147話 喧騒と神が遣わせた仲裁者
時間は司がルシェア・セニエを痴漢から救い、甲板に出て行った頃に戻る。
「カシワギ・ナナミ様。是非、僕とダンスを――」
「申し訳ありませんが、私は踊りたい人を既に決めているんです……せっかく声を掛けて頂いたのに、すみません」
「……いえ、そういうことでしたら、無粋なのは僕の方でしたね。失礼しました」
整った顔立ちの男性からのダンスの誘いを断った菜々美は、ホールの隅でジュースの入ったグラスを受け取り、一口飲んで息を吐いた。
「……ふぅ」
妙齢の女性が憂いを帯びた表情を浮かべながら一人で佇む姿を多くの男性が注目していたが、思考に耽る菜々美には何一つ気にならなかった。
(パーティー……全然楽しめる気がしない……)
元々菜々美には楽しむつもりはなかったものの、司やゆず達の前でいつまでも落ち込んでいるわけにはいかないと、気を取り直して彼女なりに楽しもうとした。
だが、声を掛けてくるのは、自分の魔導士としての力に惹かれた人か、あわよくば恋愛関係又は肉体関係を持とうとする人ばかりで、肝心の司とは食事以降全く交流のないままであることが、菜々美の気力を削いでいた。
そもそも、パーティー開始以前に司が見ず知らずのメイドに扮した謎の女性を部屋に招き入れたことが、菜々美にとっては大変気にいらなかった。
(しかも巨乳! 司くんはああ言っていたけど、やっぱり男の子って、そっちの方がいいのかな……?)
そういえば、以前彼の部屋で見たエッチな漫画も胸の大きなヒロインが多かったと菜々美は思い出した。
『先輩、私、どうやったら先輩みたいになれますか?』
『ん? バストアップの方法が知りたいの?』
『ち、違います! 私が聞いたのは魔導士としての強さのことで――』
『そうね~、好きな人に揉んでもらうといいって聞いたことがあるわ』
『だから違いますって! 司くんとはまだ恋人同士じゃないのに、そんなエッチなこと出来ません!』
『私との約束をドタキャンして彼の家に泊まった子が何言ってるのよ……』
ふと、亡くなった静とそんな会話をしたことを思い出して、菜々美は胸の奥がチクリと痛んだ。
(強くなったと思ってた……ゆずちゃんを立ち直らせることが出来て、ベルブブゼラルを追い詰めて……でもあの時、私が油断していなければ……私が、もっと強かったら……先輩が死ぬことなんてなかった……)
ベルブブゼラルとの戦いの後、静の葬式後、菜々美はかなりの頻度でその後悔を胸に浮かべていた。
初咲やゆず、ベルブブゼラルに眠らされていた司も、菜々美は持てる力を尽くしたと言ってはくれたが、彼女にとっては気休めにすらならなかった。
静が亡くなってからというものの、菜々美は胸に穴が空いたような感覚を抱えていた。
今では一人部屋となった居住区の部屋で、朝起きたら静の姿を探したり、大学で講義を終えた後に静に連絡しようとしたり、訓練や戦闘の時に静に意見を求めたり……。
もういない、もう戻ってこない、と頭では理解していても、心の片隅で先輩である彼女の影を追い求めているのは、最早自明の理だった。
自分がそんなあり様では静が安らかに眠れないと自身を奮い立たせるものの、どうしても気落ちしてしまう……そんな日々が続いていた。
だが、司といる時は違う。
司は落ち込んでいる自分を心配して、色々と気に掛けてくれていた。
好きな人がそうして自分だけを見てくれていることに、菜々美の心はとても温かくなるのを感じた。
もう司への想いだけが菜々美を唖喰との戦いに繋ぎ止める礎となっていた。
だからこそ、静の二の舞にならないように、強くなることを決意した。
そんな折にフランス支部と日本支部の交流演習は、まさに渡りに船だった。
当然、菜々美はいの一番に名乗り出た。
(大丈夫……今度こそちゃんと強くなる……そう誓ったんだから……!)
