第6話 階級制度
「おはよう」
「おはよう!」
ガヤガヤ
賑やかな明るい声が寮内に響く。
(ここが食堂、、、、、、)
玲奈が訪れたのは寮の食堂。
中等部男子棟、女子棟が合同で会す共同スペースである。
初等部は隣に初等部用の食堂が別に用意されているというがはじめての寮での朝を迎える玲奈にとっては正直右も左も分からない。
とりあえず部屋から言われた通りエレベーターに乗って降りてきただけなのである。
わかることはただ一つ
「、、、、、、、。」
(うるさい、、、、、、)
広大なスペースに中等部が会すそこは人でごった返している。
玲奈はその光景に思わず顔をしかめる。
部屋へ戻ろうかと考えたその時
「玲奈ちゃーん!おはよー!」
「おはよう!」
「!」
聞き知った声が聞こえる。
「こっちこない?」
そこには手を振り、自身を呼ぶ3人の姿ー。
(桃花ちゃん、奈々子ちゃん、奏斗くん)
「おは、よう」
「おはよー!ここ座りなよ!空いてるよ」
「うん」
呼ばれた方に向かい、たどたどしく玲奈は挨拶を返す。
それを特に気にすることなくいつもの満面の笑みで桃花が自分の向かいの席を指さしながら応えた。
「あれ?そういえば今日紫乃ちゃんは?」
いつも一緒に食べているのか見かけない友人の姿に奈々子が声を上げる。
「!」
玲奈はその名前に思わず反応する。
しかし、特に3人はそれに気づくことなく、そのまま会話を続ける。
「なんか夜遅くまで作業してたみたいで今日はギリギリまで寝てるって。寮の人が一応朝食持って行ってくれるみたいだけど」
「そうなんだ!」
「あ、紫乃ちゃんって知ってる?芹本紫乃ちゃん、本当凄いんだよ!」
反応が返ってこないことを不思議に思ったのか桃花が玲奈へと言葉をふった。
「うん!優秀で次期幹部候補生って言われてるんだよ」
続けて奏斗が情報を乗せる。
「それは奏斗くんもでしょー?」
「いやいや僕は、、、、、」
「そんな謙遜しなくたって、、、、」
「幹部候補生っていうのはね、学園を担う幹部生3人のうちの一人に選ばれるかもしれないってことなんだよー!すごいよねー!」
「、、、、、、、。」
明るい会話とは裏腹に玲奈の表情は曇りを帯び、下へと傾き出していた。
「玲奈ちゃん?」
心配になり声をかける桃花。
「あ、そうなんだ!ね」
我に返るもその表情に曇は消えていない。
「う、うん」
心配そうに見つめる3人をよそに下へと視線を向けた玲奈はあることに気づく。
「!」
「みんなご飯が違うんだね、、、、」
「「「!!」」」
そして見たまんまを口にした。
そう違うのである。
目の前に座る桃花の朝食はお茶漬けと香の物。
その右に座る奈々子は、ご飯、お味噌汁、香の物、焼き鮭。
そして奈々子の右に座る奏斗は、トースト、サラダ、ジャム、ソーセージ、ヨーグルト、牛乳
と全員が全員似ることもなく全く別のものが用意されている。
そして右に行くほど品数が増え、豪華になっているのである。
「あ、うん!そうなの!」
「一応和食と洋食選べるんだけどね」
「多分そのうち玲奈ちゃんの前にすごいの来ると思うよ?」
「!」
「お待たせしました」
そういった矢先、係の人が料理を玲奈の前へと提供し始めた。
スッ
ドーーーーーン!!!!
