第134話 触らぬ貴族に祟りなし 1
学期が始まってから9日目のこと。
深夜少し前、寄宿舎の自室でスサーナがせっせと……夜更かし用のクロッシェレース編みもどきをしていると、とんとんとドアをノックする音がした。
「はい?」
「ねえ、スサーナ、まだ起きてる?」
ドアの向こうからしたのはミアの声だ。非常な夜更かし常習犯のスサーナと違ってミアは授業が終わった後にバイトをし、疲労して帰ってきているせいで早寝らしくて、この時間に起きていることは珍しい。
「はい、どうぞどうぞ起きてますよー」
スサーナはドアを開け、ミアを招き入れた。
椅子は一つきりなので自身はベッドに座り、ミアに椅子をすすめる。
「どうしました? この時間にミアさんが来るなんて珍しいですね」
「えーとね……」
ミアがなんだかモジモジとして、それから口を開いた。
「ええと、勉強会を放課後する、って言ったら、スサーナ付き合ってくれるかな」
「勉強会ですか……」
「うん、 語学の勉強会をするんだ、授業の予習と復習」
スサーナはううんと考えた。
現状の進度だと、正直復習をする必要性はあまりスサーナは感じていない。
あまり舐めていると判らなくなるという恐れはないでもないのだが、正直今やっているヴァリウサ文語は、前世の感覚に例えると口語に近く荒めの
島言葉の単語は古典ラトゥ語由来なので、早く
そんな事情はともあれ、折角誘ってもらったのだからそれは時間が許すなら参加したくはある。
「勉強会はいつされるんでしょう?」
「明々後日の放課後なんだ」
「明々後日ですか……時間は?」
「あんまり遅い時間じゃないよ。授業が終わってすぐ、本館横のテラスでやるんだって」
「やるんだって……? ということは寄宿舎の皆さんとです?」
「そっ……うじゃないんだけど……。スサーナは語学が得意でしょ?出来たら参加して欲しいなって」
ミアがなんだかすこし居心地悪げに組んだ手の指を遊ばせはじめたので、スサーナは急いで予定を思い返す。明々後日は確か最終時間にお嬢様達と合わせた初等アウルミア語があったはずだった。
お嬢様達は周辺国語が苦手である。なまじそこそこ似ているせいかアクセントの違いや語形の差、単語、名詞の性のブレなんかでとても混乱するようなのだ。
スサーナはその点、関西弁も聞き取れるしエセ関西弁で喋れます、ぐらいの感じで理解するので――言語学の観点からするとあまり褒められた状態というわけでもないが――慣れ先行でなんとかなっている。
というわけで、宿題の翻訳は完全にスサーナが希望の星だ。
本当ならスサーナとしては図書館に行って単語と照合しつつ文を引いたほうが習得が早そうだと思うのだが、今は、なのかこちらでは、なのか、授業では構文の暗唱のほうが優先されるらしく、その所為か勧めてもお嬢様達は図書館まで付いて来てくれない。授業終了後に宿題を済ませる時間を取っているので、スサーナはお嬢様達に離してもらえないことはほぼ決定していると言っていいだろう。
「ううむ、ごめんなさい。放課後すぐですと私は別の用事がありまして……二時間ぐらいは伺えないと思うんです。ええと、長くやるなら途中から伺えるかもしれないんですけど」
「そっか、ううん、無理言ってごめん! 」
断ったスサーナにミアが明るくパタパタと手を振る。
「じゃあ私寝るね! スサーナも夜更かししちゃ駄目だよ?」
夜更かしすると悪霊が来るよー、という慣用句を残してミアは去っていった。
