第34話雛の願い

 雪が帰省した翌日、国連ではヒートヘイズを発現させた少女が呼ばれ報告会が開かれていた。


「それでは、無自覚の内にヒートヘイズを発現出来るようになったと言うのですね?」


 議長から質問を投げかけられた少女は、イギリス生まれのイギリス育ちで薬物を摂取した形跡は無かった。


 他にも、やはり少年でヒートヘイズを発現させた少年が来ていたが、彼の回答も少女と同じであった。


 では、何故突然ヒートヘイズを発現したのか?


 突然自らの体内から湧き上がった黒い煙に、困惑する若者が多かった。


 その若者達の協力を得て、国連への召還が可能になったのだが……。


 共通点を洗い出している内に、とある大企業が販売している健康飲料を飲んでいた事が分った。


 その企業に問い合わせてみたが、成分分析等を調べてもおかしな所は見当たらないという。


 だが全員に共通しているのは、健康飲料であると国連では断定し、世界各国にあった工場が一時的に操業を停止させられる事態に陥る。


 これにより、新規にヒートヘイズを発現する若者は出なくなった。


 全世界の若者と呼ばれる10歳から24歳の総数は、23億人(未確定)いる。その若者全てにその健康飲料を飲ませ続ければ、恐らく5%はヒートヘイズを発現出来るようになるだろう。


 だが貧しい国の若者が簡単に手に入れられる程、安価では無い。


 またパンを宿すのが18歳前後位までなので、実際はもう少し減る。


 では、現在パンを宿した若者が何名いるのか?


