4章1節:道中
村から離れ、襲撃があり、コテージで1夜を明かした。
彼らが夜、話し合った内容は以下の通りである。
まず、襲撃者の種族はグール。元人間であり死亡し一定の確率で変貌する類の魔物だ。同様に元人間の魔物にはにスケルトン等が存在する。
グールは一部からゾンビとも呼ばれ、知性は人のそれと変わらない。一番の特徴は頭を破壊しない限り活動を停止しない点。そのため、切り離した程度では身体は動いてしまう。この辺りはとてもヴァンパイアと酷似しており、此方は心臓を破壊しなければいけない。
彼らは身体機能のリミッターが外れており、それでいて回復能力も高い。場数を踏んだ個体の場合、相手取るとかなり厄介な種族の1つだ。
次にその襲撃者を差し向けた相手だが、ほぼ魔物軍という結論に至った。そのため一刻も早く反乱軍の基地に行かなければ行けない。というわけでもない。
昨夜の状況からアリスがいる状態では、"勝てない"と襲撃者は踏んでいるのだ。
つまり、一緒に行動している間は最低限の警戒と防衛をしておけば比較的安全であり、此方から仕掛けても、比較的安全に倒せる状態ではある。
この事から、1番理想的な形は反乱軍と合流前に襲撃者を発見、倒す事である。しかし、索敵能力は相手の方が上手の可能性が高いうえ、此方は人員不足の現状これもあまり現実的とはいえない。
この事から小悪魔はこう考えた。
"此方から見つけられないのならば、相手が出てくる状況を作ればいい"と。
現在、コテージから出発し防衛にわざと穴を開けたり、隙を作ったりしおびき出そうとしていた。
しかし、うまく引っかかってはくれず山道を抜け、山道を抜け1夜を過ごし、草原に出てマーレン領に入り昼に差し掛かろうとしていた。
「ふあぁ・・・・・・やっぱ来ねぇなぁ」
あくびをしながらディードが呟く。「まぁ、どうせ来たらラッキー程度だし?」とスラは水で文字を書いた。
最終的な案は決まっていたものの、一度手合わせしていたディードからは「あれは引っかかってくれるような奴じゃない」と否定的な意見が出ていた。
そして、意見を出したギャスは予想と違い項垂れていた。
「何いっちょ前に落ち込んでんだよ」
「いや、だって失敗・・・・・・してるし」
「はぁ、相手が悪いだけだ。落ち込むような事じゃねぇーよ」
「でもこのまま合流してもいいんでしょうかね?」
前を歩いていたリザ之助が、歩く速さを落とし話しかけてくる。
「仕方ないだろ。アレを俺らから仕留めるのは時間も労力も結構掛かる。それに昨日も言ったが、人手がいない現状、下手に動くとこっちが削られかねねぇから今は攻めるのはなし。結局相手の能力考慮するなら合流して人手増やしてどうしましょ。ってのが一番かなと思うわけ」
「あ、それよりグリフォンの肉どうするの?」と書かれる。
「っと、リザ助。グリフォンの肉どうすんのかだと」
水の文字を指差しながらそう伝える。
「そうですねぇ。シンプルにステーキをとも思ったのですが、一品だけですと寂しいですし、スープや揚げ物もアリかなと」
「油・・・・・・なんてあったか?」
彼はリザ之助が背負っているカバンに目線を送り、昨日みた食材の一覧を思い出していく。
「基地に着けば、最悪代用品を調達すればいいので」
「代用品?」
「はい。ナタラ草って知ってるでしょう?」
ナタラ草と言えばその辺にいくらでも生えている雑草である。
名前は知らなくとも、ひと目見れば誰でも分かる程度にはありふれた存在であり、火の魔法を扱えない者が火を付ける時に非常に便利な代物でもあった。
「あぁ、そりゃ知ってる」
「あれ、実は絞ると少量ですが油が取れるんですよ。ただ質は良くはないので使う人はほとんどいないんですけどね」
「だから、代用品か。アレ、火付けに便利な草程度にしか思ってなかった」
「ですです。っと、そろそろお昼にしましょうか」
リザ之助は立ち止まると、空を見上げ太陽の位置を確認する。
「もうそんな時間か。アリス、戻ってこい」
ドラウプニルを使い通信を送ると背伸びをする。
「昼寝したい天気だな」
暖かく、草原に寝っ転がれば気持ちよく寝れそうな陽気だった。
リザ之助は「そうですねぇ」と答えながら、カバンを降ろすとテキパキと昼食の準備を始める。
「ただいま」
戻って来たアリスの手のはケラの実が複数握られていた。
「ほら、ちんちくりんさん。これでも食べて元気だして」