「あ、菜々美さん。こちらにいたんですね」
「ゆずちゃん……」
声を掛けられて顔を上げると、黄色髪を頭頂部で丸め束ねて、黒色のシックなドレスを身に纏うゆずが前にいた。
その表情は菜々美の機嫌を窺うように思慮に満ちていた。
「司君がどこにいるのか知りませんか?」
「ううん。私もちょっと探してみたけど、ホールにいないみたいなの」
「そうですか……準備のこともあるので、出来れば目を離したくなかったのですが……」
「あぁー……」
ゆずの呟きに菜々美は同意を感じた。
司は少し目を離すと高確率で新しい女性と知り合うことが多い。
しかも決まって顔立ちの良い女性ばかりである。
何より厄介なのが、司自身のお人好し故に相手の女性が困っていたら見知らぬ人であろうとも助けようとする、言わば一切の下心無しの善意である点だ。
そうでなくとも彼には女性を惹き付けて止まない何があるようで、現にメイドに扮した謎の女性が彼の部屋に入った程である。
「あ、ゆずと菜々美さん発見。司がどこに行ったか知らない?」
そんな会話をしていた二人の元に鈴花も歩み寄って来た。
「鈴花ちゃんも司君を探してるんですか?」
「うん、なんかそろそろ演奏のメインイベントが始まるから、教えておこうって思って……その反応を見る限り、二人も知らなさそうだね」
「そうなの、でも本当にどこに行っちゃったんだろうね?」
「もしかしたらフランス支部の誰かと親睦を深めてる途中だったりして……」
「う~ん、無いとは言い切れないけど、アリーって人のことがあった後だし、流石に大丈夫だと思うよ?」
「そうだといいのですが……」
その司が三人の言葉通り、フランス支部の魔導少女であるルシェアと親しくなっているが、三人には知る由もなかった。
それからも談笑を続ける三人に、程なくしてある集団が接触してきた。
「こんにちはぁ、〝天光の大魔導士〟様」
「……こんにちは」
集団を率いるライトブロンドの髪を編み込んでシニヨンにしているフランス人の女性が何やらしたり顔で声を掛けてきた。
こちらに圧を掛けるように魔力を放ちながら話しかける女性が、フランス支部の魔導士であると理解出来た。
よく見ると先頭の女性だけでなく、後方に控える数名もゆず達を嘲るような視線を向けていた。
それを受け、一目で相対した人物が悪意を向けていることを察したゆずは、司に出会った直後を彷彿とさせる冷たい態度でもって答えた。
「此度の悪夢クラスの件、激戦を極めたとか……変わらぬご活躍、尊敬致しますわぁ」
「……いえ、〝天光の大魔導士〟の名に恥じないように、全力を尽くしたまでです」
尊敬など微塵も感じていないことを指摘せず、ゆずは平坦に接した。
「そう……でもぉ、人類最強の魔導士にしては少々手間取り過ぎではなくて?」
「手間取る?」
何故そんなことをいうのか疑問に思ったゆずはそう聞き返した。
それが可笑しいのか、目の前の女性は手に持った扇をパッと広げて口元を隠しながら真意を告げた。
「当然でしょう? 最高序列が二人も居て、たった一体の唖喰を倒すのに三週間も掛かったことこそが何よりの証拠……これを手間取っていた以外の言葉があると思うかしら?」
「ちょっと! 相手は悪夢クラスの唖喰だったんだからしょうがないでしょ!? それにポータルを強制的に開く能力だって厄介だったし、脱皮して本気で殺しに来たり、あんなの一筋縄で行くわけないじゃん!」
実際にベルブブゼラル相手に戦い、その脅威を何度も目の当たりにした鈴花が食って掛かる。
だが、先頭の女性は鈴花を馬鹿にするようにため息をつくだけだった。
「それはあなた方が弱いからでしょ? 自らの弱さを棚に上げて敵のせいにするのは見苦しいわよ?」
「――っ!」
「はあぁっ!?」
コンディションを欠いていたとはいえ、ゆずですら一度は敗北した相手に、自分の弱さを見せつけられたのは事実だが、それでも鈴花は一度たりともベルブブゼラルから逃げることはしなかった。
それを弱いと切り捨てる女性の言葉に鈴花は一瞬で怒りを露にし、菜々美は息を飲んだ。
今にも飛び出し兼ねない鈴花を、ゆずが制止する。
「待って下さい、鈴花ちゃん。……先程から聞けば、随分と自分の力に自信があるようですね」