「、、、、、、、、。」
思ってもみなかった光景に玲奈は言葉を失った。
では、品を述べていくとしよう。
ご飯、香の物、お味噌汁、焼き鮭
ロールパン、サラダ、スクランブルエッグ、ベーコン、ソーセージ、ヨーグルト、スープ
白身魚のムニエル、牛乳、果物
まるで朝食ビュッフェで一通り取った、もしくは取りすぎたと言わんばかりの量の料理がテーブルに並べられた。
「わぁ!!やっぱり凄いね!SSS、階級最高峰って」
「、、、、、、、。」
(いや、、、、、流石に)
(多い、、、、、、)
桃花の喜ぶ声とは裏腹に提供された本人は唖然としている。いや、むしろ引いているに近い。
「階級によって違うんだよ!ご飯だったり部屋だったり、お小遣いとかも」
「へえー、、、、」
(そういえばハル先生がそんなこと言ってたっけ)
奏斗の説明を受け、脳内に春賀との会話が蘇る。
『階級はこの学園で生活する上で重要となる。一度この学園に入った能力者はお盆や年末、年に2回の里帰り以外余程のことがない限り学園外に出ることは出来ない。だから生活する寮やお小遣い、食事等殆どは学園側が支給する。その時にその階級が目安となるんだ。』
「私はA階級、奏斗くんと紫乃ちゃんはS階級」
奈々子が胸元のブローチを見せながら階級を提示する。
確かにそのアルファベットが自分のものと同じように黄金色で描かれている。
「私は、、、、、」
「!」
そこまで言い、口を閉ざしてしまった桃花。
それを代弁するかのように奈々子が強く言い放つ。
「別に気にすることないわよ。階級で人のすべてが判断されるわけじゃないんだし」
「で、でも、、、、」
「桃花はB階級なの」
「B、、、、」
「奈々子ちゃんっ」
特に階級が何かもよく知らず言葉を復唱する玲奈と反対に桃花は焦りの表情を浮かべている。
「中等部でB階級の子って少なくてね。気にしてるみたい」
「気にするよ。私中等部の落ちこぼれだもん」
「そんなこと言うやつほっときゃいいのよ」
「そうそう!僕も桃花ちゃんの魔法は凄いなって思うし」
2人がフォローやお世辞で言ってるわけでははないということが聞いているとよくわかる。
「結果が伴うのはそのあとだよ!ね?」
「!」
玲奈は質問を振られ一瞬驚くも、思い当たることがあったのかそのまま軽く微笑むと同意を示した。
「うん」
「!!ありがとう、玲奈ちゃん!!」
玲奈にそう言ってもらえたのが余程嬉しかったのか桃花の表情はまた明るいものへと変わった。
(この世界では)
「それだけで足りる?私の食べる?」
「え??いいの?」
(強い力なんて邪魔になるだけだ、、、、)
ーーーーーーーーーーー
ーーーーーーー
コンコン
朝日が差し込む広い部屋の一室にノックの音が響く。
「芹本さーん」
ガチャ
名前を呼ばれたあと、少しして扉がゆっくりと開かれた。
「あ、起きてた起きてた。芹本さん、企業からの声も多くて忙しいのはわかるけど無理しないで今度から朝食は食べに来なさいね」
入ってきたのはエプロンをした30代後半の女性。この寮で働いている者だ。
カタカタとキーボードを弾く音が聞こえる。
部屋の中にはパソコンに向かい、扉に背を向けている少女の姿があった。
「あの子、、、、」
「えっ?」
少女は振り返ることも手を休めることもなく感情のない声でつぶやく。
「昨日からこの寮にきたんでしょ?」
「?」
代名詞では誰のことを言っているのかわからない。
しかし、少女・芹本紫乃は彼女を感じ取っていたのであるー。
「、、、、、、、。」
ーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーー
「行ってらっしゃーい」
「行ってきまーす」
朝食を食べ、多くの生徒が寮から校舎への道を歩み出す。
(眩しい日差し)
パッ
はじめて学園に来た時と同じように玲奈は黒い傘をさす。
「おはよう」
「おはよー」
食堂で会えなかったのか道を歩き、朝の挨拶を交わす生徒達も見える。
(賑やかな声、、、、)
(正直慣れない、、、、)
(でもこれもマスターの命、、、、)
(、、、、任務は遂行する、、、、、、)
玲奈は太陽が登る空の下、決意を固めるのだったー。
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