お馬鹿な璃々子(2)


 結局璃々子は待ち合わせの時間ぎりぎりに渋谷に着いた。


 Renはまだ来ていなかった。


 平日の夜でも街は若者で賑わっている。


 待っている間璃々子は何度もハンドバックから小さな手鏡を取り出した。


 待ち合わせの時間から30分が過ぎた。


 ラインを開くとさっき電車の中から送ったメッセージが未読のままになっている。


 時間や場所を間違えたのだろうか?


 過去の会話をスクロールする。


 確かに今日、この時間この場所だった。


 Renに電話するが繋がらない。


 そうしているうちにも璃々子のそばにいた人たちには次々と待ち人が現れ夜の街へと消えて行く。


 とりわけカップルは羨ましく璃々子はいつまでもその後ろ姿を目で追った。


 その日、Renは現れなかった。手の中のスマホは沈黙したまま。


 とっかえひっかえして選んだ服よりも、いつもの倍かけて施したメイクよりも、新しい下着が惨めだった。


 そんなことまで期待して浮かれていた自分。


 水を浴びせかけられたような気分になった。


 誰かが笑っている。


 馬鹿だな、って。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る