5章4節:因縁
鍔迫り合いをしていた2人は同時に後に跳ぶ。
アリスは空雪を1本の道の様に伸ばし、サクラは呟きながら刀を振り上げた。
「陸之閃-地双!」
「漆之型-
振り下ろし、振り切られた両者の刀から衝撃波が生まれる。そして次の瞬間、轟音と共に接触した衝撃波が弾け周囲に拡散しながら、爆発し砂煙が上がる。
アリスが刀を鞘に収めるとほぼ同時に、複数の衝撃波に襲われる。それらを居合で斬り払いながら、縮地でその場を移動した。
──攻撃速度が早過ぎる。となると、腰の小太刀か・・・・・・。
「壱之型-」
「ッ! 壱之閃-」
動きを読まれ先回りされ、ほんの少しであったが攻撃の動作が遅れた。
「斬撃!」
「居合!」
その結果、攻撃を受ける事は出来たが、刀を鞘に収める動作に入る前に刀を弾かれ、抜刀状態で隙が生まれた。
「あはっ! 壱之閃-居合」
「斬之閃-
瞬時に逆手に持ち変えられ放たれた斬撃によりサクラが放った居合は弾かれ、流れる動作で得物は鞘に収まる。
それを目の当たりにし、彼女は舌打ちをしながら縮地で追撃として放たれた居合を避け距離を取る。
「へぇ、基本の攻撃手段以外も使うようになったんだぁ」
アリスは順手に持ち替えながら乱れた息を整える。
「そういうあんたこそ、変わった2刀流になったこと」
サクラは小太刀を腰に挿している鞘に収め笑みを浮かべる。
「これさぁ、結構苦労したんだよねぇ。ほら、うまく動かないと戦えたもんじゃないしさ、中途半端じゃアリス仕留め切れないしさ」
彼女の言葉を聞き流し、クロードの位置を確認するため周囲に目線を送る。
だが視認出来なかった。恐らくリリーシャスの指示で姿を隠し移動しているのだろう。
そして、司令塔である彼女も移動し此方の位置確認を行え尚且つ、ディード側の戦闘にも参加出来る位置取りをしていた。
サクラを押し付けられた。というより、勝手に戦い初めフリーにしてしまった。と言った方が正しいか。
どちらにせよ、アリス達にとってはまずい状況であった。
「・・・・・・ふーん。戦ってた相手気になるんだぁ。じゃぁ私が殺してあげるからさ。その後、ちゃんと私"だけ"を見て戦ってよねぇ? や、く、そ、く♪」
そういうと彼女は縮地を使用し、移動し始めた。
想定外の動きに呆気に取られ、彼女の性格を思い出し歯切りをする。
──あぁ、もう面倒くさい。
アリスは以前彼らと組んでいた時に使っていた量産型のドラウプニルを起動させた。
◇
遠目で尚且つ横目で1位と乱入者の戦闘を垣間見ても異常な攻防であった。
速度、攻撃、防衛全てをとっても常軌を逸している。
この世界のトップクラスの連中と戦っても防戦ならいい勝負になるのではないか。と考えてしまうほど。
「クロードさん、このままわたくし達は向こうに向かいますわ。ミリーさんを仕留めて即離脱しますわよ」
『分かった。にしてもあの斬り合いすごかったね』
「ですわね~。わたくしじゃ、あんな風な戦闘は無理ですわ」
苦笑いしミリー達の戦闘に目線を向ける。
此方の戦況は拮抗していと言って間違いない。ただ、壁が無力な分彼の方が不利か。
先ほどの報告から、リリーシャス達が参戦しない限り向こうに手を付けるのは難しかった。そのため、あの乱入は行幸といえる。
視線を戻すと、乱入者の姿が確認出来なかった。急いで周囲を見渡すと、1位が足場として使用していた物が複数見えた。そして、彼女に近づくようにして割れている光景も。
「狙われましたわね・・・・・・」
ディヴァインを急いでモードハーフへと変形させる。ソレは2つに別れ、一方はイガグリのような盾、もう一方は2回りほど小さくした大砲の形状を取り、背中を通り1本のチューブのようなもので繋がれていた。
精製されている足場から、移動箇所を読みディヴァインの砲門を向けトリガーを引く。
放たれた砲撃は空雪を破壊し、地面をえぐる。
その光景を見たサクラは口笛を吹いた。
「おっもしろい武器もってんねぇ。狙いもいい」
