5章5節:混戦3
ディードはアリスと別れ、暴走体及びグール戦闘をしていたが新たに分かった事が少し。
こいつ、戦闘中は喋らない。暴走し思考が固まってしまって動かしにくいかと思ったら思いのほか柔軟に動く事。そして、入れられた毒が厄介な点。
放たれた魔矢を避け、接近しハルバードで突くが羽でいなされる。そして、3本目の腕が首に迫り体を捻りソレを避けると、よろけるようにして距離を取る。
間髪入れずに次の魔矢が放たれ、跳び退けるようにして避ける。が、頃合いを見計らったようにして今度はグールが迫ってきていた。
急いで壁を張るが、数枚貼ろうとした箇所で"不発"し貼れた壁も無理矢理破壊され接近を許してしまった。奴はナイフを振り下ろす。
それをハルバードの柄で手首を受け、刃先が目の前で止まる。彼唸り声を挙げながら、を蹴り飛ばすと魔法爆弾を放り投げられ、急いで周囲に壁を張り巡らせていく。
次の瞬間爆発し、発生した煙から出た彼の服が少し焦げていた。
壁を更に張り巡らせていく頃にはグールは再び姿を消し、暴走体との1対1の構図に戻る。
「さて、これどうしたもんかね」
次の魔矢が引き締められ、壁の枚数を今度は45枚に増やす。そして放たれ、45枚の半透明の壁は貫かれた。
だが、45枚目を貫いた時、無効化。と言うより分解に近い感覚で消されていたはずの壁が、"割れた"のだ。
ディードは静かに笑みをこぼすと走りながら攻撃を避け、周囲の壁を生成し無理に魔矢を受ける事をやめ、グールの接近させない事を優先し壁を使用する。そして、思考を巡らせ考えをまとめ始める。
無効化される壁は44枚前後と仮定。無効化魔法はエンチャントされている物ではないとし、恐らく50枚もあればほぼ確実に防げるだろう。だが、枚数と暴走体が魔力量の操作を行った限りはその限りではない事を考えると、確実に防げるのは1度が限度か。
そして、毒である。これは普通の毒ではなかった。「神装武具」とアリスが呟いていた事から予想はついていたが、どうやら使える
さきほどの不発といい、徐々に進行していくタイプのようだ。今はまだ余裕を持てば戦えるが、問題はこの毒は自然と抜けるのか。はたまた呪いの類と一緒で抜けず治療ができないのか。治療はできないが自然には抜けないのか。で話が大きく変わってくる。
──油断しちまってたかなぁ。まぁ今はいい。毒も後でギャスに見てもらえばいい。差し当たっての問題はどうアレを倒すかだ。
グールの倒し方は頭の中に既にあった。後はどう誘い込むか。どうその状況に持ち込むかというだけであった。問題は暴走体。
彼の火力では倒すことはおろかダメージを与える事すら難しい。
すると、森の中で巨大な氷の壁が生成された後、戦闘音が聞こえてくる。
「あのハーレム君の仲間か。案外近くに居たな」
巻き込むか? という考えが出てくる。
アレを倒した後でなら良い手だ。しかもスラ達から離す事ができる。
最悪押し付けて今度こそおさらば。出来ればいいが、望みは薄いだろう。
スラ達は参戦させるにしても、逆に旗色が悪くなる。このまま待機が最善か。
隙を見てナイフを暴走体の目を狙って投げるが、腕で弾き飛ばされた。
足を止め、ディードは暴走体を見据えた。
「さて、此処からが正念場だな。スラ、"腕"で準備しといてくれ。奴を釣って仕留める」
◇
「よし、こんなもんかな」
周囲の壁を見て立ち上がりながらアレシアはそう呟く。
そして、周囲を見渡すと風魔法を1本の木に向けて放つ。すると、1体のコボルドが飛び退け、木が風魔法で切り刻まれた。
「悪趣味じゃない? 女の子をそうやって視姦するの」
コボルトは着地すると、首を鳴らしアレシアとミラの2人に目線を向ける。
「すまないね。どうやって皮を剥いでやろうかと思って」
「あらら、本当に悪趣味な野朗だった」
彼女はそう言いながらその場を1度踏むと、彼女を取り囲む様に水がせり上がる。
「残念だけど、あんたは私の皮もこの子の皮も剥げやしないよ。なにせ」
彼の死角から魔矢が迫り、襲い掛かるがその全てが無効化され消え去る。
「なにせ、の後は何だい?」
「・・・・・・私達が倒すからさ」
此方も無効化する奴かよ。と、アレシアは思うがすぐに切り替え次の手を考える。
「シャローネこのまま援護お願い。ミラちゃんは凍結魔法宜しく」
それぞれから了解という返事が返ってくる。
「さて、手の内晒してもらおうかね」
アレシアが合図を送るとせり上がった水が、複数に別れ渦を巻きながら襲い始める。
彼は見切り、最小の動きで避けていく。
──あら、避けるのか。
「ミラちゃん」
そう言うと、アレシアは走りだし、ミラはランスを地面に突き刺した。
「凍って! ヴァジュランダ!!」
そして、彼女は水を凍結させていく。
確認すると、風魔法で氷を砕き、破片を飛ばし同時に火の玉を創りだしてコボルドに向けて撃ち放つ。
致命傷なり得る氷の破片を手に持つナイフで防ぎ、火の玉は無視し、無効化させていく。だが、火と同時に接触した氷の破片が彼の腕を傷つけるのを彼女は見逃さなかった。
「シャローネ、攻撃合せて」
接近し、炎をまとわせた右足で蹴り、避けられ半回転しながら今度は風魔法をまとわせた左足で回し蹴りを食らわせる。
今度は腕で防がれ、風魔法の効果が切れる直前の事であった。上空から振動する魔矢が彼に向かって殺到。
同時にアレシアは風邪魔法の内側に炎の魔法をまとわせ、更にその内側に水魔法をエンチャントし、体全身にも水魔法をエンチャントさせていく。
「ッ!」
魔矢が接触、爆発すると同時に彼女は蹴り抜かれ、更に半回転し足を地につける。
『惜しかったね』
「んだね。直前で気が付かれた。勘がいいよあいつ」
コボルドは余裕の笑みを浮かべながら佇んでいた。
先ほどの攻撃時、アレシアが"同時に魔法を無効化出来ない事に感づいている"事に気が付き、後に下がり、蹴りを受け流しながら無効化魔法を魔矢の方に使用し防いだ。そのためダメージはほぼない。
耐性から見て此方の手の内を見てから対策、実行そして仕留めるタイプとかんがえられる。
──いや、最初の言動とあの笑み見る限り、どう対処して来るのか見て楽しんでるのか。ほんと、いい性格してそうな奴。
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