 国連が目撃されたヒートヘイズの数から、割り出した数字は10万人にのぼった。


 これが多いか少ないかと問われれば、科学技術による制圧が出来ない新人類が10万人もいる事は、脅威そのものであった。


 各国の軍、警察組織はヒートヘイズを発現し困惑している若者の懐柔を謀り、自らの価値を理解していない者がそれに乗る事となる。


 世界各国から科学者、医者、遺伝子の権威まで集められ、その健康飲料の解析が始まったが、結果は芳しく無かった。


 日本でもその健康飲料は販売されていたが、その時点では発現した者はいない。


 これは外国人向けと日本人用とは、まったく生成方法から違っている為なのだが、それが理解出来ている学者は、牧田以外には居ないだろう。


 この様な状況で、警察や軍に取り込まれたパンが、暴徒と化したヒートヘイズを退治する事で、一旦落ち着きを取り戻したかに見えた。






 一方日本では――。


 雪達3人は冬休みを満喫する為に、横浜に観光に来ていた。


 この地には日本最高の高さを誇る、コスモツリーが聳え立っているのだ。


 その高さは1000mにも及び、過去日本最大とうたわれたスカイツリーの634mを遥かに凌ぐ高さである。


 2010年代に構想にあがった宇宙エレベーターは安全上の理由から、世界各国から批難を浴び、構想段階で頓挫した。


 その変わりと言う訳では無いが、宇宙エレベーター構想を掲げた企業が建造したのがこのコスモツリーと言う訳だ。


 1000mから眺める景色は遠くまで見渡せるが、富士山に登った事がある者にとっては、物足りなく感じるだろう。


 だが、雪と一緒に出かけられる事が嬉しい珠恵は、満面の笑みを浮かべながら雪と手を繋いで歩いていた。


「あんた達は、何処でもイチャイチャして恥ずかしく無い訳?」


 水楢の小言はいつもの事だが、休みに入ってその数が増加していた。


「澪。一緒する?」


 珠恵ちゃんが、水楢も手を繋げばと誘うのだが――。


「そ、そんな恥ずかしい真似出来る訳ないでしょう!」


 半ばやけくそ気味でそう水楢が言葉を吐き出すのも、いつもの事である。


 雪にしてみれば、ほぼ引き篭もりだった学生時代から考えて、リア充まっしぐらな現在は信じられない進歩である。


「昼食はコスモタワーの最上階ラウンジでいいんだっけ?」


 朝から母と父からの追求を逃れる為に、逃げ出すように飛び出してきた雪達は、昼には少し早い時間だというのに昼食にするようである。


「うん。楽しみ」


「窓際の席が開いているといいわね」


 皆、楽しみにしてくれている様だ……。


 エレベーターで最上階のラウンジに到着し、丁度混み合う前に窓際の席を確保出来た雪達は、早速料理を注文する。


 料理が出きるまで、外を眺めながら会話を楽しんでいたのだが、


 水楢が漏らした情報に雪は凍りつく事になった。


「本当なんだって。昨晩、雛ちゃんと寝る前に聞かれたんだけれど、パンとヒートヘイズについて……」


 水楢の話では、学校へ軍の関係者が現れ、雛にパンを宿さないかと打診があったようである。


「そ、それで雛は何て言っていたんだ?」


「うん、それが……既にあたし達がパンを宿している事まで知っている様でね、それってどんな感じですか? って聞かれたんだけれど」


 雪は苦虫を噛み潰したように顔を顰め、


「くそっ。軍の奴等、世界中でヒートヘイズが発現し出して焦ったのか」


 厳しい眼差しで外を眺めながら、呟いた。


「雪、雛ちゃん、パン、反対?」


 ここにいるのは皆、パンを宿した者達だ。


 珠恵がそう問いかけると――。


「反対とかそう言う問題じゃなくて、雛を戦いに巻き込むのが嫌なんだ」


 雪が心の内を吐露すると、


「でももし日本でヒートヘイズが暴れたら、一般人は簡単に死ぬわよ?」


 水楢は自ら進んでこの道に入った。


 そんな彼女だからパンを宿した方がいいんじゃない? などと楽観的に語れるのである。


 だが雪も珠恵も自らの意思では無い。


「死に難くなるのは良いよ。でもパンになれば――」


 否応無しに戦闘を強いられる。


 以前の様に、パンだから死なないとは言えなくなっている。


 そんな状況で、家族をパンにしたいのか?


 そう水楢に詰め寄った。


「まぁ、それを言われるとあたしも困るんだけどね……」


 水楢も安全が約束されていた以前なら、簡単に誘えたが世界中にパンがいる現在では、いつ攻撃されて死ぬかも知れないのだ。


「でも日本ではヒートヘイズが暴れる様な、問題は起きていない訳だし」


「水楢も珠恵ちゃんも、自分の家族が学園で大怪我したのを見ているよね? そんな姿を見ても、身内をパンにしたいって思うのか?」


 那珂の島の学園の話を持ち出され、水楢も声を出せなくなった。


 世界が日本を敵視して攻めてきた時に、パンであるか、一般人であるかどちらの方が、生存率が高いのか?


