3章7節:深緑の中のコテージ2
彼の話によると、先にギャスが伝える手筈になっていた。との事だ。
それにより、自ら名乗る事もなくディード達も隠していると考え、情報を仕入れるついでに探りを入れ現在に至った。
なんとも間抜けな話である。
十分な深さの穴を掘り、1体目の死体に土をかけていく。
「で、反乱軍の目的って何なのよ」
「さぁ。プッチさんなら知ってるかもしれないですけど、私は末端ですのでディードさんを助けるとしか」
その後も戦力や状況等々色々と質問したが、得られる情報はほぼなかった。
「すみません、何も知らなくて・・・・・・」
1体目の死体を埋め終わった所で彼は謝った。
「いい、いい。死体運んだ後でコテージ内もう少し探索してぇんだが、いいか?」
「あ、いいですよ」
彼は2つ目の穴を掘りながら元気にそう返す。
「おう。終わったら手伝う」
「分かりました。あ、此方も1つ質問してもいいですか?」
コテージの中に向かおうとしていた歩を止め、振り返る。
「なんで、ディードさんは私の言葉信用してるんですか?」
「あぁ・・・・・・」
彼はどう答えるか少し悩んだ。はぐらかすか正直に言うか。
正直に言うと何か誤解を招くような気がしていた。だからと言って、はぐらかして誤魔化すような事でもない。
「割りと単純で、馬鹿正直。嘘はつけ無さそうな奴だから。それと今日の昼まで毒を1度も盛らなかったのもでかいな。まぁ、疑う必要がないってだけだ」
リザ之助の顔が渋くなり、言葉選びを間違えたかと考えたが次の瞬間彼は笑った。
「そんな風に見えますか?」
「見えるな。俺から見てだが、生きづらいだろお前」
そう言うと、彼の掘る手が止まる。
──やっぱ、触れちゃいけない部分か。
「ま、今"は"仲間なんだ。何かあったら俺達に相談しろ。相談乗ったり手助けしてやっから」
そう言うと再び歩き出し、コテージの中に入っていく。
各部屋を軽く確認するが、これ以上の死体は発見出来なかった。目ぼしい物も見つからないと諦め掛けていた時、寝室と思しき部屋にあったテーブルに置かれていた1冊の本を見つけた。
手に取り、パラパラとページをめくるとそれはただの本ではなく、日記であった。軽く読んでみると、主な内容は仕事や作業状況等を毎日記した物。死体の連中が傭兵であり、それなりに有名な連中だと言う事が分かった。此処にコテージを構えたのは、実力に自信がある。だけじゃなく、メンバーの1人でこの日記を書いている奴が極度の対人恐怖症のため。メンバー内は問題ない記述があった。
そして、置かれていたカレンダーと日記最後の日付を参照すると、連中が死んだのは恐らく一昨日。残り4人は仕事に出ており、最低でも2日は確実に帰ってこない事が分かった。つまり、今日1日は安心して此処を間借りしていても問題ない。
「こいつは助かったな」
日記を閉じ、テーブルのうえに置くと部屋を後にする。日記のとある記述が気になり、1階に降り、別の部屋に入ると、タンスの引き出しを開ける。
そこには男性物の衣類が入っており、かき分けながら底に手を当てる。すると、何か金属のようなものが手に当たり、取り出すと1つのトランプほどの大きさの鉄製の板が出てくる。
中央には丸い球体が埋め込まれていた。
「ほい、神器ゲット。不用心だこと」
魔力を込めてみるが、コアが活性化する雰囲気はない。
どうやらディードは適合者ではないようだった。
部屋を後にし、コテージの外に出た。
「あ、ディードさん何か分かりましたか?」
穴を掘り終え、休憩しているリザ之助が話しかけてくる。
「死体はもうなし、今日1日は残りの連中は帰ってこない。後はほれ」
ディードは先程の神装武具を投げ、彼は慌てた様子でそれをキャッチした。
「これ、神器ですか!?」
「そ、魔力込めてみ」
言われ、魔力を込めるが彼もまた非適合者であった。
「ダメみたいですね。それより、持ってきて良いんですか?」
「連中が弱いのが悪い」
更に「都市や街、村ならいざしらずこの様な僻地にわざわざ建てるのが悪い」と彼は続ける。
「そういう、物なんですか?」
「こういうもん。襲われ、自分の身や大切な物を守れないならそいつのせいだ。尤も、襲ってきた連中が悪いって言う奴もいるし間違いじゃない。が、それを言った所で止まるか? 見逃してくれるか? わざわざ襲ってきたような奴が、止まるわきゃねぇだろって事」
彼はシャベルを手に取る。
「でもだからと言って、盗っていいことにはならなくないですか?」
「あ? だから、大切なもんは自分で守れ、自分で守れないなら雇え、無理なら逃げろ。守れなかった時は諦めろ、だ。奴らは負け、一時的にでも此処を完全に空けている状態。間借りするのだってそれと一緒だし、リザ助だって"そういうもの"として扱い受け入れたろ。これもそういうものなんだよ」
だから、リザ之助は生きづらい。とディードは考えていた。
所詮は弱肉強食。仲間や協力者でもなければ下手に温情をかけるだけ無駄。
彼は村か街に長くいたもしくは、これまで相当運が良かったのだろう。なにせ、この辺りの事は旅をし死ななければ大抵の場合勝手に身につき、覚える範疇だ。
「ま、さっさと埋めちまおう。アリス達が返ってくる前に終わらせて、ゆっくりしてたいしな」
◇
「あーなるほどねぇ。じゃぁさ、迂回して挟撃は?」
「迂回する間、どう防ぐ?」と文字が書かれる。
「・・・・・・主力でなんとか」
「ハズレ、引きながら薄く広がるの。条件は歩兵同士での戦闘だから機動力ある部隊での突撃は警戒しなくていいからね。後はうまく包囲するだけ」と書かれ、アリスは唸った。
帰路に就いてから1時間が過ぎていた。
行きのように全力で移動せず、徒歩での移動であった。そのため時間が存分とあり、少々特殊ではあるが雑談に花を咲かせていた。
「まぁ持論だし机上の空論でもあるから、実戦だと何の役にも立たないけどね」とスラは笑う。
「いや、それでも部隊単位の運用は妹ちゃんの方が断然上だね・・・・・・」
そう言いながら、アリスは周囲の警戒を始める。
「いやいやー。じゃぁ次ね」と書かれ条件がつらつらと書きだされていく。
1、特定の相手を尾行する。
2、尾行する人数は複数人とする。
3、場所は入り組んでいるものとする。
「答えは・・・・・・いい?」
と問い「いいよ」と返され、アリスは立ち止まると落とすようにしてカバンを降ろした。
「弐之閃-
次の瞬間、アリスの姿が消え、木の影から複数人の男性が現れざわつきはじめる。
「それぞれ魔力を殺し、距離を保ち、歩調を合わせ」
樹の枝から落下してきたアリスは、下に居た男性を1人斬り捨て、こう続ける。
「気配を消して、半包囲するように配置・・・・・・察知能力もう少しほしいな。不便」
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