第二節~ダンジョン~

第1話

  玄界、第一階層玄海、第十層九属の海、第十階十七となの門、第一領域玄界灘岩礁地帯。


 海命が潜った門から出るとそこは辺り一帯が岩礁で構成されている地域だった。

 所々岩が水面から覗き、灘であるにも関わらず非常に凪いでいる地域である。

 そんな穏やかな岩礁の中央にある波紋から徐に姿を現した海命にシステム音声が流れる。

 その音声にハッとして、神魂命こうこんみょうの神威に当てられていた精神が正常に戻る。

 最初に流れていたシステムの声を聞き逃した海命に届いた声はそう多くなかった。

―――

…流LV.1を獲得しました。

荒流LV.1熟練度13獲得しました。

―――

「あ、っと、いけないいけない。ぼうっとしちゃってた。」

 聞き逃してしまったシステムは「しょうがない。」と割り切り、最後に聞こえた何かを獲得した音声を頼りにステータスを確認する。

―――

海命LV.156(ステージ1)最上位


LP27,082


サイズ

タテ1.04・ヨコ1.04・タカサ1.04=1.124864


###ボディ

マテリアルレース

セルウォーターLV.4(ステージ1)

スキル

水撃LV.1 熟練度0/50

水流LV.2 熟練度63/100

荒流こうりゅうLV.1 熟練度13/50


セルレース

原核細胞LV.2(ステージ1)

原核LV.1 熟練度0/100

膜LV.1 熟練度0/100

###


スピリチュアルレース

最初の素の魂LV.116(ステージ1)

スキル

魂断刀LV.20 熟練度1,006/2,000

雲之衣LV.36 熟練度528/3,600

魔素探知LV.40 熟練度1,766/4,000

魔素操作LV.1 熟練度50/100

鑑定LV.19 熟練度486/1,900


ジョブ

ガウディウムインサニーレLV.36(ステージ1)

怖怒の狂喜LV.36 熟練度8/2,000


タイトル

儘の祝福

みなみの加護


ボディステータス

生命力1

HP6/6

オド10/10(9)

攻撃力42(38)

魔攻力1

防御力42(38)

魔防力2

※括弧内はサイズ補正が掛る前の数値


水属性耐性2


ソウルステータス

HP116/116

オド116/116

攻撃力56

防御力72


必要経験値9/50

―――

「水流に熟練度が入って、新しく荒流ってスキルが追加されたみたい。」

 荒流の能力はボディステータスの防御力を触れた対象に対して攻撃力に変換してダメージを与えるスキルだ。しかも攻撃判定時にはオド消費は一切ないという、非常に強力なスキルである。

「これは、触れただけで攻撃できるとか・・・、なるほど・・・。」

 現在海命の魔素探知範囲には小さな反応が無数に存在している。

「確認していみましょう。」

 スキル鑑定を発動させその小さい反応を見極める。

―――

LV.2(ステージ1)


セルレース

原核細胞LV.2

原核LV.1

膜LV.1

―――

「思っていた以上に弱いですね。しかも魂すら保持していないとは。」

 海命の周囲の小さい反応の正体は極小の細胞であった。

 一つ一つの大きさが「サイズ0・000001」しかなく、魂すら保持していない唯の物体だ。

 この細胞たちは、先ほどまで海命が居た、第一階層第一層根源の海の十層にあった生誕の磯で生じた細胞が、海水の流れに乗って流れてきたものである。

 この細胞はプレイヤーの魂を入れるために用意されていた物だった為に魂が入っていない状態だったのだ。

 そんな細胞が偶々門の出入り口付近でひと固まりとなって存在し、そこに偶々海命が出てきた結果、海命の身体に触れた細胞が水流に飲まれダメージを受けることなった。

 これにより、スキル荒流の熟練度が溜まりスキルを獲得したのだ。また、スキル水流の熟練度はこの時同時に獲得したものである。

「周囲に無数にあるから経験値稼ぎになるけど・・・、レベルさが大きいから一つ二つ程度にわざわざ移動するのもな~。あー、でも塵も積もればなんとやらか。目的地も特に無いし適当に稼ぎながら移動していきますか。」

