第7話 少女との距離
それから俺たちはコルト国を離れるまでリタとリクルットの親子の手紙を何度も互いに届けた。
そのうちリタはエリスになついて渡り鳥としてどのような旅をしているか、空はどんな景色か、飛行機はどのように運転するのかなど様々なことを質問するようになった。
そんな姿を俺は少し離れた場所から眺めることが日常になっていた。
俺は子供が好きじゃない。むしろ苦手だった。いや苦手になったというべきか。
学院で教育のシステムを学んでいた時、当然子供と触れ合う機会は設けられ、俺は積極的に子供たちとかかわり、時には本を読み聞かせ、またある時は学園の教師の代わりに教壇に立ち授業を行うこともあった。
しかし、俺は授業をシステム通りに進めることができなかった。
授業をシステムに当てはめて教えようとしても子供たちは当然俺が考えた通りに応えてはくれない。それどころか俺が困るような質問まで投げかけてくることが多々あった。そんな時はクラスで成績が優秀でいわゆる優等生な子に質問して答えてもらうということを繰り返した。そうすると授業が理解できていない子に疎外感を与えてしまい、一部の子供たちを除いて、ほかの子供たちは俺から離れていくようになってしまった。
それは学院からの俺の評価にも影響してくることにつながる。俺は悪い評価をつけられたくなくて必死に子供たちをシステムに当てはめて接するようになる。すると、大切だった子供たちの気持ちを考えることをないがしろにすることにつながってしまい、ついにはだれも俺のことなど見てはくれてないことに気が付いた。いや、誰も見ることができていなかったのは俺のほうだった。
そのことに気づいて以来、俺は子供たちのことをどうにもはれ物に触るように扱ってしまうようになり、子供たちと正面を向いて触れ合うことができなくなってしまった。
それも俺が心を病んだ大きな原因の一つだった。
それを克服できてない現状で、どうも俺は自分でも気づかないうちにリタと距離を置いてしまっているようだ。そしてそれは自然にリタにも伝わっていてリタも俺よりエリスになつくようになったというわけだ。
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