくのが通例なのだそうで。」


 ――数日前から? この暖かくなった時期に? 料理を?

 スサーナはんんん? となったが、まあハムとかソーセージ、塩漬けの食べ物ならそんなものか、と納得することにする。


 ……経費の透明性やらの概念も薄いようだし、卵数個や粉二三カップ程度私物化したところで本当に問題はないのだろう。なんとなく横領という単語が浮かんでしまうスサーナはヒヤヒヤするが、第一エレオノーラの家の私財だというのだから、たぶん貴族社会的な面子とか威信を損ねるものでなければ全部彼女次第なのだ。


 とりあえずエレオノーラお嬢様に伺いを立てると、好きにしなさい、というありがたいご返答を得た。


「じゃあ、少し分けていただけるとありがたいです。どこにご用意してあるんでしょうか」


 ではもっと下位の使用人に取り次ぎます、とアイマルが言う。


「あ、はい。わかりました。そうですよね、伝達抜きで頂けるものじゃないですよね。」


 スサーナは、貴族の皆さまを置いて、申し訳ないながらミアも置いてアイマルに続いて材料を貰いに行くことにした。



 するとアイマルは事務棟側に向かい、まず学内移動用の荷馬車を出した。

 スサーナは、これは結構移動するのだなと悟る。


 まず向かったのは学院の奥の方にある建物だ。

 作りとしては研究棟に近く、一階の端に小ホール的な部屋があり、どうやらそこが宴席に供されるらしい。

 下級貴族達が過ごす教室周り程度には豪華な内装でありつつも、北棟の平民がいるあたりにも似た石材を見せ気味の山城風の設計で、もしかしたら古い建物の形式なのかな、とスサーナは思った。


 そこでアイマルが立ち働いていた食品担当的な使用人に声を掛けてスサーナを取次ぎ、その使用人に連れられてどうやら一旦市内に出る、ということになったようだった。スサーナは食品担当の人にありがたく深い礼をして丁寧に挨拶する。


「すみません、お仕事中に。お手数をおかけいたします。」

「いえいえ、私は運ばれた什器と料理が最終的にリストと合っているかを確認するぐらいで。それに今年はそれほど忙しくもないんですよ」


 毎年の担当だという中年の男はにこやかに笑った。

 なんでも、市内に調理場があり、料理の一部は馬車で隣の町から運び込み宴席まではそこで保管。また適宜調理場で仕上げをし、温かいものはそちらで全部作成した後にこちらに運び込む、などの手順らしい。


 正直学内で作ればもっと楽なんじゃないか、貴族寮にも食堂にも大規模な厨房があるんだし、と思ったスサーナだが、前世で言う学食だと思うと専門的料理をそこで作らせるのは無茶ぶりなのかもしれない、と思い直した。

 ろくに手がつけられないらしいとは言え宴席なのだ。料理長的な人が料理と場に出る総数やらタイミングを決めて料理人を采配したりするやつなのだ。前セルカ伯の家でやった規模のものですら大騒ぎだったのだから、きっとディナーともなると本格的な厨房を必要とするに違いない、ろくに食べないものだというのが物寂しいが。


 スサーナは想像してちょっとワクワクした。いかにもそれらしい中世ファンタジック宴席、というのは未体験のスサーナである。



 アイマルさんはお嬢様のところに戻るらしく、スサーナはお礼を言ったあとで彼を見送り、食品担当の人の支度を待つ。

 簡単に申し送りをし、なにやら取りに行った食品担当の使用人はすぐに戻ってきた。



 食品担当の使用人の後を付いて廊下を歩いていく。今度は彼と馬車に乗り、街の方の調理場に出るらしい。気さくな人柄らしい彼はエレオノーラお嬢様づきの小間使いが相手だということもあるのだろう、歩きながら何くれと無く喋りかけてくる。


「いやおまたせして申し訳ない。実は向こうに行くのは私も初めてで。地図をもらってこなきゃならなくてねえ」

「えっ、そうなんですか」

「うん、引き継ぎを受けてからこっち、運び込まれた後に帳面と合わせるぐらいしかしなかったもんだから、はっはっは」

「ええと、お手数をおかけしてすみません。わざわざ地図まで……」

「ああ、いいのいいの。この時間まだそこまで忙しくないしねえ」

「……宴席って、もっと忙しないものかと思っていました。」

「忙しないには忙しないよ。まあでも料理は外で作って持ってくるからね。中詰めの者の仕事はそう多くないの。でも配膳は大忙しさ。まあ、ここのやつは一旦出しちまったら他所より給仕も暇だけれどね」