「あはは、当然よ! 最高序列第四位〝聖霊の歌姫〟の親衛隊のリーダーであるワタシ――ポーラ・プーレはそちらのお子様達とは大違いなのよ!」
「親衛隊……?」
ゆずの胸中に過ったのは、一体何の冗談だろうか、という疑問だった。
今も高笑いをするポーラに、ゆずは一種の不信感を抱いた。
「ワタシ達親衛隊と、アリエル様が力を合わせれば、ベルブブゼラルなど一週間も掛からずに塵にするなんて造作もないのよ!」
「それだってアタシ達が実戦で得た情報あってのものじゃん! こっちはその前情報無しの状態で戦ったんだから、フェアじゃな――」
鈴花が言い切る前に、ポーラは右手に持つ扇の先端を鈴花に向けた。
「お黙りなさい。前情報のない戦いなんて日常茶飯事でしょ? それに得た情報は有効活用するべきなのだから、ワタシ達が
「~~っの、ああ言えばこう言う……!」
あの戦いの苦労を書類上でしか知らないポーラの横暴な物言いに、鈴花の顔に青筋が立った。
そんな彼女達の喧騒を周囲にいたパーティーの参加者達は傍観していた。
何せ〝天光の大魔導士〟であるゆずと、歌姫の親衛隊として顔と名前が広まっているポーラの相対はそれだけで注目の的となり得ているのだった。
「それにそれだけ時間を削減することが出来れば、被害者も死亡者も激減するから良いことづくめじゃない……ってあらぁ~? 日本支部はベルブブゼラル相手にどれだけの被害を出したのかしらぁ?」
「――っ!」
完全にゆず達を見下したポーラの煽るような言葉に、ポーラの後ろに控える親衛隊の一員達もクスクスと笑いだしていた。
その笑い声を聞くたびに菜々美の心はズキズキと痛み出すし、鈴花は嫌悪感を隠すこと無くポーラ達を睨み付け、ゆずもより冷ややかな視線を向ける。
そんな一触即発の空気の中、遂にポーラは口にする。
「あなた方が弱いから、十四人の魔導士が無駄死にする羽目になったのよ」
瞬間、菜々美の中で張り詰めていた糸が切れた。
ゆずも鈴花も制止する間もなく、菜々美はポーラに駆け寄り……。
――パシンッ。
乾いた音が賑やかだったホールに静かに響いた。
それは菜々美がポーラの頬に平手打ちをした音だった。
「――は?」
自分の身に起きたことが上手く飲み込めていないのか、呆然とするポーラが声を漏らした。
「――ない……」
ポーラを殴った姿勢のまま、顔を俯かせた菜々美がポツリと零す。
静の……先輩達の死を冒涜する言葉を聞き逃すことが出来なかった。
怒りと後悔が心の奥でぐちゃぐちゃに混ざって自分がどんな表情をしているのか、解らなかった。
ただ、これだけはどうしても言っておきたかった。
「無駄死になんかじゃないっ!!」
~~~~~
菜々美さんが誰かを殴ったこともそうだが、俺はそれ以上に彼女の表情から目が離せなかった。
息を荒くして歯を噛みしめ、怒気を孕んだ目は普段の彼女から想像も付かない程鋭く、何よりその目端から涙が零れていた。
「――な、なにするのよこの
「狂ってなんかない!! 先輩達の死は、無駄死になんかじゃないっ!! 先輩達に謝ってよ!!」
赤くなった左頬を抑えながらヒステリックに叫ぶ女性に向かって声を荒らげる菜々美さんの剣幕は激しく、俺は呆気に取られた。
「はぁーっ!? どうしてワタシが死人に謝らないといけないのよ!?」
「~~っ言っても解らないなら……!!」
「ちょ、まっ、待って菜々美さん! 流石に暴力はダメだって!!?」
悲鳴を上げる女性の言葉が火に油を注いだのか、菜々美さんは女性に詰め寄ろうとするが、それを鈴花が背後から羽交い締めにすることで止めた。
菜々美の言葉と、女性の言葉を精査して、俺は叫ぶ女性が菜々美さんをあれ程怒らせるようなこと……二人の言動からして工藤さん達の死を冒涜したんだろう。
そう思うと菜々美さんの怒りが伝染したかのように、俺の胸中にも不快感が押し寄せて来た。
「ルシェちゃん、あの女、誰だ?」
「え、ええっと、あの人は、ポーラさんっていって、ボクの先輩魔導士で、アリエル様の親衛隊のリーダーです」
ルシェちゃんが怯えた様子で答えてくれた。
聖女なんて呼ばれてる歌姫さんの親衛隊のリーダーが、よりによって同じ魔導士の死を嘲るなんて、何考えてんだ……?
