第4話
海命は心持ちゆったりと移動をしながら、スキル魂断刀の熟練度上げをしている。
また魔素探知も常時発動状態なので、これの熟練度も獲得していた。
そして、魂断刀を10回ほど使用した後新たに魂を探知領域内に確認するのだった。
海命の探知領域は現在周囲2m、その外周に移動をしている魂が一つ漂っている。
「さっきの魂とは違って、移動しているか・・・。まだ、こっちに気付いていないようだけど、攻撃する為に近づけば気付かれるかな?」
海命はここで悩む、最初の行動をどうするのかと。
相手の能力を確認するか、もしくは確実の先手を取って戦闘の優位性を確保するか。
「そういえば、鑑定って使用した相手は鑑定されたことに気付くのかな?」
海命の生まれるより遅れる事数分ほどで誕生した素の魂は、先ほど獲得したばかりの魔素探知を使用して、周囲を警戒しながら移動をしている。
しかし、自分よりも探知範囲が長い相手にその姿を捉えられているとは霞ほども考えてはいなかった。
「よし、ならここでそれを試してみるかな?」
なるべく早い段階で自分の持つスキルの性能、ステータスの説明文に表記されていない部分を把握しようと心に決め鑑定を使用する。
―――
スキル鑑定LV.1発動しました。
―――
LV.3
レース
素の魂LV.3
スキル
魂断刀LV.1
雲之衣LV.1
魔素探知LV.1
ソウルステータス
HP3/3
オド3/3
攻撃力1
防御力1
―――
それは、周囲を警戒しながら移動していると突然の違和感を感じた。そして動きを止め探知領域の隅々まで確認を行った。だが、自身の探知の範囲には何もないと疑問を浮かべる。
しかし、ふとある懸念が浮上した。「自分よりもレベルが高い相手に補足されてるのか?」と。
そんな思いを抱き始めた時、先ほどまで移動していた方向に対して左後方から接近する魂を捉えた。
相手は自分よりも探知範囲が広い格上の相手、だがその程度のことで生存を諦めたりはしなかった。意識を近づいてくる魂へと向け魂断刀と回避する為に気構える。
脇を掠め通る為かやや衝突コースから外れた軌道で真直ぐ進んできているそれが駆け抜ける瞬間魂断刀を発動する。
相手の方がレベルだけでもなく、スキルの使い方に関しても上だったようだ。
魂断刀同士がぶつかるように発動することには成功した、だが相手はそれを確認するや否や直ぐ様新たに魂断刀を発動させこちらへと攻撃を加えた。その刃の数は三本。その光景を見た直後その魂は霧散し自らを滅した魂の糧となった。
―――
スキル魂断刀3重発動しました。
―――
海命は相手がこちらへの初撃に合わせスキルを発動するのを見ると、慌てることなく次の行動に移しスキルの多重発動を行った。相手の魂はこれに対応しきれず全ての刃をその身に受け霧散した。
―――
経験値296獲得しました。
LP5獲得しました。
―――
レベル差により取得経験値量が4減少しても今の海命にとっては大収穫であった。
「あれ?300じゃないんだ・・・、レベル差による減少?」
そんなところか~、と自分が思っていた経験値量と違うことに結論を持ちながら、周囲へと意識を向ける。
「取り合えず探知範囲に何もなし。」
そう独り言ちつつ「ステータスオープン」と、周囲への警戒を切らさないようにしながら、ステータスの確認に入る。
―――
海命LV.7(ステージ1)
LP7
レース
最初の素の魂LV.7(ステージ1)
スキル
魂断刀LV.1 熟練度20/100
雲之衣LV.3 熟練度0/300
魔素探知LV.2 熟練度15/200
鑑定LV.1 熟練度1/100
タイトル
儘の祝福
ソウルステータス
HP7/7
オド2/7
攻撃力1
防御力3
必要経験値
46/50
―――
「オド2か~、次の戦闘はオドが回復するまで控えないとね。さて、それはそれとして、レベルアップ~。」
―――
スキル雲之衣LV.4に上昇しました。
レース最初の素の魂LV.8に上昇しました。
―――
LP3を消費して雲之衣のレベルは4に上昇し、残りのLPは一旦取っておくことにする海命。
「鑑定を使用したとき相手の動きが止まったところから考えると、分るんだろうね使用されたことが。となると、相手の力量を探ろうとした場合奇襲はまず無理という事になる。」
う~ん、と唸りつつ「どうするのがいいのかな?」と、今後の動きに関して悩み始める。
「まー、奇襲は出来ないのはしょうがないかな?安全第一で行きましょう。」
今後の戦闘に関する方針を『命を大事に』にする海命。
「しっかし、色々試していかないといけないよね。今回偶々スキルの多重起動なんてのを事前に試せてたから、こっちの攻撃を相殺された後意表を付けることが出来た訳だし。」
海命はここに至るまでの間の魂断刀の熟練度稼ぎでスキルの多重起動を試し成功させている。
「ただ、3重起動迄が限界かな~。これ以上はちょっと戦闘に耐えられる感じはしない。」