 そして、海命はあちらこちらへとフラフラと移動しながら、周囲の探索をしていくのだった。


 ここ九属の海にある十七となの門は円筒状の階だ。

 この筒を上部から見ると九つの領域が存在している。

 中央には玄界灘の領域が円状に聳える断崖絶壁で囲われており、その周囲を8分割する形で領域が存在している。

 そして、この八つの領域間も断崖絶壁で隔絶した環境下にあり、領域間の移動にはこの断崖絶壁の何処かにある、ダンジョンを通過して移動するか。断崖絶壁を登り越えていくか、飛び越えていくしか方法がない。

 この環境が隔絶した九つの領域はそれぞれ特定の属性に特化している。

 中央の第一領域玄界灘は命。

 北東第二領域は火の海。

 東北第三領域は地の海。

 東南第四領域は金の海。

 南東第五領域は木の海。

 南西第六領域は氷の海。

 西南第七領域は風の海。

 西北第八領域は雷の海。

 北西第九領域は毒の海。

 勿論海である為全ての領域は水の属性も持ち合わせている。

 そして、これらの領域の最外円には海岸線が存在しており、その海岸線には、第二階層へと移動するための門が存在している。各領域の海にも門が存在している為、みなみはこの階を十七となの門と名付けた。

 また、この十七の門の海から視点を上げて空を仰ぎ見るとそこに黒い物体がゆっくりと移動しているのが見える。

 海命は探知領域が狭い為、現時点ではこの存在を知覚していないが。

 この黒い物体は綿津見である。

 十七の門を一年かけて周回するこの黒い繭は、移動しながらその目から絶えず海水を溢れさせている。

 細々と海へと落ちているこの海水は、やがて玄海灘を通じて第一層根源の海へと流れ込み、海命の様なプレイヤーを誕生させる。

 では視点を十七の門の海にいったん戻そう。

 この十七の門にある九つの領域の内、第二から第九の領域には第十層の別の階へと移動するための門が存在し。この階を隔てた向こう側は、それぞれの属性の海へ・・・、つまり別の層へと繋がっている。

 これでこの層の全十階の内九つの階の説明としておこう。

 では、残り一階はどこかと言う話になると思う。

 残り一階への移動するための門。実は第一層魂源の海の第一階に存在する。

 海命が生れた場所であるこの場所には魂が誕生した後、魂誕生の因子が抜けた海水を除去するための階へと通じる門があるのだが、これは第一層第一階の底にある為海命は発見出来ていない。

 そして、魂の因子が抜け落ちた海水が行きつく先の第十層第一階深海では、水を魔素へと還元させて綿津見へと送っている。

 綿津見はこの魔素と、システムが回収したエネルギーの一部を回され、これらを使用して魂の因子を持つ海水を生み出している。

 そんな広大な広がりを見せる海にある、玄界灘岩礁地帯を一時間ほど探索していた海命の前に、ダンジョンへと通じるゲートが建っていた。

 水柱が2本岩から吹き出し、その間に揺らめく波紋がある。

 今まで通ってきた門と様相が違うこのゲートを見て、海命は慎重に近づいていきゆっくりとゲートを潜ぐっていった。


 ストラトゥムカルパーテルミヌスに於いてダンジョンとは、攻略するとダンジョンに隠された力や宝を得ることが出来る場所である。


「ふう、いったん休憩にしますか~。あっ、そうだ海命ちゃんはどこまでいったかな?」

 儘は言葉をステーアに送るのを一旦休み、テストプレイヤー扱いになっている海命を観察する。

「第一層は無事に踏破したようだね。これから分裂のダンジョンか~。あそこのモブなどんなだったっけ?」

 独り言ちつつ分裂のダンジョンのマップなども、一緒に周囲の中空に浮かぶウィンドウに表示させていく。

「あれ?・・・あー、これあかんやつだ。」

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ボツ・ストラトゥムカルパーテルミヌス Uzin @Uzin

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