第2話 サラマンドラ1
サラマンドラを飼うことになった。
いや、正確には息子が勝手に連れてきた。
「ゲーセンで景品にされててさあ。可哀そうだったし」
とかへらへら言いながら、プラケースに保冷剤付きで連れ帰ってきた。
バカヤローいくら何でもありのゲーセンでもそんなもん景品にするわけあるか。どうせよくあるウーパールーパーだろうやつらもサラマンダーいうし、と思ったが、見ればほんまもんのちっこい竜だった。
なにしろサラマンドラだ。火の竜だ。こいつら何を喰うのだ。
今は小さくてもいずれはデカくなるだろう、火でも吹くようになったらどうすんだ。息子に文句を言ったが本人はへらへらしたもんで、ガラスの水槽に入れてイモリの餌などやっていた。
ペット不可のマンションに住んでいるのでいちおう管理人にお伺いは立てた。
人の好い管理人さんは首を傾げながら、
「爬虫類とか魚類とかは通例で飼って良いことになってますが……まあ鳴き声を立てたり脱走したりして居住者に迷惑がかからないようにお願いしますよ」
と、簡単に許可してくれた。
ええんかい。
というか、サラマンドラが何か理解しとんかーい。
ともあれ、ちっこい火の竜は我が家の住人になった。
体長4cm。白色。
翼なし、ツノなし、火はまだ吹かず。
雌雄不明。
「ネット情報によると、そいつらウーパー用の固形飼料でいいってよ。翼は生後半年あたりから生え始める模様。ただし暑がりだから温度管理必要」
「あーだめだわ、兄ちゃんの汚部屋じゃ暑くて三日で死ぬわ」
妹相手に飼い方のウンチク垂れてきゃっきゃしてるけど。
サラマンドラが死ぬより息子が飽きるほうが早いだろう。賭けてもいい、こいつにペットの世話はできん。
「おかーさーん飼ってもいいでしょーちゃんと世話するからぁー」
と言って飼い始めたペットを結局親が面倒みることになるのはお約束じゃろがい。
果たして、お約束はお約束通りになった。今は主に私が世話をしている。
ただ、予想外の展開になったことがひとつ。
その後サラマンドラは火も吹かないし、翼もまだ生えてこない。
その代わり息子に羽が生えて、独りで都会へ飛び立っていった。
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