直前で思惑に気付かれた事に感づき、移動ルートを変え空雪を囮にそのまま地面を移動していた。
「けどねぇ」
小太刀の柄を握っていた手を離し、手を開いて正面に突き出す。
大量の空雪をサクラと彼女の間に発生させ、幾つもの進行箇所を作り、飛び移り更に接近し始める。
「んなっ!?」
作られた大量の足場に困惑し、更に動きが読めず、距離がものすごい勢いで縮まっているのを感じリリーシャスは焦った。
『リリー、今そっちいくよ!』
──クロードさん、気持ちは嬉しいのですけど、これは確実に間に合いませんわね。
覚悟を決め、適当にイガグリのような盾から砲撃が始まり片っ端から足場を破壊していく。だが、相手の足は止まらず、足場も破壊と精製を繰り返し数が減らなかった。
更に接近され目の鼻の先まで来られるも、悪あがきをするように高度を上げながら砲撃の雨を浴びせる中、1通の通信が入った。
『7位、蹴るけど文句言わないでね』
声の主は1位、アリス・カゲミヤだった。先日の時配った通信機を使った事は容易に想像がつき、驚きはしたがすぐに反応を返す。
「はぁ!? 何を──」
後方で何かが割れる音がし、目線を向けようとした瞬間だった。
乱入者とリリーシャスの間に突如アリスが現れたのだ。
「壱之型-斬撃」
お構いなしと放たれる攻撃を、鞘から刀の刃を少し出し、受ける。
「縮地」
そう呟きながら、リリーシャスを足場代わりに蹴り飛ばし、サクラを押しのけるように跳び上がると、そのまま攻撃の体勢に入り、縮地を発動と同時に空雪も使い更に回りこむ。
「んなっ!?」
「肆之閃-死奏」
体勢が崩れ、更に回りこまれた彼女に4連撃を浴びせようとする。
「っち、肆之型-
だが、苦し紛れに放たれた彼女の居合と斬撃による4連撃により、致命傷となり得る攻撃は防がれてしまい、更に陽炎と呼ばれる認識をずらす技で入ったと思った攻撃も空を切っているだけであった。
「陸之型-
更に、体を捻りながら突き出されたが、彼女を捉えることはなく顔の真横を突かれた。追撃を嫌がるようにアリスは彼女から距離を取る。
「向こうも陽炎か・・・・・・それに。ま、いいか」
アリスは、蹴り落とされ地面すれすれで体勢を持ち直し、武器を変形させ2人を見上げていたリリーシャスの元に行き、腰に手を回して抱えると更に距離を取るように移動する。
「え、ちょ!?」
「狙われてるから我慢して」
落下しながらその光景を見たサクラは怒るでもなく、嫉妬するでもなく笑っていた。
「あはっ! あははは!! それよりさぁあ、影縫い使ったね! 使っちゃったねぇ!! それでお次は鬼ごっこってね! しっかりお荷物ちゃん抱えて逃げてよねぇアリス!!!」
空雪を作り、彼女を追い始める。
ジワリジワリと距離を詰められ、アリスは舌打ちをする。
「そ、そうじゃな、なくてなんで、わた、わたくしを!」
「・・・・・・とある人からの交換条件。逃亡手伝う代わりに私は学園生徒は殺さないっていう。前回も殺さなかったでしょ。特に7位、あんたを、って大丈夫なの? その気分とか」
「こ、これくらいならな、慣れてますから。で、でも守る理由には、な、ならないと、思うのですけど」
「わざわざ名指しするって事は、何かあるんでしょ。あんたは心辺りあるはず。嫌なら手、放すけど」
「い、いえ、・・・・・・命拾いしましたわ」
衝撃波が迫り、避けながら腰のベルトに鞘を挿し、刀を抜く。
そして、第2波、第3波と続く衝撃波を空雪で軌道を作り、地双を放って撃ち落としていく。
──7位の武器が邪魔で動きにくい。それに魔力の消費もそろそろまずいかな。
追いつかれ、まともに戦った所で7位を守りながら立ちまわる事は不可能であった。取る手段は限られるが打てる手は打っておきたい。
「で、物は相談なんだけど、一時的に手組まない?」
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