 考えるまでも無い。


 一般人はシェルターに避難すればいい。


 ――だが。


 パンならば、戦闘に参加しなければいけなくなるのだから。


 それにこの3人は既にエリートコースに乗っている。


 その為、最前線への投入は一番後になる。


 だが、万一雛が複数体のヒートヘイズを覚醒出来なかったら。


 使い捨ての駒の様に、最前線へと送られるのだ。


 それを考えれば、雪が反対するのも納得がいく。


 2人は雪が、臨床試験施設から逃げ出したのを知っている


 それでも学園の危機には立ち上がった。


 ファウヌスが居て、Sランクのヒートヘイズを発現出来る雪だから敵を殲滅する事が出来たのであって、もし雪が居なければ皆死んでいてもおかしくは無かった。


 日本の切り札が雪なのだ。


 その兄と同じ遺伝子を持つ雛を、軍が簡単に諦めるとは思えない。


「そう言われると――ねぇ?」


「うん」


「でも、雪くんと同じ遺伝子と言うだけで、軍上層部の関心は高いと思うわよ」


「そ、そんな!」


 雪も水楢と珠恵を見ていれば、理解は出来るが……。


 理解できる事と、納得が行くかは別である。


 幸い軍部はまだ投与を行っていない。


 雛がパンを宿していない今なら、軍の犬になる必要は無い。


 雪の様に……。


 深刻な会話をしている雪達の席とは違い、他の客の席は賑やかで楽しそうだった。


 まったく観光気分ぶち壊しである。


 そんな事を思い、雪が溜息を吐き出す。


 それに呼応した訳では無いであろうが、後ろのエレベーターから下りてきた客達が悲鳴をあげてラウンジ内を駆け出す。


 雪の席からは、反対側で見えない。


 訝しげな視線を駆けて来た人々に向けていると――。


 奥から、狼形のヒートヘイズが現れて食事中の客達に襲い掛かった。


「なっ!」


「何でこんな所に現れるのよ!」


 高次元帯である狼が、低次元帯の人間へ喰らい掛かる様子を認めた水楢の動きは早かった。


 これが次元の違いなのか?