前に夜更かしを見つかった時は魔術師が来るよーだったものだが、前回スサーナがいいですねえぜひ来て欲しい、と真顔で言ったのをどうやら覚えていたらしい。
スサーナはちょっと申し訳なかったなー、別の日にまた勉強会があったら参加しよう、と思いながらもうしばらくレースを編み、日付が変わってから眠った。
次の日、放課後にお嬢様達との用事を済ませてからスサーナは図書館を目指した。
実はバイトを探そうかとも思っているし、色々とやることはあるのだが、とりあえず目の前の知的好奇心を優先する。
なにせ、図書館に行った時にクロエに見つかると完全に資料検索のお手伝いが始まるのだ。スサーナは言語学資料検索もまあ嫌いではなかったが、クロエの居ない時を狙って趣味と実益を兼ねた民俗学方面書物に走りたいのだ。平たく言うと神話だの民話だのを読んだり歴史書を読んだりしたいのである。
――鳥の民の話も色々読みたいですし、それはそれとして各地マイナー神話って面白いですし、綺談怪談を集めた本が昨日あったな……フォークロア系ってやっぱりどこでも面白い、あれの続きを読んでから……
8割ぐらい趣味と言われたら全く反論ができない思考をしつつ、受付で記名する。
司書の、と言うべきか、受付にいる入出管理のお姉さんがスサーナの記名を確認し、確認印を押しながら笑って言った。
「今年の平民の子たちは熱心ね。皆優秀だけどこの時期からここに来る子はなかなか見かけなかったのにねー」
「そうでしょうか、まあええと、本はここで見るのが一番便利なので……」
「ふふ、勇気があってよろしい。」
勇気とはなんだろう、と首を傾げたスサーナにああまだ聞いていなかったの、と司書のお姉さんは学内怪談的なものに図書館のおばけ的なものがあるんだよと教えてくれた。それで生徒たちは必要最低限しか図書館にやってこないらしい。
「ああー……新入生なのでそういう話は初めて聞きました。ええと、念の為……まさかとは思うんですが、悪霊とか魔物とかそういうものが居るなんてことは」
「あはは、怖くなっちゃった? 居ないわよお、そしたら私達ここに居られないもの」
司書のお姉さんが笑い、スサーナは安心しました!と一礼する。
現実の脅威がないと言うならそれはまああまり気にすることでもない、ような気がする。一応精神は大人なのだ。多分。一応。情動はだいぶん体依存であることは否定できないが。
受付の先、入場扉を潜りながらふとスサーナは首を傾げる。
――あれ? 子たち?
自分以外に図書館通いしている平民の生徒がいるのか、と認識し、まあ多分ジョアンだな、と思う。島では本を使うことは殆ど無かったけれど、ちゃんと書物学習の有用性は理解しているようで何よりだ。
そう考えながら閲覧室を通り、さっきの言い方だともしかして今いるのか、少し冷やかしていこうかと考えてスサーナは少し部屋の中を見回した。
閲覧室は書見台を兼ねて上が斜めになっている簡素な長机が数本並べられたものから、簡単に仕切りのつけられ、書見台と引き出し型の平机が各々に用意された自習室を思わせる席、内側に小さな本棚まで備えられた豪奢なボックス席まで様々だ。
学生はどの席を使ってもいいということになってはいるので、どうも誰もこなさそうなこの時期、スサーナはこっそりいい席に座ることを楽しんだりもする。
ジョアンも多分似たような行動パターンになるのではないか、などと考えて壁際に設えられたボックス席の並びに寄ってはみるが誰もいない。
まあ居ると決まったわけではなかったですしね、とスサーナは早々に放棄して書庫に向かいかけ、
――あれ?