「ちん・・・・・・ありがたくもらうギャ~」
パタパタと飛んでいき、アリスからケラの実を受け取ると、果実の部分を食べ始める。
「そういや、後どれくらいなんだ?」
「ん? 多分夕方には着けると思うギャよ」
「はぁ? そんな近いのかよ」
「そこまで離れてないギャからね。人間から見れば前線基地としか認知されてないはずギャ」
幸せそうに果実を頬張りながらそう答える。
それから昼食を取り、他愛ない話を挟みつつ更に3時間ほど歩いた。この間も変わらず隙を見せたりしていたが奴が襲ってくる気配は一切なかった。
「へぇ、剣より弓のが得意ねぇ。じゃぁなんで弓装備してねぇの?」
「普通の弓は割りとかさばりますからね。それに、以前のように急ごしらえであれば少しお時間を頂ければ作る事ができますし、最悪敵のを使用すれば良いかなと」
「はっはっは、随分と思い切った事してんだな」
以前、リザ之助に罠や援護を頼んだ時に手慣れた手つきで巧みに弓や罠を
確かに時間さえ稼げれば、問題なく作る事は可能だろう。
「でも、緊急時はどうすんだよ。中距離戦に切り替えられた時とか」
「スラちゃんやアリスさんに助けを求めます」
「無理だったら?」
「そりゃぁ、逃げます。全力で逃げます」
「俺の護衛は?」
予想外の答えに半笑いで更に問いかけていた。
「ディードさんなら多少の事は問題なくないですか?」
「そうきたか!? すまん、思ったよりお前肝据わってるわ」
「リザくん仕事放棄いけない」と書かれ通訳すると彼は焦り色々と言い訳をかます。
そういうつもりはない。信用している事だ。と。本心なのだろう。その事が分かっていてもこの状況で馬鹿正直に受け取った態度を取るような2人ではなかった。
まず、「言い訳はダメなんだぞ~」とスラと書き伝えた事から始まる。
「い、言い訳じゃ・・・・・・」
「どうせ俺は放置される身なのさ」
「放置はしませんよ!?」
「本当に~?」と書かれ伝えると、「本当です」と返答される。
「じゃぁさっきの逃げる発言は何なのかねぇ」
「それは・・・・・・」
「あっはっはっは、悪い悪い冗談だよ」
「いやぁ、悪ノリが過ぎたね」と書かれ2人は再び盛大に笑う。
その光景を見てリザ之助は安堵のため息をついた。
「酷いですよー」
「悪かったって、ん? これなんだ?」
ディードは何かを見つけ立ち止まるとしゃがみ、ソレを拾い上げた。
それは何らかの結晶の欠片であった。微かに魔力感じる。
「スラ、分かるか?」
そう問いかけるが、身体を横に振り知らないと意思表示を示す。
「ただの石ころじゃないギャ?」
寝ていたギャスが目を擦りながらそう問いかけてきた。
「んな分けねぇだろ」
立ち上がるとその結晶をズボンのポケットに仕舞う。
「リザ助、一応戦闘準備はしとけ。最悪逃げる準備」
「分かりました。食料は死守します」
「流石、よくわかってる。けど、俺らは見捨てんなよ~」
からかうように言った後、通信を飛ばしこう続ける。
「アリス、そっち何かないか」
が、答えが帰ってこずもう一度聞くとようやく返事が返ってきた。
『・・・・・・死体を見つけた。まずいかも』
まずい。この言葉が引っかかる。
「何がどうまずいんだ?」
『死体の主は私が知っている人。・・・・・・41位、リ、なんだっけ。忘れれた。とりあえず、ハプスブルグ校の生徒』
──こりゃきな臭くなってきた。
「まぁいいや、急ぐぞ。アリスも此方来い」
そう言い走って向かうと、先ほど拾った物と同じ結晶が更に落ちている。それは進むにつれ数が多くなっていった。
突然、リザ之助がディードの名前を呼び
ながらあぜ道の先を指さす。
指の先には大量の結晶と共に殻のような形状をした物があった。殻からは、1筋の血がこの先へと続いていた。
立ち止まり、それを怪訝に見つめポケットに入れた結晶を取り出し見比べる。
「同じ物だな」
殻のような結晶も同様に、微弱の魔力を感じ取る事が出来た。
アリスが現れ、「やっぱり」と呟く。
「何か知ってんのか?」
「まぁ、ね。これは・・・・・・」
神装武具が暴走し変異した時に生じる結晶。そして、暴走したのは恐らく12位、ミリー・リスコット。
「私がつるんでた人達とライバル関係だった。でも、すごくいい人だった。すごく」
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