長い長い1日
「瑠璃ちゃん あなたもよ。 あなたは 何に将来的になりたいかしら。」
「有名なイラストレーターに アート部なんです」
「そう ありがとう。 瑠璃ちゃん その夢をしっかり強く思ってゆっくり 目をつぶって。」
「 郁昌 何が始まるの?」
「瑠璃 大丈夫だ。 じっとしてろ。」
瑠璃がこちらをじっと見てくる。 瑠璃はわかったように目を閉じた。
「 ここからは 君は見ないでくれ。頼む。」
俺は外に出た。
我ながら妹のことは大事に思っている。だからこそ戦うなどと血なまぐさいようなことに巻き込んでもいいのだろうか。
半ば強制だったが妹の意思は尊重されないのか。
と言ったような葛藤があった。
「瑠璃大丈夫かな」
そう思った刹那。
ーーーパァァァァンーーー
俺は急いで中に戻った。家の中では瑠璃が目をつぶっていた。
しばらく30分くらいすると瑠璃が目を開けた。
そして瑠璃は元気にこう言った。
「郁昌! 私あんたの右腕になってやるんだから!」
と言って笑っていた。
その顔を見て俺はとてつもなく安心感と嬉しさを感じてたのだ。 しかし、同時にさっき思ったことが頭によぎっていた。
「瑠璃ちゃん あなたは何を思ったの? イラストレーター?のこと?」
とスピカが尋ねる。 瑠璃は少し顔を赤らめこう言った。
「私たち兄弟がずっと一緒にいれるような力がほしいって願ったよ。」
ああ 俺は勘違いをしていたのか。
夢なんかよりもずっと一緒にいたいという気持ちが強く家族思いな妹に心底感動していた。
「ちょっと驚いたわ。 でもなんの能力かしら? 使ってみましょう!」
スピカが提案し俺ら全員は頷いた。
ついでに俺のスキルも発動することになった。
「じゃあ 行くぞ!」
俺ら4人は光の中に包みこまれていった。
「ここが郁昌の世界ね」
今回俺が想像したのはいわゆるRPG系の世界だった。
やり込み度がハンパなく多く 多くの人が好むゲームジャンルだ。
そしてこの世界にした理由もある。
「とりあえず いろいろ試して置いてよ 瑠璃。その間 俺は スピカさんと 一回やりあってみたいんだ。」
俺は思ったのだ。 先程の瑠璃の言葉。
一緒にいたいという気持ち。
俺はそれに答えるべきだと。
だからちょっとでも慣れたいのだ。
「郁昌。それはオススメしないよ。 彼女は僕よりも強く、全王国のNO.10には確実に入っている。
僕に負けたのにそれじゃ…」
「へえ〜 いい度胸ね。 じゃあ 気絶又は死亡したら負けね」
とスピカが遮った。
それは先程のスピカとは違い、 どこか変わったようだった。
というか死亡って女子が言うセリフかよと思う。
「戦闘態勢。 やる気なんだね。」
「ええ 当たり前よ。受けた対戦はやらなきゃ失礼でしょ?」
顔が瑠璃なだけにすごくギャップがあるように思えた。
「回復はこのポーションがあるから 大丈夫だ。 存分に楽しんでね」
イワンが補足する。
「じゃあ 行くぞ! 」
俺はポケットからボールのようなものを出し 前に3つ投げた。
「ここがRPGの世界なら ! 育成済みの俺のお気に入りが出てくるってことだ! さあ 囲め!」
俺たちのお気に入りのモンスターが1人を囲む。
「さあ 攻撃してくれ! 」
俺が複雑な指示を出す。 モンスター達も分かったように攻撃を繰り出した。 しかし
「 攻撃が一向に当たらない… チッ 戻れ一回態勢を整えるぞ!」
モンスター達は引いた。モンスター達は言われた通りに動いているだけで悪いわけではないのだ。
「なあに? この程度なの?」
とあくびをする。
俺は新たな指示を出した。 これで仕留められなかったら負けだ。
「まだ2回目の世界だ。この発想になるにはすごいと思うぞー」