 噛み付かれた人間の体は、骨すら残さずくっきり噛まれた部分だけ消失していた。


 雪達は立ち上がり、各々が背負ったバックから天羽々斬を取り出す。


 外出する時には、休み中であっても携帯を義務付けられていた為なのだが、それが功を奏する事になる。


 水楢が弓を狼へと向け、矢を番えた。


 次の瞬間には、狼の眉間に命中。


 ヒートヘイズは煙に戻って消えていく。


 これで終わったか? と誰しもが思った時に――。


 大勢の人の中から突如、新たなヒートヘイズが発現したのである。


 しかも今度は、人形で羽が生えている。


「何だ? あんなヒートヘイズ始めて見たぞ」


「ランクD、ハーピー」


「さすが珠恵ちゃん、詳しいね」


 雪が新たに発現した、見た事の無いヒートヘイズに困惑していると、珠恵が説明してくれた。


「あんなに人が固まっていたら、矢を放てないじゃない!」


 水楢が焦りの表情を浮かべる。


 雪も自分の天羽々斬を用意しているが、刀では人が多すぎて振り回せない。


 そうしている内にもハーピーが手を振り回すだけで人間の体が両断されていく。


「まずいわね……」


 せめてこちら側に来てもらわないと話にならないのだが……。


 慌てふためいている人々は、我先に逃げ出そうとして転び、それに躓き、悪循環に陥っていた。


「私、やる」


 珠恵の武器は、小型のナイフの様な天羽々斬である。


 持ち歩きもし易い接近戦用の武器であった。


 人々が入り組んでいる場所に、迷い無く割り込んでいく。


 逃げ出そうとしている客達は、それを迷惑な奴だとでもいう様に、邪魔だと怒鳴り散らす。


 怒鳴った男が、珠恵ちゃんを突き飛ばそうとした瞬間――。


 珠恵ちゃんがその男の胸倉を掴み投げ飛ばした。


 男の体が宙に浮いた瞬間、男が立っていた場所をハーピーの手が空振りする。


 間一髪で男は珠恵ちゃんに救われたのだが、投げ飛ばされた時に気を失ってしまったようである。


 珠恵ちゃんは、小さな背を更に屈めハーピーの手をやり過ごすと、がら空きの状態の胴体へ天羽々斬を付き立てた。


 呆気なくハーピーも煙となって消滅する。


 周囲で逃げ惑っていた客達は、突然ヒートヘイズが消えた事で安堵の表情を浮かべてはいるものの、周囲に漂う血臭に顔を顰めている。


 僕達はこのフロアにパンが居ると断定し、客達の様子を窺っていた。


 すると――。


 雪の視界に1人の少年が目に止まる。


 その瞳は曇り、狂気をはらんで居るように見受けられた。


 その少年は、ヒートヘイズを倒した珠恵ちゃんの方に近づいて行っている。他の客達が逃げ出しているのに……。


「珠恵ちゃん、危ない!」


 雪が大声を上げ叫ぶと――。


 珠恵ちゃんに、少年がナイフを突き立てた所だった。


 雪は思わず目を瞑る。


「雪くん。大事な事忘れていない?」


「へっ?」


 水楢に諭され、目を開くと――そこには付き立てたナイフがボロボロと粉になり崩れ落ちていく所であった。


「あんな少年が天羽々斬を所持している訳が無いでしょ」


 呆れた口調でそう漏らすと、珠恵ちゃんの方へと歩いて行った。


 雪もその後を追う。


 犯人の少年は既に珠恵ちゃんが押さえ込んでいた。


「驚かせないでくれよ」


 雪がホッと胸を撫で下ろしていると、


「うん。雪。ありがとう」


 珠恵がはにかみながら雪に微笑む。


 少年をどうするか……またヒートヘイズを発現されたらたまらない。


 そう雪が思っていると、珠恵ちゃんが少年の首に手刀を当て、気絶させていた。


 少年をベルトで縛り、床に寝かせ3人でそれを囲む。


 しばらくして軍服を着用した、兵士が数人やってきた。


 最初は被害者の安否を気にしていた兵達だったが、僕達に気づくと拳銃を抜いて用心しながら近づいてきた。


「ここでヒートヘイズが暴れたと通報があったのだが、犯人はお前達か?」


 少年を取り囲んでいる雪達の方が犯人に見えるとは、この兵士はパンに対して詳しく無い様である。しかも拳銃とは……。


「あたし達にそんな物通用しないわよ」


 水楢が、無礼な兵士にぞんざいな態度で対応する。


 普通に考えて、階級バッチも付けていない兵は雪達よりも格下であるのだ。


 当然の対応であった。


 雪が兵士の前に出て、身分を名乗る。


「僕は神軍の久流彌少尉です。そんな物騒な物早く仕舞って下さい」


 雪が名乗りを上げると、一瞬呆けた兵であったが、後ろにいたもう1人の兵が直立の姿勢で敬礼をした事を受け、漸く上官だと認識出来たようであった。


「も、申し訳ありません。久流彌少尉。それで、この騒ぎは何事でございましょうか?」


 急に殊勝な態度を取り出す兵に、辟易しながらも説明をした。


「この少年が、コスモタワー内でヒートヘイズを使い観光客を惨殺しましたので拘束致しました。私達3人はたまたまこの場に居合わせただけです」


 雪がそう答えると、兵は携帯を使い軍本部へと連絡を始めた。


 しばらく待ち、護送車が到着すると雪達も事情説明の為に同行を求められる。


 3人は面倒な事になったと思いながらも、それに同行したのであった。