間仕切りのついた席の端に、ジョアンではない見た顔が座ってうんうん唸っているのが目に入った。
――ミアさん? どうしたんでしょう。
スサーナは声をかけようかと思ったが、人がほとんど居ないにせよ図書館は静かにするものだ。少し考えて後ろを通っていくことにした。
「ううー、ぜんっぜんっわかんないー……何を言ってるのかすらわかんない……」
ミアが書見台に開いた本を見ながら唸る。
――それはわかんないと思いますよ……
後ろから覗き込んだスサーナは内容を一瞥して遠い目をした。
ミアが覗き込んでいるのはヴァリウサ文語の構造分析をしている本だ。つまり、専門家が参照する専門書である。まず内容が難解である。
そして、そういう専門書の本文は古典ラトゥ語の特に硬い文体で書かれているのが通例なのだ。
基本的にヴァリウサ語文に親しんでいるはずのミアにはもう何一つわからないことだろう。
「駄目だ、これも読めないよ……」
ミアがため息を付いて大判本を閉じる。
「諦めたほうがいいよね……こんなじゃ……」
彼女がしょんぼり肩を落とすのを見て、スサーナはお節介をするかどうか悩み、それから「いかにも今通りかかった」という顔をしてぱたぱた足音を立てて横に立った。
「あっミアさん。お勉強ですか?」
「わわ、スサーナ。う、うん! ええと、予習……かな。」
小声で声を掛けたスサーナにミアは慌てた顔をし、困った顔で笑って見せた。
「頑張ってて凄いです。あ、でもええと、次の語学の予習でしたらええとー、ちょっと待っててくださいねー」
スサーナは身を翻し、書庫の入口近く、平置きの書棚に纏めてある初級学習書を数冊抜き出して確認し、その中の一冊を持ってまたミアのもとに走る。
「これ、これとかいいんじゃないでしょうか!」
スサーナが差し出したのは羊皮紙の書物ではなく、薄い木の板に単純な文言と図柄を彫り込んだものをコデックスにしたものだ。
普段口語に親しんでいる者が文語を学ぶのを目的に書かれたもので、島でも似たようなものを使う教科書のようなものだ。簡単な口語文と文語文が並列して書かれており、文節わけがされていて、品詞注釈があるのが親切でわかりやすいようにスサーナには思われた。今やっている文法理解の授業にはちょうどいい内容からそれなりの予習になる程度の内容であるだろうことはざっとめくって確認した。
それを見たミアが感心した顔をして、
「こんなのあるんだ。」
呟いたので、スサーナはよしお役に立てましたねとその場を離れようと思ったのだが、本を受け取ったミアがすっと表情を曇らせたのでおやあ? と首を傾げた。
「この教習本ですと要件を満たしませんでした?」
「う……」
ミアが暗い目をし、ぎゅっとスサーナの手首を握った。
「あ、あのねスサーナ、お願いがあるんだ……」
スサーナはぱちぱちと目を瞬かせる。
「お願い、わたしの代わりに勉強会に出て!」
ミアが切羽詰った声で叫び、スサーナはうっすらなにやら面倒くさげな出来事の気配を感じ始めていた。
図書館の中で叫ばせるのは良くないと一旦ミアを連れたスサーナは図書館を出て、図書館の裏手の壁沿いに二人揃って腰掛ける。
「ええと、じゃあお話をお聞きしますね。勉強会、どうかなさったんですか?」
「うぅ、スサーナごめんね、わたし……」
なんだか泣きそうな顔をしたミアの背中をさする。
落ち着いた彼女が話しはじめたのは以上のようなことだった。
初日、スサーナがお嬢様達のところに出かけた後。
教室の中をぐるぐる巡っていたスサーナの覚え書きを回収したのはミアだった。
他の荷物をみな持って行ったところから覚え書きのことを忘れているらしい、と察したミアは同じ建物の中の何処かに出かけたらしい、とジョアンに聞いたために本館脇のテラスでスサーナが出てくるのを待った。
「それで、わたし……耳で聞いたことを一回で覚えるのは得意だから、大丈夫だとは思ったんだけど、スサーナの紙を待ってる間に写しておこうって思ったの。ちゃんとカバンに入れたまま待ってたら良かったんだ。そんな勝手なことをしたから神罰があったのかも」
やはりあの時写しきれていなかったか。筆写の苦手そうな具合からしてアレあの時大丈夫だったのかな、と思っていたんですよね、とスサーナは思い返す。