益々の不快感が募る。
「――ぃたっ……」
「っと、悪い、ルシェちゃん、痛かったよな?」
感情のセーブが効かず、ルシェちゃんの左手を強く握ってしまったことを謝る。
つくづく、俺は運が良かったと思い知らされる。
ゆずや菜々美さんに工藤さん、翡翠に季奈にアメリカ本部の魔導少女のアルとベル、それにルシェちゃん……彼女達のような心優しい人達ばかりに触れ合って来たことで、魔導士側にポーラのような人がいないなんて勝手に信じ切っていたからだ。
もしゆずの日常指導係を受ける前にアイツみたいな人に会っていたらこの場にいなかっただろうと思える。
「い、いえ……ツカサさんが怒るのも無理は無いと思います……」
どうやらルシェちゃんも自分の先輩が亡くなった魔導士達のことを悪く言ったことは解っていたようだ。
そのことに心底安堵する。
最初に知り合ったフランス支部の魔導少女が彼女で良かったし、あの女で無くてホッとした。
俺とルシェちゃんがそんなやり取りをしている間にも、菜々美さんとポーラの口論は続いていた。
「離して鈴花ちゃん! 鈴花ちゃんはあの人に先輩達の想いを馬鹿にされたことが悔しくないの!?」
「菜々美さんが殴ってなかったら、アタシが殴ってたくらい悔しいですよ! でも流石にこれ以上はやり過ぎですって!」
「まったく、なんて野蛮なのかしら!? 淑女の風上にも置けないわね!」
「ポーラさん、やっぱり日本支部との交流演習は無駄ですよ!
「あ゛あ゛? そっちから仕掛けて来て何被害者面してんの? それに何が些細なことだって? 言ってみなさいよこの取り巻き一号!!」
「鈴花ちゃん! 簡単にのせられないで下さい!」
尚も暴れる菜々美さんを抑える鈴花が、ポーラと取り巻きの言葉に怒りを露にした。
それをゆずが咎めて、二人の前に出る。
「あなた方の自信は確かに解りました。ベルブブゼラルとの戦いにおいて、私が居ながら早急に対処出来なかった不備も解ります……ですが、殉死した魔導士達の死を貶すことだけは見過ごせません」
「ふん、
「…………いいでしょう、それでしたら明日の訓練が楽しみですね。せっかくですから親衛隊の皆さん全員対私で模擬戦をしましょうか。その腐った性根を叩き潰して、先の自信も粉々に砕いて、彼を冴えないなんて言ったことを後悔させてあげますよ?」
「ゆずもあっさり挑発に乗るなよ……」
媚びるとか子供とかじゃなくて、冴えない男ってとこで逆鱗に触れたのかよ……。
それよかまずい。
一番騒動を抑えられそうだったゆずすら臨戦態勢に入ったことで、会場の雰囲気は最悪だ。
こんなの、俺一人出ばったところでどうしようもない。
会場全体に緊張感が走る中、その声は響いた。
「そこまでですわ。女性が来賓の方々の前で憤る姿を晒しては、せっかくの場が台無しですわよ?」
大して声を張ったわけじゃない、大して深いことを言ったわけじゃない。
なのに会場の行く末をその人は一言で掌握した。
会場にいた全員が声を発した人物へ視線を向ける。
さっきまで一触即発だったゆずも鈴花も菜々美さんも、ポーラも、隣で不安な表情を浮かべていたルシェちゃんも、俺も……。
たった今会場に入ってきたようで、入り口にその人は立っていて、後ろには従者なのか女性なのに黒地に白のストライプ模様のタキシードを纏っていた。
