4章2節:傷を癒やして
クロード達は学園に戻り2日が経っていた。
学園に着いてすぐにレストが人伝にフランカを呼び、治療を受けていた。2人の傷は初日で治ってはいるのだが、療養期間を2日設けていたのだ。
運が良かったのか悪かったのか、帰って来て直ぐ大量の負傷者が出て回復魔法が扱える先生方がやつれた顔をしていた。恐らく、フランカに頼んでいなければ非常に時間が掛かっていただろう。
学園には専用の病棟が存在し、病室には左右に2つずつ、計4つの棚や仕切りなどが備え付けられたベッドがあった。
うち2つは空いており、右の通路側に存在するベッドにレストが、左の窓側に存在するベッドにリリーシャスが入っていた。
二人共、それぞれ教本を読み会話は一切ない。
空気は重く、居心地が良いとは程遠い状態となっていた。
すると、病室のドアが開き2人の女性が中に入ってくる。
「やっほー、最終日見に来ましたよ・・・・・・って、いい加減貴方がたは仲良く出来ないんですか?」
顔の半分は前髪で隠れ、横髪は肩まで、後ろ髪はセミロングとなっている女性が肩をすくませながらそういった。
「・・・・・・仲良く出来ると思う?」
「戦闘中仲良くてその言い草はなんですかね? アホなんですかね? といいますか、質問を質問で返すとかやめてください。アホみたいですので、いや実際アホですね」
「フランカさっきからアホアホ言い過ぎじゃない!?」
「事実じゃないですか。一体誰が勉強の面倒も見てると思ってるんでしょうね?」
そう言われ咄嗟にレストは目線を逸らす。
「滑稽ですわね。貧乳さん」
「あぁん?」
軽く煽るリリーシャスに全力で反応を示し、口喧嘩を始める2人を見てフランカはため息を付く。
「ほんと、もう・・・・・・ラティお願い」
「おう? おっほん」
金髪のポニーテールでオッドアイの女性が咳払いをしながら一歩前に出た。
「待て待て、二人共。我が左目、煉獄の魔眼が発動するような事はやめるんだ。さもなければ、学園が地獄となるだろう。どうだ、怖いだろう。なんなら我が内に眠る竜を呼び起こしてもいいんだぞ?」
決まった。と内心思う彼女に対し、2人の視線は冷ややかであった。
「ラーシャさ、魔眼なんて持ってないよね」
「ラティーシャさん。魔眼に憧れてるのはわかりますけど、嘘はいただけませんわよ」
「・・・・・・」
先ほどのは彼女の嘘であった。本人が格好いいと思い言っているだけであったのだ。
ラティーシャと呼ばれる女性はそのまま固まり、その横を平然とフランカが通り抜ける。
「ラティありがとー。さて、回復魔法かけますよ」
彼女はレストの元まで歩いて行くと回復魔法をかける。
「ま、なんともないですね」
形だけの回復であった。複数回掛けなければ行けない場合が存在する。今回はそのケースに該当はしないが念のためという彼女なりのポリシーであった。
立ち上がるとリリーシャスの元に歩いて行き、同様に回復魔法をかけいく。
「リリーシャスさんも大丈夫ですね」
「フランカさんありがとうございますわ」
「頼まれただけですし、レストは借りていきますけどね。うちが言うのもあれですけど、無理はしないでください」
彼女は立ち上がり、目線をドアの方に向けると、ラティーシャがドアの前で三角座りをし、顔を埋めて落ち込んでいた。
彼女の元まで歩いて行くと見下ろす。
「何やってんの」
「もうやだ、帰る」
「はいはい、今から実地任務でしょ。レストは荷物まとめたら、お昼までにうちらの部屋にお願いします」
ドアを開け、彼女を立たせると背中を押して病室を後にした。
残された2人は同時に着替え初め、同時に荷物をまとめ、ほぼ同時にドアに向かおうとし舌打ちをする。
「どうぞ貧乳さんがお先に行ってくださいまし、これから実地任務なんでしょう?」
「別に急いでるわけじゃないし、あんたが先にいけば? ほら、改修してるディヴァイン受け取りに行かないとなんでしょ?」
「わたくしも急いでいるわけではありませんの。どうぞお先に」
