璃々子(7)
ふと璃々子の胸に一抹の影がよぎる。
もしRen がリョウみたいな顔をしていたらどうしよう?
璃々子は胸に手を当て目を閉じる。
いやあの声は絶対にイケメンのはずだ。
リョウみたいな顔をした男があんなカッコいい声が出せるはずないではないか。
リョウは、
やっぱり失敗だった。
璃々子は昔から周りに面食いだ面食いだと言われていた。
リョウはそのことへの璃々子ながらの抵抗でもあった。
面食いだ、そう言われる度に璃々子はお前は馬鹿だと言われているように感じた。
どんな男性がタイプですか?
と聞かれて、外見はどうでもいいんです、それよりも尊敬できる人がタイプです。
なんて言うのが模範解答だったり、美男美女のカップルと美女と野獣のカップルだったら野獣と一緒にいる美女の方が心が美しく見えてしまうような世間で璃々子は馬鹿の烙印を押され続けてきた。
みんな口にこそ出さなかったが、頭の良い人たちはいつも微笑みながらその目の奥で璃々子を蔑んでいた。
わらじのような顔をしたリョウと付き合ってみたが結局は駄目だった。
璃々子はリョウに恋できなかった。
そればかりかリョウは事あるごとに璃々子を馬鹿だ馬鹿だと罵った。
リョウが野獣でなくてわらじだからなのか、自分が美女ではなくそこそこだからなのか、リョウと付き合っても璃々子への周りの評価は変わらなかった。
それどころか今度はリョウの収入狙いの浅ましい女というレッテルを貼られそうになった。
馬鹿らしくなってやめた。
馬鹿で何が悪い。
何をやっても馬鹿扱いされるんだったら好きにした方がいい。
リョウと別れた。
散々罵られたが不思議と腹は立たなかった。
璃々子にとってその時リョウは人間の男ではなく完璧にわらじだった。
手に持ったスマホが胸元でぶるんと震えた。
Ren:会うのいつにしますか?
スマホよりも激しく自分の胸が震える。
声しか聞いたことのない、まだ1度も会ったことのないRenへの期待は璃々子の中で膨らみ続ける。
この3日間でRenは絶世のイケメンに成長していた。
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