とイワンが口を出す。
「ふーん。まあいいわ さっさと終わらせるよ。」
と言い彼女はものを出し俺めがけて投げてきた。
「今だ!!!」
俺はモンスター達に指示を出していたことをやらせた。 内容は 飛び込んできたり 仕掛けてきたら、
『最大限の力を出して撃て』
と。 一見単純そうに見えるが俺の経験上、格下と思ってる相手には手を抜いてくる。
その瞬間を出し抜こうとしたのだ。
しかし、 その時は来てしまったようだ。
おそらく何かが起こったのだろう。
その後俺は空を見上げていた。
俺の首は宙を舞っていたのだ。
数時間後
「 おや 目が覚めたかい?」
俺は目をこする。ああ 俺は負けたのか。何が起こったのかよくわからないままだった。
「 俺は 首を?」
「そうよ。首を切ったのよ。 手加減してやれなくて悪かったわ。」
ふふ 面白い。こんなもっと理由がわからないやつがまだNO.10だなんて。 もっとこの世界が知りたくなった。
「ハハハハハ この世界は謎がいっぱいで面白いな! ありがとうスピカ!」
スピカはギョッとして 顔を向こうに向け 小さな声で
「どういたしまして」
と言っていた。
そっぽを向いていたため顔はわからなかったが後ろ姿はさっきまで笑っていたスピカだった。
俺は何の能力なのか考察していると瑠璃が来た。
「郁昌大丈夫? 死んでない?」
「見ての通り元どおりだよ。ありがとう」
瑠璃は安心した顔を見せてくれた。
そしてある程度分かったと教えてくれた。
「瑠璃の能力はなんだったんだ?」
「私の能力はね〜 一緒にいれる力って言ったらこうなったよ!」
と言い瑠璃は俺に手をかざした。
するとみるみるうちに身体が軽くなり、俺はだるさや疲れが取れていた。
「そう 回復だね。 瑠璃ちゃんは回復を持って一緒にいれる場所を作ろうとしたんだよ。」
とイワンがいう。
「そして瑠璃ちゃんは特別で 守ろうという意思が強かったため もう1つのスキルが芽生えた。」
そんなこともあるのか。 2つだなんてチートレベルのものじゃん。
「瑠璃! どんなのなんだ?」
「タイムリープ」
イワンが淡々と告げる。え。 タイムリープ?
「ちょっとそれって! 自傷が伴う系のスキルじゃ?」
「ああ その通り。 時間を元に戻すのはチート能力であり、 強大な力であればあるほど使う魔力が多く、 自傷が伴う。」
ということは 瑠璃はその能力を使うたびダメージが行くってことか。それってきついな。
「じゃあ 回復すればいい話じゃ?」
妹がうんうんと頷く。
「「あ。。。。。。」」
やっぱアホじゃねーか!!こいつら!!
「 と とにかく! ね! これは相手国には絶対にバレてはいけないスキルだわ!
バレたらまずいわよ。」
「 う うん! 普段は絶対に使わないようにね!! 瑠璃ちゃんOK?」
こいつら2人は焦っている。自分のアホさにようやく気付いたか。
でも使いすぎは確かに良くない。魔力がいるなら回復できなくなってしまうしな。
「瑠璃。 気をつけて使うんだぞ。」
「うん わかった郁昌。 気をつけるね!」
ニコッと笑った。 その顔は本当に可愛いくてそして太陽のような明るさだった。
ふと時計を見るともう 11時を指していた。
「 戻るか。もう寝よう。」
というとみんなうなずき 元の世界へ戻った。
その夜俺は考えてた。今日1日で起こったこと。 スピカ イワンのこと。 瑠璃のこと。能力のこと。 いろいろなことを考えていた。
そしてゆっくりと目をつぶり 郁昌の長い長い1日は終わっていった。
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