 そんなものか、とスサーナは思う。まあ、前世の知識を思い返せばマールバラ公だったかの宴会も離れた場所で一式拵えて運び込んだんだっけ? そういえばあちらのレストランの起源譚では仕出しギルドが出てきていた。じゃあここでは料理はまさか25のギルドが仕切っている、なんてことがあるのだろうか。普通に町中に食事屋があるのだからそんなこともないと思うし、貴族のお雇い料理人には関係なさそうだけれど、貴族のお宅でやるものではないのでいろいろ勝手が違うのかもしれない。

 スサーナは宴席についてのイメージをいろいろと方向調整した。

 どうやらこの宴席はタイユヴァン料理の鉄人的な人物が手足のように料理人を使ってばばーんと趣向を凝らす、というものではないらしい。

 ――なんていうか、学会の仕出し弁当的なイメージのほうが強くなってきたなあ……。

 偉い貴族の令嬢が取り仕切って、さらに構造改革をする、というのだから豪華で虚礼で絢爛な方のやつだと無邪気に信じていたのだが。なんだか改革前からして世知辛いにおいがする。瓶ビールがぎりぎり出てくる学会の食事会を改革で第三のビールにされるみたいな世知辛さ。

 スサーナは想像する宴の光景を半分ぐらい下方修正しておくことにした。



 西棟と違って石造りの上に覆いをしていない廊下は足音が高く響く。

 別の複数の足音が交差する廊下から聞こえ、天井の高い広い廊下の真ん中寄りを歩いていた使用人がハッと壁際に張り付いた。

 スサーナが足音がしたほうを見ると、そちらから歩みを進めてくるのは数名の魔術師だった。

 昨夜見たのと同じ、繊細で煌びやかな青の彩色の衣装。容姿の系統はそれぞれ違うが蛋白石の髪が映える整った顔立ちをしている。

 スサーナは急いで脳裏から予算改革で生ビールを奪われる教授たちを消し去り、壁際まで下がって深く礼をした。

 使用人たちが退くのを一瞥し、彼らはゆったりとした足取りで廊下を歩み去っていく。


 ――なんか……、なんか、こう。

 スサーナは深く頭を下げたまま目を瞬く。

 ――ちょっとびくってなった……


 貴族の子女たちが平民を見る目は備品を見る目に近い、とスサーナは結構思うことがある。

 そこにいるのは認識しているけれど、いまいち同等のものだと思っていない、という目だ。

 それでも意思疎通が出来る生命体ぐらいには思っているというのは分かったし、動きを見せれば注視するぐらいの注意は払われる。


 今向けられた目線は少し大きめの石に向けられるものに近かった。

 進行方向に、歩くのに邪魔だな、というだけの目だ。視線にも表情にも動きにも一切興味がない、温度のないすうっと上を滑っていく目線。


 ――本土ではあの見られ方が普通だって言うなら、確かにちょっと怖いと思う人が居てもおかしくないかも……


「やあ、行かれましたね。やーまさか昼間に出くわすとは」


 食品担当者が廊下の向こうを曲がった魔術師達を見送って廊下の真ん中に戻る。

 ――いやいや、納得するのはまだしも私まで動揺するのはいけないでしょう。島の生活ではあれだけお世話になっているというのに。

 スサーナはいやいやいや、と首を振って感想を追い出し、彼の後に続いた。


 荷馬車で市内へ出て、調理場へ向かう。


 食品担当の使用人に続いて中に入るとなるほどそれなりに広くてしっかりした場所だ。入り口を入ってすぐのところには試食やちょっとした応対に使うのだろうか、食堂程度の長机がひとつ。すぐ奥の別間に厨房。

 なんとなく弛緩した雰囲気なのと人数が少なめなのに少し違和感を覚えたスサーナだったが、そういえばエレオノーラが料理人を大幅に減らしたとか言っていたっけ、と思い出す。