スキルの多重起動は使用するスキルレベルと最上位レベルによって、同時に起動できるスキル数が決まるのだが、今の海命のオドの総量が問題である。
現在海命のオドの最大値は8、そして魂断刀のスキルレベルが1で最上位レベル8なので、最大8の魂断刀を起動できるのだが、これをしてしまうのとオドが一瞬で0になってしまう。こうなってしまうと逃げる事しか出来なくなってしまうのだ。
「それに、スキルレベルが上がったらそもそも多重に起動するのが大変になりそうだしね。」
スキルの多重起動は確かに相手にとって脅威になるだろう。しかし、それはオドの消費量という問題が常に付き纏う事になる。
海命はこれは慎重に扱うべきものと結論付け、オドの回復を待ちながらも移動を再開するのであった。
数分後オドが回復しきった海命はある事を試す。
スキル魂断刀は発動時海命の魂の任意の場所に発現させることが出来る、非常に便利なスキルなのだが、海命は先の戦闘で少々不安になっていた。
「さっきの戦闘では相手が魂断刀を相殺する動きをしていたから、こちらに刃が届かなかずお互いの魂断とは砕けた訳だけど・・・、もしこちらに攻撃を優先させる相手だった場合こちらも被害を受けることになる。」
それを防ぐべく試案に耽る海命は一つ試していないことがある事に思い至る。
「あ、そうだ・・・。雲之衣って任意で形状変化できるんだった。」
雲之衣のスキル能力を思い出し早速形状変化を試してみる。海命の意志に応えその形状を変えていく雲之衣。
そしてそこには棒状になった魂がウネウネと動いていた。
それは、魔素探知によりみていた海命は。
「ナイワー、これはないわ。」と、まるでナマコの如き何かが蠢いている様を見てげんなりとする。
その感情に引っ張られる形でナマコはグデっとする。それを見てさらにテンションが下がっていく海命であった。
未だ肉体を獲得していないので性別と言うものがない身であるが、海命の感性から言って女性と言って良いだろう。
そんな彼女がナマコのような見た目で、蠢く自分を見たらこんな感想を抱くのも仕方ないことかもしれない。
「うん、ここまで形状を変える必要はないはず、そう、程々よ程々が肝心よ。」
形状を表面が揺らめいている球状に戻し再度形状変化を試す。今度は球状の形を維持しつつ腕の様な物を生やすことが出来た。
海命はなるべく見た目に気を付けつつ形を整えていくが、中々に上手くいかず妥協することになる。
その結果として、球形の身体を持ちピコピコと二本の腕のような何かを動かす奇怪な魂がここに生まれることになった。
「うん、かわいい・・・、そうこれはかわいい、絶対かわいい、かわいいんだから!」
半ば自暴自棄な感は否めない言いようで、自分を洗脳しようと躍起になっている海命である。
そして、そんな彼女を後に見た創世神が「レースで音速〇とかよういしてみっか?」とか、言ったとか言わなかったとか。
「ぶるああああ、はっ!?私は何を言ってるの?」
神の悪戯か・・・、ノリは良い方のようだ。
さて、そんなこんなで・・・、どんなこんな何だか知らないが、この過程の中で雲之衣の形状変化をある程度自在に制御できるようになり、次の段階へと進めることにする海命。
手指のない腕のようなものの先端に魂断刀を発現させ、それを腕を動かすことによって振り回す。
「これで、今までよりかはリーチが長くなったわね。それに、色々動きが生じさせることが出来るようになった。」
雲之衣の総体積は変化させることが出来ないため、ある部分を伸ばそうとすると、他の部分から融通しなければならないため、中央の球体の部分の体積は、腕の無い時と比べ小さくなっている状態だが、海命は満足げに言葉を漏らした。
「後はこの形状変化をもっと思い通りに出来るようにしていけばいいね。」
そう言いつつ、魂断刀発言していない腕を失くしつつ、魂断刀を発現している腕を伸ばしてみる海命。
「うんうん、これでいきなり腕の長さを変えたりして意表を付ければいい感じかな?」
時には球体の部分の体積の融通も視野に入れ、攻撃範囲の変化をこれからの戦闘に組み込もうと試行錯誤を繰り返すのであった。
そんな中徐に自分の体に魂断刀を向ける。
腕の長さを生かし自身の球体部分に刃を届かせる。
しかし、海命の防御力は攻撃力を上回る為ダメージは発生せず、雲之衣の熟練度が発生し、発動させていた魂断刀は役目を終え霧散するのみ。
「!?これなら一度のスキル行使で二つのスキルの熟練度が手に入れられる。いいやり方はっけんっ。」
語尾に音符でも付きそうな機嫌の良さで新たな発見に喜びの声を上げる。
ダメージが通らなかったのはもちろん、そもそも魂だけの身の為痛覚・触覚などの感覚がない彼女は今後躊躇いもなく熟練度を上げていく。
こうして海命は新たに雲之衣の形状変化を身に着け、攻撃方法の多様性と熟練度獲得方法を新しく発見したのであった。
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