沈痛な顔をしてぐすっと鼻を鳴らしたミアの背を撫でながら別に勝手にどんどん写してくださっていいんですようと言うとミアは首を振った。
「風が強かったでしょ? 紙ってあんなふうに簡単に飛ぶんだなんて思ってなくて……うん、紙が飛んじゃったんだ。本当に、なんであんなことしちゃったんだろ」
「え、でも、書き付けはちゃんと届けて頂いたじゃないですか。汚れても居なかったですし、気にするようなことはなにもなかったですよ?」
スサーナは首を傾げ、反射的にまあまあとやり、そしてそれを申し訳なく思っているのなら勉強会云々に関係がないな? と察する。
「うん……拾ってくれた人が居たの。」
ミアが指を組み、しょんぼりと顔を伏せて額に押し付けた。
ミアが慌てて飛んだ紙を追うと、近くに居た男子学生が落ちた紙を拾い上げたところだった。記章の色で同学年だとわかる。
慌てて駆け寄り、すみません、それは自分が落としたものです、と声を掛け、拾ってくれた礼を述べたミアは紙を受け取ってから相手がどうやら貴族らしいと気づいた。
彼女は貴族の階級を見分けるすべを知らない。だが、記章の形で平民と貴族は区別されているというのに、気さくに自分に話しかけてきたということは多分下級の貴族なのだろう、と察した。上位の貴族が平民に気軽に話しかけるなどということがあるはずがないからだ。
「はい。森まで飛んじゃわなくてよかった。」
「ありがとうございます!」
その場に平伏しようとしたミアを驚いた顔をしたその男子生徒は腕をとって止めた。
「そんなことしなくていいよ。学院に入学した以上は僕らは同じ立場の学生のはずだ。」
「でも……」
「そんなことより、君は言語学の特待生?」
「えっ、いいえ、わたし、音楽が得意で……」
「そうか、凄いな。……特待生は専門外でもこれほど優秀なのか。お手本みたいな筆記に、注釈はラトゥ語、しかも古典ラトゥ語だなんて。僕もラトゥ語は全部は読めないけどわかるんだ。まさかただの授業予定をこんな……」
その時すぐに違うと言えればよかったのだ。しかしミアは少年が目を輝かせたのを目にしてそれを口に出せなくなってしまった。
「あのっ、わたし……」
「しかし音楽の特待生か。僕もちょっと八弦琴は弾くんだけど、ぜんぜん上手くないから上手い弾き手は羨ましい。なにを弾くの?」
「えっ? わ、わたし、鍵盤楽器が得意なんだ……です。曲を覚えるのは得意で……
なお悪いことに、彼がすぐ話を変え、ミアがそれを武器にして学院に入った音楽のことを聞き始めたので、訂正する機会を失った。
「あー、それで勉強会に誘われた、と……?」
「ううん……その時は違ったの」
ミアが首を振る。
「その時は。」
「うん。その時は、自由に使っていい演奏室を教えて貰ったんだ。それで……」
ミアは器楽も歌唱も得意だ。
しかし、器楽は自主練習をする機会はほとんど無い。ミアの故郷では楽神の神殿の分社が古い楽器を庶民に開放していたために楽器に触れる切っ掛けになったし、馴染んで頭角を現してからは商家のお嬢さんたちの音楽教師をすることで楽器に触れていたミアだったが、楽器は概して高価なものなのだ。特にミアが得意な鍵盤楽器は個人で庶民が所持するものではない。寄宿舎住まいではなおのことそうだった。
エルビラに来てすぐ街で演奏ができるバイトを探したミアだったが、酒場での演奏の仕事はちょっと厨房が忙しくなるとウェイトレスの真似事に駆り出されるため、あまり効率がいいとは言えず、ミアは楽器に触れる機会に飢えていた。
喜んだミアは授業の終わった後演奏室に通いつめた。そこには大抵の楽器は揃っていて、彼女を夢中にさせるには十分だった。
例の男子生徒は数回演奏室に通りすがったように思う。
正確な回数がわからないのは大抵ミアが演奏に夢中になっている間にやって来て、言葉を交わさずにいつの間にか居なくなっているからだ。
「あ、でも、弾き終わった時に拍手してもらった日もあるけど、その時は別のお貴族様と一緒で、前を通っただけみたいで……。でも、昨日、弾き終わった後で楽器を片付けてる時に中に入って来てね……、語学の授業の予習復習をしたいんだけど、良かったら来てくれないか……って……」