「すみません。フォルテア家のものです。」


 食品担当の使用人が声を上げると入り口側に居た数人の料理人たちがぎょっとした顔をする。


「卵と粉を分けていただきたくて伺ったんですが」


 料理人、多分それなりに采配役らしい者が使用人に近づいて愛想笑いを浮かべる。


「お世話になっております。卵と粉ですか。さてどのぐらい……」

「そう沢山は必要ないそうで。余っていればでいいんですが、卵が6つばかりあれば……。もっと少なくても構いません。あと、粉を見せていただいても?」


 彼は焦ったように笑うと使用人に椅子を勧めた。


「なるほど。すぐお渡ししたいのは山々ですが、今中が立て込んでいますので少々お待ちを。おおい、使いの方にぶどう酒を!」


 座った使用人のもとにすぐ陶器のピッチャーを持った別の料理人、多分見習いか下働きという雰囲気のものがやってきてカップに注いだ酒を渡す。

 スサーナには特に椅子も何も勧められない。

 スルーされ、ああ、下働きの子供ぐらいだと思われているな、とスサーナは思ったが特に訂正することもないので黙っていた。

 何か時候の挨拶やらの大人の会話を始めた責任者らしい二人は置いておいて、スサーナはちょいちょいと調理室の方を覗き込む。


 中ではさほどの緊張感はないが、それなりの人数が立ち働いているようだ。

 スサーナと年齢がそう変わらなさそうな雑用係の子供もいる。


「ん、皮剥き終わったか。ほれ、一樽ぶんの5アサスだ」

「おおい、焼串回しがおらんぞ、ついでに外で声かけてこい」


 ――む、雑用の子は仕事ごとだったり臨時雇いだったりもしてるんですね。

 小耳に挟んだ会話のいくつかにスサーナはほうと頷く。どうも、外部の人間の出入りに目を光らせているような場所ではなさそうだ。

 立て込んでいるという割にのんびりしている雰囲気だが、担当者の不在だとか色々理由はあるだろうし仕方ない。が、これなら待つ間にちょっと覗いても邪魔にはならないのではないだろうか。自分で使う材料なのだ、見ておきたい気もするし、それに魔術師に出す料理が一体どんなものなのか興味がある。

 彼女はタイミングを見計らうとそっと調理室の方に紛れ込んだ。


「しっしっ、邪魔するんでねえ」


 調理台に近づくとすぐに邪険に追い払われるが調理室から追い出されるということもないので勝手に食材を見て回ることにする。

 スサーナは調理場の中を料理人達のスキを見てうろつきつつ、そっと首を傾げていた。


 ――なんだか……全体的に質が悪い……気が……?


 卵籠の中の卵はみょうにつるつるで、小鉢に一旦落とされたあとでボウルに入れられる、という過程で割られているそれは白身が完全に水状だし、明らかに腐ったものが横の方の廃棄入れに捨てられている。現代設備でない以上傷んだものが出ること自体は仕方ないことだが、なんだか量が多い。


 粉もそうだ。全粒粉なのでくすんで薄黒いのは仕方ないことだが、なんだか妙にもろもろとした粉は均一に薄黒いと言うよりなんとなく固まった部分が色が濃い。


 ――あっ、かび臭い!! 上にこれはアンモニア臭?

 そっと粉袋の傍に近寄って匂いを嗅いだスサーナは鼻を押さえた。


 ――これ、ちょっと質が悪いにもほどがありません?

 スサーナがちょろちょろしつつ疑問に打ちのめされていると、料理人の一人がまったく当然のような顔をして奥の布積みの下から卵を取り出すのが見えた。6つ数えて小篭に入れる。

 黙ってスサーナが眺めていると、奥にある倉庫らしき部屋から麻袋を一つ持ってやって来た料理人が袋の封を開けた。

 中に入っているのは、これは普通の――とはいえ、やはりスサーナの目から見るとだいぶ質が悪い――粉のようだ。


 彼はそれを床に置くと、前からあった、人間に食べさせてはいけないとスサーナが内心判定した粉の方を持って裏に下がっていく。


「災難だね」

「粉も卵も買い手がついてたんだけどなあ、まあしょうがねえな」


 料理人の会話を小耳に挟み、スサーナはなにもわからない下働きの子供ですよという顔をしつつ、うわあ、となった。

 卵と粉が用意され、幾つか肉――なんだか絶妙に灰色だったりした――などを奥に移した後にどうやら格好がついた、と判断されたらしい。おもての話が切り上げられ、食品係の使用人が調理室の方へ案内されてくる。


「いやお待たせ致しました。卵は丁度6つありましたので。」


 ――ソビエトロシアの配給じゃないんですから!!!!!!!!

 清々しいまでに横領だこれ。


 スサーナは内心叫び、それから、

 ――コレが例年だとしたら私だって絶対手を付けませんよ!!!!!

 卵が先か鶏が先か、食べない食材だとわかっているから結局こうなっているのか、こんなものだから食べられないのか、曰く言い難い気持ちで静かに半眼になった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る