そんな人が付き従う女性の装いは、白を基調とした淡い緑が混じったふくらはぎが隠れる程の丈のドレスを着ていて、ドレスという薄い素材によって浮き彫りになった大きな胸元にある青いブローチよりも輝いて見えた。
二の腕半ばまで覆う手袋越しでも細い腕は、ペンより重い物を持てるようには思えない。
白銀の髪は緩やかな波を表すかのよう見えて、琥珀のタレ気味の瞳は柔和な笑みによって細められていた。
『そのアリエル様は本当に素敵な方なんです!』
甲板でルシェちゃんがそう言ったことを思い出した。
『贔屓目無しに世界一と思える美貌、長く煌びやかな白銀の髪、琥珀色の双眸は他者は心を惹き付けて止まず、理想の女性像を体現したかのようなスタイルの良さ……』
内心、尊敬の念からの誇張が含まれているんだろうと思っていた。
それにゆずや菜々美さんのような美少女達と触れ合って来たことで、耐性が付いたから早々に見惚れるようなことはないと少なからず自負していた。
だが、彼女を目にした途端、ルシェちゃんの誇張も、少ない自負も、何もかも吹き飛ばされた。
その人は、人という存在では到底成し得ない程の美貌だった。
何がどう綺麗だとかそんな言葉がすぐに出てこない……いや、女性だけじゃなくて、男ですら誰もが考える理想の美しさを一人の人間に集約した結果が彼女だ。
まるで神のいたずらが、神の祝福を受けたのか、いずれの言葉を言われたとしても真実だと思い、首を縦に振るだろう。
視線を逸らすことも出来ない。
逸らしてしまえば一生後悔してしまうような、そんな気持ちを抱いてしまっていた。
「まぁ……そんなに見つめられては、少々照れてしまいますわね」
「――っ!?」
両手を頬に当てて恥ずかしそうな素振りを見せるが、俺の息を詰まらせたのは彼女の声だ。
『加えて歌声は万人を魅了する国の宝と称される程で、その声で紡がれる聖歌の神聖さに感涙する人が後を絶たないと謳われ……』
なんだ、これ……っ!?
彼女の声で齎される言葉によって、かつてない程心が震わされた……声を聞いただけで感動させられたと解って、自分が自分じゃなくなるように頭がフワフワと落ち着かなかった。
万人を魅了する歌声の持ち主……あぁ、そうだろうさ……彼女が普通に言葉を発するだけでこのざまなんだから、歌なんて歌われたら骨抜きにされるのは目に見えた結果だ。
『結果、アリエル様は現代の聖女と呼ばれているんですよ!』
ルシェちゃんの言ったことはどれも紛れもない事実……むしろ言葉以上だった。
ここまでくれば会場に入ってきた彼女が誰かなんて問い掛けるのは無粋だ。
「それでは、そろそろご挨拶させて頂きますわ」
そう告げた彼女は両手でドレスの裾をつまみ、片足を斜め後ろの内側に引き、もう片方の足の膝を深く曲げ、腰を曲げて頭を深々と下げる……カーテシーと呼ばれる〝魔導六名家〟に連なる令嬢らしい所作で挨拶をする。
「僭越ながら、ワタクシは最高序列第四位〝聖霊の
自己紹介した彼女……アルヴァレスさんは美しい笑みでもって、俺達に
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