第3話

 みなみが去り、話相手の居なくなった仄暗い海の底で、今まで感じていた一柱の神の気配がなくなり、その存在感に改めて感じ入っていた。

 話相手が居なくなった直後という事で、静けさが際立つ様な感じを受けながら、海命は周囲に意識を向ける。

―――

スキル魔素探知熟練度1獲得しました。

スキル魔素探知LV.0 熟練度1/100

―――

 それと同時にシステムからアナウンスが聞こえてくる。

 このアナウンスの声も神の一柱であるというのは、先のみなみとの会話の中で聞いているが、直接本神が語り掛けてくれている訳でないせいか、酷く機械的な印象をそれに抱かせている。

 実際として、儘は蒼にシステム用の音声を入力する際に機械的に、事務的になるように演出を指導しており、また、入力をした音声に儘は調整を掛け平坦な声色になるように調声を施している。

 「これが、みさみ様が言っていた熟練度か。」

そう独り言ちつつ、熟練度を稼ぐために周囲へと意識を向け続ける。その度に無機質なシステム音声が流れきて、熟練度が上昇しステータスに反映されていく。

―――

スキル魔素探知熟練度1獲得しました。

スキル魔素探知LV.1獲得しました。

レース最初の素の魂LV.3に上昇しました。

―――

 幾許かの時間が流れ熟練度を100獲得し、魔素探知LV.1を獲得する海命。

 スキルを獲得すると同時に、周囲1mを探知することが出来るようになり、自身の周囲が水で満たされていることを知る。

「流石と言うか、みなみ様の管理する階層だけあって水が周囲に満たされている環境の様ですね。」

 海命は周囲に水以外に探知できないことを確認し次の行動へと移る。周囲を常に探知し続けている為、魔素探知の熟練度を次から次へと獲得していく。獲得するたびに聞こえてくるシステム音声を意識の外に弾きながら、移動しようと試みる。

 雲之衣によって揺らめき儚げなその魂は、意志の赴くままに移動を開始した。

「ん~、移動用のスキルは存在していないのか~。」

 自身の周囲1mしか探知できないとあって、慎重に移動をし続ける。

 その遅い移動速度で安全を出来るだけ確保しようと行動を続けるも、「周囲1m程度の探知範囲じゃ、敵意のある存在が見えた段階でアウトな気がするけどね。」等と思いながらの行軍である。

 移動し始めてから数刻、魔素探知LV.1を獲得する為の熟練度を稼ぐのと同じだけの時間が過ぎた頃。

―――

スキル魔素探知LV.2に上昇しました。

レース最初の素の魂LV.4に上昇しました。

―――

 意識の外に弾いていたシステム音声から、耳慣れない上昇の音が聞こえ、スキルの上昇を知った海命は、それと同時に探知できる範囲が広がった事を理解した。

「お?あれは・・・、同類か。」

 スキルレベル上昇と共に広がった探知範囲に揺らめく存在を探知。一瞬力むがその存在が何の反応を示さない所を確認すると揺らめく衣の力を抜いた。

「反応は無し、こちらよりも探知範囲が狭い・・・、もしくは生まれたばかりで周辺を探知するスキルを有していないか、それか、そういう風に装っているだけか。」

 力は抜きつつも緊張感を絶やさないようにしつつ相手を観察すると。

―――

鑑定熟練度1獲得しました。

鑑定LV.0 熟練度1/100

―――

「んっ。」

 新たなスキルの熟練度の獲得アナウンスに一瞬意識を向けるも、2m先にある魂へと注意を逸らさないように注意をする。

「このまま鑑定の熟練度稼ぎに使うか?それとも、動かないうちに仕留めるか。」

 海命は判断を一瞬のうちに済ませ、集中力を上げて魂へと勢いを付けて近づき攻撃を仕掛ける。

 スキル魂断刀を発動させ相手へと打ち込む。海命が打ち込んだ刀の形状は、スキルレベルも相まって非常に小さな刃であったが、システムにより判定され確定されたその力は確かにそこに在り、海命の意志通りの軌道を描き目の前の魂へと向かっていった。

―――

スキル魂断刀発動しました。

スキル魂断刀熟練度1獲得しました。

スキル魂断刀LV.1 熟練度1/100

―――

 スキル発動と共に頭に響くシステム音声を無視しつつ、自分が行った行動の結果を確認する。

 相手の魂へと向かいその暴力を叩き込んだ刃はその役目を終え、刃を叩き込まれた魂はその衣の揺らめきが緩慢になっていく。

 攻撃が通ったと判断した海命は、突撃の勢いを利用して離れていった相手との距離を再度縮めるべく、勢いをそのままに弧を描きながら移動方向を制御する。

 そして、再度相手の魂へと肉薄し小さき刃を振るった。

―――

スキル魂断刀発動しました。

スキル魂断刀熟練度1獲得しました。

スキル魂断刀LV.1 熟練度2/100

―――

 2度目の斬撃を受けた魂は霧散した。それと同時に海命へと経験値がシステムを介して注ぎ込まれる。

―――

経験値200獲得しました。

LP4獲得しました。

―――

 その後少々の間周囲へと意識を飛ばし安全を確認する姿はまさに残身。生まれたばかりとは言えない見事な在り様だった。

「ふっ、何事もなく相手を滅ぼせたね。」

 海命は初めて自分と同類の存在をその刃の下に滅ぼしながらも、感じていたのは忌避感でも、嫌悪感でもなく。刃を振るう高揚感であり、自身の格が上がる喜びであった。

「ふふふ、これはいいわ~。」

 その初めて感じる得も言われぬ高ぶりに、流されそうになりながらも、海命は今の自分の能力を確認してし始める。

「はははっ、ふ~、少し落ち着いた方がいいかな・・・、そうだ、ステータスオープン。」

―――

海命LV.4(ステージ1)