「ああー……」
「それで……ホントの事言えなくて。……予習したらすこしはわかるようになるかなって試してみたけど……」
「ああー……」
それで図書館に来て、司書に聞いて語学の本を出してもらったのだが、出してもらった本がすべて何もかもわからなかったし、スサーナが出してくれたものを見て余計に打ちのめされたのだ。きっと司書が出してくれた方の本が本来求められているほうの物だと感じたためだった。
ミアがどん底まで沈み込んだような目をして膝の間に頭を伏せた。
「スサーナも軽蔑するよね、こんなの……」
スサーナは慌てて手をぱたぱたやって否定する。
「いえいえ、ただ間が悪かっただけじゃないですか! 貴族の方に反論するのが怖いのはとてもわかります。初対面の方ならなおさらですよ!」
「そうかな……」
「そうですって!」
力強くスサーナはミアを励まそうとするが、ミアの気持ちは一向に上がってこないようだった。
「折角得意だって思われてるのに、こんなに何もわからないようじゃ絶対軽蔑される……お願いスサーナ、代わりに出て! スサーナの用事、わたしがやるから……!」
泣きそうな顔で懇願されてスサーナは心底困る。お嬢様達の宿題は誰かで代替が出来る要件ではないし、それに――
「……その方も、ミアさんとお約束したおつもりでしょうに、私が行っちゃったら不味いんじゃないでしょうか……」
「うっ、でも、わたし絶対教えられないもん。教えられる人が行ってくれたらいいと思うんだ……」
スサーナは思案した。お嬢様達の宿題は多少時間をずらしても問題ないと言えば無い。自分が行って教師役をする、というのは言えば簡単な話だが、相手がそう言ったとはいえ相手の目的がそれだけという気はしない。貴族の子弟なら街で家庭教師役ぐらい探せるだろうし、特待生に強い期待を寄せているとしたっていくらかの金銭で上級生の特待生が雇えることだろう。実際、写本作成のバイトというものの存在を知り、学内の依頼ごとは事務棟にあると司書に聞いて事務棟の掲示板を確認に行った時にその手の依頼が上がっているのを見たのだ。
つまりこう、純粋に教師役を求めていると言うよりなんらかの親しみとかをある程度交えたお誘いである、ような気はする。
「ううーん……」
スサーナはもうひとくさり思案する。
しかし、だからといってボロボロで行ってきても大丈夫だとはスサーナには全く言えない。相手が語学が得意な相手を期待していると仮定すると機嫌を損ねるかもしれない。相手は何しろ貴族だという。偉さはわからないとは言え知り合いが貴族の機嫌を損ねるかもしれない瀬戸際となると正直無碍にできないのも確かだ。
最善はミアがボロが出ない程度に習熟すること。
次回の授業の予習復習程度なら付け焼き刃で2日程度あればなんとか詰め込み学習は可能な気はする。だが、通常の文語筆記……地方語文体混じりの筆記もミアはだいぶ苦手なように思えるのだ。求めているレベルがその付け焼き刃で済むかどうか。
「わかりました。私も一緒に行きましょう」
「スサーナ! ホント!?」
「一緒には行きますよ。でも、ミアさんも行くんです」
「え……でも。」
「行くまでに失敗しないように次回の予習と復習をしましょうか。始まったばかりなので量が少ないのが救いですね。今日明日で他人様に簡単に説明ができるぐらいには覚えて貰いますよ」
「で、出来ないよそんなの……」
「とりあえず、それが出来たら誤魔化せるかもしれません。何もわからないってことは無くなりますよ。どうでしょう?」
「それは……うん、そうしたいけど……」
やらないよりマシ。
できるだけボロが出ないよう装ってもらって横で自分がサポートする。
それがスサーナの達した回答だった。
「そうと決まったら図書館に……いえ、中で喋るのは良くないですね。寄宿舎に行きましょう。出来る限り教えます。」
「う、うん!」
ミアが頷く。スサーナは立ち上がり、図書館の入口で売っている質の悪い方の羊皮紙――質のいいものは一枚2デナルするがごく劣るものは5アサスで済むのだ――を買い込むと、ミアと共に寄宿舎を目指した。
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