 保土ヶ谷にある軍本部には、3人とも始めて足を踏み入れた。


 外見は普通のビルであったが、中に入るとお役所の様な感じを受ける。


 兵に案内され応接室に入ると、中肉中背で50代半ばの温和そうなおじさんが既に座っていた。


「やぁ、諸君。初めて顔を会わす事になるが、長田大佐の後任で君達パンを統率する立場になった大佐の多田だ」


 雪も自己紹介をしようとすると、手で止められた。


 席に座るように指示され、3人が座ると目の前のテーブルに僕達の経歴が記載されている書類を並べられた。


「まだこの任に就いて日が浅くてね。こうして皆の書類を良く眺めているんですよ」


 笑うと瞳が隠れる表情を浮かべて、多田大佐は会話を続ける。


「まずはコスモタワーでの一件、ご苦労様でした。お陰で人的被害は最小で済みました」


 最小と大佐は語ったが、その死者数は30人近くに上った筈だ。


 30人が少ないと表現した、多田大佐に対しての第一印象を3人とも見直す事にした。


 雪達が首肯すると、続けて話し出す。


「あの少年は、パンを宿していた為に拘束したのですよね?」


「はっきりとは分りませんが、ヒートヘイズを退治した栗林伍長にナイフを突きつけたので拘束しました」


 実際にあの少年の体から発現した場面を、見た訳では無い。


 雪がそう説明をすると――。


「まぁ、パンであるかどうかは直ぐに調べが付くでしょう。ただ……問題ですね。日本で始めての事例となると、今後も起こりえる」


 唸りながら大佐が両手を胸の前で組む。


 今までは、ヒートヘイズの暴走も隠し続けてこられた。


 また富士演習場に現れた、ヒートヘイズを撃退した武器に関しては情報の開示を、今も民間の団体から求められている。


 そんな最中に日本国内でヒートヘイズが暴れれば、否応なしに神軍所属のパンを使い討伐するしかなくなる。


 だが、一般市民を巻き込むヒートヘイズを野放しにも出来ない。


 この場では雪達が発言する事はまずない。


 一方的に喋る多田大佐の話を、聞いているだけである。


「やはりパンの増強は必要ですね……」


 そう言葉を漏らし、雪達は特に情報を持っている訳では無いので早々に帰路に着く事となった。


 浅草に戻ると、既に陽が沈みかけ夕暮れ時になっていた。


 報道ニュースでは、コスモタワーでの事件が大々的に取り扱われており、夕食に雛から案の定、質問が飛んだ。


「お兄ちゃん達もコスモタワーに行ったんだよね?」


 雛の関心はヒートヘイズにあるのは確実だ。


 これから自分も、それを発現する事になるかも知れないのだから。


 尋ねられた雪は、不機嫌そうに――。


「あぁ。3人で食事している所に湧いた」


 雪が不機嫌なのを理解した上で、尚も質問は続く。


「じゃ、もしかしてあれを倒したのもお兄ちゃん達だったり?」


 雪は見ていただけで倒していない。黙っていると――。


「あの場に現れたヒートヘイズは2体。1体はあたしが、もう1体は珠恵さんが倒したのよ」


 水楢が詳しく説明しだした。


 雪は益々顔を顰めるが、雛はそれを女がヒートヘイズを倒しているのに男の雪が倒せなかった事で僻んでいると捉えたようだった。


「へぇーお兄ちゃんは見ていただけね……くすくす」


 笑われた事に腹を立てた訳では無いが、あの場では刀を抜けなかったのだから仕方無い。


「あんな大勢の一般人が居る場所で、長物の刀なんて出せるかよ!」


 これも雛は負け惜しみと捉えるのだが……。


「澪さんと珠恵さんにも倒せるなら雛にも倒せるかな?」


 そんな事を言い出した。


「僕は雛が軍に入るのは反対だからな!」


 雪が怒鳴ると、雛は当然反発する。


「そんな事言っても無駄だから。雛もパンになるって決めたし!」


 雛からすれば、水楢と珠恵を見て格好良いと思った様だった。


 雪の心配を他所に、雛がテーブルの上に戸棚から何やら取り出す。


 用紙は、臨床試験参加申込書で、それにサインを書いていた。



「雛は軍に入って戦いたいのか? それを受けるという事は軍に所属して戦争をするという事だぞ!」


 雪が説明するが……。


「でもパンになったら実際に戦うのはヒートヘイズなんでしょ? なら自分が戦う訳じゃないじゃん」


 雪は額に手を置くと首を振り、否定する。


「僕は学園で大勢の先輩達が死んで行くのを見たよ。そんな場所に雛を連れて行きたくは無い」


 ドラゴンのブレス1発で呆気なく散って行くのだ。


 その中に雛が居たら?


 あの年中お花畑の両親を苦しめる事になる。


 そう思い、真剣に説得をするが――。


「でもパンにならなかったら、浅草にヒートヘイズが現れた時に、何もしないで殺されるんじゃないの?」


 雪は雛としばらく会っていなかったお陰で、妹の性格を忘れていた。


 雛は活発な子で、雪達3人の中で例えれば……水楢に一番近い性格をしていた。


「自分でそう決めるならもう僕は何も言わない。けど――親父や母さんを悲しませるなよ」


 それだけ言って、雪は部屋に閉じ篭っていった。

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