LP4


レース

最初の素の魂LV.4(ステージ1)

スキル

魂断刀LV.1 熟練度2/100

雲之衣LV.1

魔素探知LV.2 熟練度3/200

鑑定LV.0 熟練度1/100


タイトル

儘の祝福

みなみの加護


ソウルステータス

HP4/4

オド2/4

攻撃力1

防御力1


必要経験値

0/50

―――

「たった一つの魂を滅しただけで、一気にLPが4も貯まるなんてね~。さて、これをどう使うか・・・。攻撃用のスキルは使用して熟練度を上げて行けばいいから、雲之衣にLPを使った方がいいか。」

 海命はそう結論付け早速とばかりに獲得したLPを使用し、雲之衣のレベルを上げていく。

―――

スキル雲之衣LV.3に上昇しました。

レース最初の素の魂LV.6に上昇しました。

―――

「で、ステータスオープンっと。」

―――

海命LV.6(ステージ1)


LP2


レース

最初の素の魂LV.6(ステージ1)

スキル

魂断刀LV.1 熟練度2/100

雲之衣LV.3

魔素探知LV.2 熟練度0/200

鑑定LV.0 熟練度1/100


タイトル

儘の祝福

みなみの加護


ソウルステータス

HP8/8

オド6/8

攻撃力1

防御力5


必要経験値

0/50

―――

 スキルレベルを上げるにはスキルレベルと同等のLPを使用する必要がある。

 例えば今回の場合だとレベル2の雲之衣のスキルをレベル3に上げるにはLP2が必要になる。

 なので、海命はLP2を使用し雲之衣をレベル3にし、残ったLPは使用せずに残している。これは、先の言葉通り他のスキルを熟練度を稼いでレベルアップさせる判断からの行動だ。

「さて、次の獲物を見つけるまでの間熟練度を稼ぎながらゆったりと移動していこうっと。」

 因みに今回魂断刀で消費したオドだが、これは時間経過とともに回復する。周囲にある体外に存在するエネルギー「マナ」を吸収することによって充填しているのだが、この回復スピードは現在のところ一分間にオド1である。

「あー、でも何かあったら困るから、オドが最大値までに回復しきってから、魂断刀は使っていかないと・・・か。」

 暫く経ち海命はふと思いつく。

「あーっ。鑑定って周りの水にも使えるかな?」

 そう言いながら、周囲にある水へと意識を向ける。

―――

スキル鑑定熟練度1獲得しました。

スキル鑑定LV.0 熟練度2/100

―――

「お!行けた行けたっ、じゃ魂断刀と並行してこっちも熟練度を稼いでいきましょ。」

 その後鑑定を獲得する為に周囲の水へと、詳細を知るために意識を向けることによって鑑定の熟練度獲得を行いつつ、周囲の探索をするべく少しずつ少しずつ移動もしている中、

―――

スキル鑑定熟練度1獲得しました。

スキル鑑定LV.1を獲得しました。

レース最初の素の魂LV.7に上昇しました。

―――

 海命は何度も何度も周囲に意識を向け、「鑑定」「鑑定」「鑑定」・・・、っと繰り返すこと98回、システムアナウンスがスキル獲得を告げる。

 鑑定と何度も念じる度に少々抑揚を変えつつ念じていたので、後半ちょっとたなしくなってきた海命は。

「あれ?意外と早く獲得できたな~。」などど言葉を漏らしつつ、獲得したスキルの詳細を確認する為、自身の能力へと意識を向けた。

―――

鑑定LV.1

対象の詳細な情報を獲得する。

鑑定できる距離は探知領域に依存する。

鑑定の成否は自身の最上位レベルに依存する

鑑定に対してレジストが出来るようになる、相手よりもスキルレベルが高いとレジスト可能。

逆に鑑定する場合、相手の鑑定レベルより低い鑑定レベルだと鑑定できない。

レベルが一上がる毎に使用時のオド消費が1上がる。

―――

 自身の最上位レベル?・・・あ~、一番上のレベルの事かな。

 ふむふむ、鑑定の成功判定はその最上位レベルと、スキルレベルで行われるみたいだね。

「では、早速試してみよう。」

―――

スキル鑑定LV.1発動しました。

鑑定に失敗しました。

スキル鑑定熟練度1獲得しました。

―――

 う~ん、失敗かー。私よりもレベルが高いんだね。この水は。

 海命は何ともやるせない気持ちを得る。

 自分とどの程度レベル差が有るのかは解らないが、自分よりも格の高い水に対して「なんでかな~。」っと。

「ま・・・、レベルがそっちの方が高いというのはしょうがない。うん、・・・それとして、スキルLV.1になったことでオド消費するようになっちゃったな。これから先熟練度でレベルを上げるのは大変そうだ。」

 海命はそう思いつつこれから先の熟練度獲得の優先順位について考える。

 移動を再開しつつの考えで出た結論は、まずとにかく自身の身の安全確保、というわけで、引き続き魂断刀の熟練度稼ぎをオドの回復に合わせて行っていく。


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