第3話 私と「私」

前言撤回。あの女に感謝した僕が馬鹿だった。

なんで割と重要なポジションを《僕》でうめてしまうんだよぉぉ!

「...大丈夫?」

《僕》が言った。そう。彼女に罪はない。そして何より僕自身なのだ。彼女とはこれからも支えあっていかなければならない。そう繋がっているのだから。すべてを悟った僕は口を開いて告げた。


「あぁ。行こうか。僕!」


暗い顔だった彼女がぱっと顔をあげ、


「ええ!行こう!私!」


こうして僕と《僕》の冒険が始まった。なるようになれだ!絶対に生き延びてやる!








〜数時間後〜





「はぁ...はぁ...。」


「遅い!」


数十メートル先の彼女の声が聞こえる。


(あいつは本当に僕なのか!?)

そんな事を考えていると足がもつれまた転びそうになった。


「ん!大丈夫?」


えっ?今彼女はどこから現れた?少なくとも30メートルは離れてたはずだ。まさか今のを移動してきたのか?どういうことだよ...。

すると急に彼女の背中へおぶられた。

「えっ?ちょっ...ま」

止めようとした瞬間、


「遅い!飛ばすよ!」


そんな声を聞いた瞬間暴風に煽られたような風を受けて意識を失った...。






「ここは...?」


何度目かわからない気絶に呆れつつも目を開くと、街が目の前まで来ていた。


「おはよー!目覚めた?さっさと降りてくれない?」


...ぼくのこれまでの努力はいったいなんだったのだろう。そう言わしめるほど《僕》は化け物スペックらしい。彼女に下ろしてもらい、街の門まで行くとやはり簡単に入れる訳では無いらしい。門番が2人。堂々と構えていた。しょうがない...。ここは、芝居をするしかないか...!


「おい!僕!今から街へ入る為に芝居するから、僕の言う通りに話してくれ!」


「はぁ...。しょうがないなぁ。分かったよ!わたし!」

...よし!行くぞ!



「すいません!私達、東にある国の者なのですが。」


「なるほど、身分を証明できるものはあるかね。」


「いえ...。実はここへ訪れる途中で魔物に襲われてしまいまして...、自分たちの身分を証明するものが出来ないのです。ねっ、お姉ちゃん!」


「そ、ソウナンデスヨー。ワタシタチコノママダトウエジニシチャウー。」

(この大根役者がっ!もう少し上手くできないのか!?)


(しょうがないでしょ!?やってあげてるだけありがたいと思いなさい!)


「そ、それでですね。この街にギルドみたいなのはありませんか?そこで身分を証明出来るものを作りたいのです。」



「ふーむ、なかなか異例な事態だからな。少し待ってくれ。確認してこよう。」

...お願いだ〜。頼むぞ!



数分後



「確認が取れた。君達をギルドへ案内しよう。ついてこい!」


...何とか今日は、生き延びることが出来るらしい。

良かった...。ギルドか...!ここで魔法とか剣とかが使えるようになるのか!よーし!こっから僕の冒険が始まるぞ...!


この時僕は知らない。自身の驚異的(笑)の魔法能力を...。

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