「はぁ、嫌よ。どうせ後ろからどつくでしょ」
「どつきませんわよ!? そんな発想がでる貧乳さんがどつこうとしてたのではなくって?」
「どうだか。前だってそんな事言ってドロップキックしてきたじゃない」
「あれはレストさんが煽って来たからでしょう? そんな事も忘れるほどに脳の衰退が進んでいますのは可哀想ですわね。フランカさんも公認ですし」
「言わせておけば、無駄乳あんたねぇ」
「やりますの? レストさんがわたくしに勝てると?」
「っは、勝てるわね。余裕」
2人は睨み合いを始め、ただならぬ雰囲気が2人を包んだ。そんな時に、タイミングがいいのか悪いのか、ドアが開き1人の少女が入ってくる。
「レストお姉ちゃんにリリーシャスお姉ちゃん! クッキー焼いた・・・・・・の・・・・・・で・・・・・・ごめんなさい」
そう言いながら後ずさりし、ドアを閉め走り去っていく。
「え、あ、ちょっとミラ!?」
その様子を見たレストは走りだし、彼女を追っていく。
リリーシャスは咄嗟に体が動かず、それを見つめるしかなかった。
彼女は正直、あの様に体が動かすレストが羨ましかった。接近戦を思う存分出来る彼女が、羨ましかった。
昔彼女のように動けていたならば、多少は状況は変わっていたのかもしれない。そう思う事が多い。決して今の状況が嫌いという分けではないが、やはり"ズルなし"であのレベルで動けるのは羨ましかった。
尤も、出会った当初は劣等感から彼女に対し反抗的な態度を少しばかりとっていたが、今となっては単純に"ソリが合わない"という理由で喧嘩をしている。恐らく彼女も現在は同じ理由で反発してきているだろう。以前助けてもらった恩情もある。悪い奴とも思わない。だが、こればっかりはどうにもならない。
彼女はゆっくりと歩を進ませ初め、病室を後にする。
ミラは彼女が対応し、行き先を伝え来るだろう。
リリーシャスはそう考え、受付で手続きを済ませると病棟を出て、その足でブラックスミスへと向かった。
ブラックスミス。学校内に存在する神装武具や一般兵装の修理修繕、皮の製造を行っている場所である。
外部から雇っている人中心の病棟部とは違い、此方は生徒や卒業生が主導となって運営している。
今回のディヴァインのように全損した場合は、1から作ることなり、時間が非常にかかるのだが、予め機能拡張の要望を出し試作を作ってもらっていた。そのためすぐに復帰する事が出来る。
レストの神装武具、烈火偽装-バルムンクも折られ修繕だけではどうにもならず、1から作る事となっているが彼女の場合神装武具を盾とし、剣は別途で用意出来るため此方も復帰はなんら問題はなかった。
彼女曰く「バルムンクのコアさえあれば問題なく戦える」らしい。
リリーシャスには理解し難い事実であるが、察するに適合するコアの有無が大きのだろう。
レストからすると
ブラックスミスの前に着くと1人の女性が此方に走ってきて話しかけてくる。
「あーリリーシャスちゃんやっと来た~」
彼女はブラックスミス所属の1年、ビアトリス・メルガル。あまり話した事はないが、友好的に接してくれる人物である。
「申し訳ありません。わたくしのディヴァインは?」
「此方だよ~」
そう言われ彼女の後着いて工房内に入っていく。
幾人もの生徒や卒業生が各々頼まれた武器を作ったり、修理していた。
彼女は周りを見渡し、質問を投げかける。
「主任は?」
此処、ブラックスミスを取り仕切る人物の姿が見えなかったのだ。
「あー今ニコラ先輩とスカーレットさんと一緒に出てるよ」
「お姉様と!?」
思わず聞き返していた。スカーレットと呼ばれる人物が魔法関連におけるリリーシャスの師匠であったためである。
「うん、そ。リリーシャスちゃんにプレゼント持ってきたのと、仕事の2つでって言ってたよ。さてっと」
ビアトリスは立ち止まり、2つあるケースのうち、大きい方を持ち、振り返る。
「試射しようか」
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